記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/11/16
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
メタボの原因、といわれて皆さんは何を思い浮かべますか?きっと多くの方は、暴飲暴食や運動不足を挙げるかと思います。しかし近年の研究によって、残業時間の多さもメタボに関連していることが判明してきたのです。両者の関連性について、以降で詳しくご紹介していきます。
メタボリックシンドローム(以下、メタボ)とは、内臓脂肪型肥満(内臓のまわりに脂肪が過剰に蓄積した状態)に加え、高血圧、血清脂質異常、高血糖のうち2つ以上を併発した状態のことです。このメタボになる主原因は、食べ過ぎや運動不足といった生活習慣の乱れですが、残業時間の多さもメタボのリスク要因になるということが、東北労災病院勤労者予防医療センターの宗像正徳氏らの研究によって明らかになりました。
日本職業・災害医学会会誌第57巻第6号「若年勤労者における長時間労働とメタボリックシンドロームの密接な関係―労災過労死研究―」によれば、全国労災病院に勤務する非管理職職員2,161名を対象に、時間外労働時間とメタボ保有状況の関係を平成14~18年にかけて調査したところ、年間残業時間の増加に比例する形で、メタボやメタボ予備軍の割合は増加傾向を示しており、また年間残業時間が500時間を越えた人はさらにメタボやメタボ予備軍の保有割合が増加していたことがわかったそうです。
さらに上記の研究において、年間残業時間とメタボ保有率の関係を年齢別にみたところ、45歳未満の比較的若年群で、残業時間の増加に伴うメタボ保有率上昇が特に有意に認められたそうです。一方で45歳以上の群については、残業時間とメタボ保有率にそこまで有意な関連性はみられなかったとのことです。
なぜ若い人たちに顕著な相関性がみられたのか、はっきりしたことはわかっていませんが、恐らく残業が慢性的に続いたことによって、過労死につながる基礎病態が形成されやすくなったのではないかと考えられています。そして事実、近年40代の過労死は増加傾向にあります。
残業時間の多さがメタボの保有率を上げる理由について、明確なことはわかっていませんが、下記のような要因が複数重なることで発症しやすくなるのではと考えられています。
残業時間が多いということは、当然それだけ夕食の時間も遅くなり、消費されない余分なエネルギーが脂肪として蓄積されやすくなります。また、夕食までの空腹を紛らわせるために、間食の量も増える傾向にあります。
夕食が遅くなると太りやすくなる、と体重管理を気にされている方は、「夕食はスープだけ」というようにごはんの摂取量そのものを減らしがちです。これは一見良い方法にも思えますが、実はNG。計算上はカロリーコントロールはできていますが、栄養が不足すると筋肉量や基礎代謝が落ち、食べていないのに太りやすくなってしまいます。
長時間の残業によって一日中座りっぱなしだったり、体をほとんど動かさなかったりすると、筋肉量や基礎代謝の低下につながります。
長時間の残業や過重労働によってストレスを強く感じ続けていると、下垂体-コチルゾール系の活性化が起こり、より内臓脂肪が蓄積しやすい体質になることがわかっています。
残業の多さはストレスになるだけでなく、夕食の遅さ、間食の増加、栄養不足、運動不足など、メタボにつながる要因そのものになり得ます。総務や人事など職場管理を担う部署も一緒になって、職場環境を改善していく取り組みが重要です。
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