記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
咳がとまらなくなったり、呼吸をするたびにヒューヒューといった独特な音が鳴ったりする「気管支喘息(喘息)」。この喘息発作は何が原因で引き起こされるのでしょうか?発作を誘発するトリガーについて説明します。
発作予防のためにも、この機会に正しく理解しておきましょう。
発作の引き金としてまず考えられるのは、家のダニやほこり、ペットの毛などのアレルゲンです。ほかにもタバコや花火の臭い、煙、香水が原因となる事もあります。雨にぬれたり寒さで体が急に冷えたり、急に大声でたくさん笑ったり、長い距離を走ったりした後に発作が出ることもあります。
風邪やインフルエンザは喘息発作を悪化させる原因になります。
風邪やインフルエンザは、原因となるウイルスが鼻や喉の粘膜に感染して、粘膜の構造を破壊しながら増殖します。このため、鼻や喉の粘膜に存在する、異物を捕らえて体外へ排出しようとする防御機能が低下し、アレルゲンの侵入を増加させてしまうのです。
また、ダメージを受けた喉の粘膜は、刺激に対して敏感になりやすく、温度差などの微小な刺激でも咳が止まらなくなる「咳喘息」を後発することがあります。咳喘息は気管支喘息を誘発し、結果として喘息発作を悪化させる原因となるので注意しましょう。
喘息の原因となるアレルゲンはハウスダストや猫などのペットの毛のほか、食べ物の場合もあります。日本そば、甲殻類、小麦、卵、ピーナツなど人によって様々で、野菜や果物がアレルゲンとなる事もあります。
食べ物が原因の場合は、喘息症状のほか、じんましんなど皮膚に赤いぽつぽつが広がる傾向があります。急激に症状が悪化することもあるので、ぐったりする、顔色が悪くなるなどの症状も出た場合は急いで病院を受診してください。
喘息には特定のアレルゲンが原因となるアレルギー性喘息と、アレルゲンが原因ではない非アレルギー性喘息があります。大人では、非アレルギー性喘息が多いといわれていて、疲れや睡眠不足が溜まっていたり、強いストレスを感じたときに発作が起こることがあります。これは、疲れやストレスによって自律神経の調節が乱れ、気道が収縮しやすくなることが原因とされています
小児喘息だった人が成人になって再発するケースもありますが、再発にはストレスが大きく影響していると考えられています。
喘息とは、アレルゲンなどの原因によって、咳や息苦しさ、呼吸時にヒューヒューといった音が出る(喘鳴:ぜいめい)症状が現れる病気です。
粘性の痰が出続けることもあります。これらの症状は、冷え込む朝方に出ることが多く、季節の変わり目にも発症しやすいです。気管支の粘膜に炎症が起き、腫れていることが原因で引き起こされると考えられています。
喘息は一度発症してしまうと、ことあるごとに発作が出やすくなったり、症状が出ている間は落ち着いて眠れなくなったりするため、専門的な治療を早期に始めることが大切です。我慢していると体が衰弱してしまうので、すぐに受診しましょう。
喘息の治療には、長期管理薬(コントローラー)と発作治療薬(リリーバー)が併用されます。
長期管理薬は、気管支の炎症を抑え、期間が狭くなるのを防ぐ目的で使用され、発作治療薬は発作が起きた時に早急に気管を広げる働きを持つものです。
長期管理薬の代表的なものは、ステロイド吸入やテオフィリン、抗アレルギー薬などで、長期にわたる喘息発作の予防を期待するものです。
一方、発作治療薬には短期間で効果が現れる短時間作用型の吸入薬やステロイド内服薬が用いられます。
発作コントルールのためには、長期管理薬の効果が非常に重要であり、それぞれに合ったものを継続する必要があります。通院が面倒くさい、発作が起きていないから大丈夫だ、などの理由で自己判断によって長期管理薬の使用を中止し、発作が起きた時のみに発作治療薬を使用する人もいます。しかし、発作治療薬はあくまでも緊急的な薬です。喘息をコントロールする効果はありませんので注意しましょう。
喘息などのアレルギー患者は近年増加傾向にあります。花粉症もアレルギーの一つで、花粉症から喘息に移っていくこともあります。
喘息になってしまったら、発作のきっかけとなるアレルゲンを除去したり、発作を引き起こす状況を避けることが大切です。病院でのアレルギー検査で、自分がどんなアレルギーを持っているのか知ることができますので、機会があるときは利用してもいいでしょう。
また、発作が起こらないよう継続的に薬を服用する必要もあります。体調が悪いときや、ストレスがたまったときは発作が出やすいので、医師の指示どおり薬を服用しつつ、心身を休めて発作を防ぐよう心がけてください。
日常生活のなかでは、以下のことに注意しましょう。
ほこりなどのハウスダストはアレルゲンになり得ます。アレルゲンを排除するには、毎日の掃除が欠かせませんが、特に見えないところのほこりには注意しましょう。また、掃除中はほこりが舞いやすくなるので、窓を開けて換気をしながら行ってください。
掃除では見逃してしまうような微小なほこりには、空気清浄機を用いることもおすすめです。
食べ物がアレルゲンとなる場合には、その食材がアレルゲンなのかを特定する必要があります。アレルゲンの特定は、病院での血液検査で調べることができます。特定の食べ物を食べた後に喘息発作が起こる人は、アレルゲンを確認するためにも検査を受けましょう。
アレルゲンがわかったら、毎日の食事で特定されたアレルゲンを口にしないよう徹底してください。特にアレルゲンとして多い小麦や卵などは、思わぬ食材の原材料に含まれている可能性があります。これらの特定のアレルゲンは、食品衛生法で表示が義務付けられていますので、必ず確認するようにしましょう。
タバコは、有害物質が気道を刺激し、気管の炎症を悪化させます。また、タバコは慢性閉塞性肺疾患などの呼吸器の病気を引き起こし、喘息を悪化させる原因になります。気道が敏感になり、他の病気も併発した状態では治療薬を使用しても十分な効果が得られないこともあり、入院治療が必要な喘息患者は非喫煙者の2倍ともいわれています。
タバコはまさに百害あって一利なしです。喘息の人は必ず禁煙するようにしましょう。さらに、喘息は受動喫煙によっても悪化しますので、家族に喘息症状のある人がいる場合には、家族の禁煙も必要になります。
ストレスは自律神経の中でも交感神経か過度に緊張させることがあります。交感神経は気道を収縮させる効果があり、喘息悪化の要因と考えられています。
ストレスを全く感じない生活を送ることは困難ですが、適度に発散できる方法をみつけ、できるだけストレスのたまらない生活を心がけましょう。
良質な睡眠は体調管理の基本です。睡眠不足は免疫力の低下を引き起こし、風邪などをひきやすくなり、また、ストレスの原因にもなります。その結果、喘息の症状を悪化させることもあるのです。
喘息の症状を落ち着かせるには、睡眠を含めた規則正しい生活を行い、体調を調えることが大切です。
アレルギーやタバコの煙、ストレスなど、喘息発作のトリガーとして考えられるものは実にさまざまです。病院で検査を受け、何が原因で発作が起きてしまうのかを把握したうえで、発作予防をしていきましょう。
また、医師の指示通りに薬を使い、発作をコントロールすることも大切です。適切な治療を続けていくためにも、医師と相談しながら気長に治療を続けていきましょう。