記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/11/19
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
朝、起きるのとほぼ同時に咳き込んだり、明け方に咳き込んだりして目が覚めることがあります。日中はそれほどひどく咳き込むことはないのに、寝起きにだけひどく咳き込んだり、たんが絡んだりすることも少なくありません。
寝起きの咳やたんは、何らかの病気のサインなのでしょうか?
起床直後に咳が出る場合、就寝中の呼吸が原因と考えられます。通常、日中には交感神経が優位であり、気管支がしっかり開いて深い呼吸をすることができます。しかし、夜間には副交感神経が活発になり、気管支が収縮して狭くなるため呼吸が浅くなります。
呼吸が浅くなると、たんを出すことができずに溜まりやすくなります。そこで、夜間に溜まったたんを吐き出すため、起床直後に深く呼吸をすると咳が出ることが多いのです。特に、明け方に眠りが浅くなったときなどにも、体は起床時に近くなりますから、深く呼吸をした拍子に咳き込むこともあります。
また、早朝の咳が「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった音を伴う場合、気管支喘息の可能性があります。喘息は「夜中の病気」ともいわれるほど、夜中や明け方3時頃に咳の発作が出ることが多い疾患です。特に、冬の寒い時期や花粉症の時期には症状がひどくなることもあります。
鼻腔・口腔・喉頭・気管・気管支など、呼気の通り道を気道と呼びます。気道の壁には繊毛という細かい毛がびっしりと生えていて、その表面は粘度の高い分泌液で覆われています。気道に異物が入り込むと、この分泌液に絡め取られ、繊毛の動きによって喉から食道へと運ばれ、ほとんどの場合は気づかないうちに胃へ入り、消化されます。
しかし、この異物の量が多いときや粒が大きくて喉から食道を通りづらいとき、または繊毛の動きが低下していたり分泌物が多くて流れにくかったりするときには、それらが気道に刺激を与え、異物を取り除くため、吐き出すために咳が出ます。このときに出る咳は秒速40m前後、プロ野球選手の投げる直球ストレートぐらいの速さといわれており、強制的に異物や分泌物を排出する働きがあります。
咳やたんは、こうして気道の清潔を保ち、異物から肺を守るという大切な役割があるのです。
喘息とは、アレルギーによって気管支に炎症が続いてしまう疾患です。アレルゲンにはさまざまなものが考えられますが、多くはチリ・ダニやハウスダスト、カビ、ペットのフケ、煙などが原因です。アレルゲンとは違いますが、冷たい空気は気管に刺激を与えるため、冬や冷え込みの激しい明け方に症状が重くなる人も少なくありません。
アレルゲンや冷たい空気などの刺激によって気管支が狭くなると、咳やたん、息苦しさなどが生じます。また、同時に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった呼吸音が生じることも、気管支喘息の特徴的な症状です。
喘息の炎症は夜間や早朝に悪化しやすいという特徴を持っています。これは、夜間には交感神経と副交感神経の優位が入れ替わることに起因しています。日中は活動時間帯であるため、活動を司る交感神経が優位となり、気管は広がってより多くの酸素を取り入れようとします。このため、咳が出づらいのです。
しかし、夜間は休息の時間帯であり、体を休めてエネルギー消費量を減らそうとする副交感神経が優位となります。副交感神経が優位の状態では気管は収縮して狭くなり、呼吸が浅くなります。呼吸が浅く多くなると、咳の発作は出やすくなります。
喘息は概ね15歳までに起こる「小児喘息」が非常に有名なため、子供の疾患であると考えられやすいですが、小児喘息が治りきらずに大人になっても繰り返し発症する場合や、中高年以降に新たに発症する人も少なくありません。ですから、大人だから関係ないと思わず、喘息の症状が疑われる場合は病院で診察を受けましょう。
気管支喘息の治療は、吸入ステロイド薬を使うのが第一選択です。これは発作を抑えるための薬剤で、個人差や症状にもよりますが約8割の人が症状を緩和することができます。吸入後にはしっかりとうがいをすることで、口内炎などの副作用を防ぐことも大切です。
症状が重い場合や、吸入ステロイド薬が効きづらい場合には、アレルギーを抑える内服薬や、気管支を広げる拡張薬を併用することもあります。それでも効果が見られない場合には手術療法で気道を広げる処置を行うこともありますが、手術にまで至ることは多くありません。
これらの適切な治療を毎日続けることで、発作を抑え、健康な人とほぼ変わらない生活を送ることができます。また、セルフケアとしてアレルゲンに接しないよう室内を清潔に保つほか、風邪やインフルエンザの季節には必ずマスクを着用し、手洗いうがいをしっかりすることも重要です。
寝起きの咳やたんは、一時的なものであれば、夜中に呼吸機能が低下していることで溜まったたんを吐き出すためのもののことが多いです。しかし、何度も発作を繰り返す場合や、「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった呼吸音がある場合には、気管支喘息の可能性が高いと考えられます。
気管支喘息は子供だけに起こる病気ではなく、大人になっても発症する可能性があります。発作を何度も繰り返す場合、病院で診察を受けましょう。
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