体の芯から冷え切ってしまう低体温症、どんなふうに治療するの?

2018/12/5

山本 康博 先生

記事監修医師

東大医学部卒、独立行政法人国立病院機構東京医療センター

山本 康博 先生

健康状態を阻害するレベルにまで体温が低下してしまう「低体温症」。もしこの低体温症になってしまった場合、どんなふうに治療が行われることになるのでしょうか。低体温症に陥る原因と一緒にお伝えしていきます。

低体温症とは

低体温症とは、脇の下の体温ではなく、直腸温、膀胱温、食道温、肺動脈温などの深部体温が35℃以下に低下した状態をさします。事故や不慮の事態に起因する低体温の場合、低体温麻酔のように意図的に低体温とした場合と区別するために、これを偶発性低体温症と呼びます。低体温症は、死亡率が20~90%と高い重篤な状態です。

「低体温症」と聞くと登山での遭難をイメージされるかと思いますが、低体温症の原因はさまざまなものがあります。一般的には寒冷から避難不可能な場合と、低体温になりやすい誘因に分類されます。寒冷から避難不可能な場合としては、アルコール中毒、脳血管障害、頭部外傷、低血糖、糖尿病性昏睡、薬物中毒などによって意識障害を来している場合、肺炎、膵炎、消化管出血、重症感染症、低栄養などによって衰弱している場合などがあります。他にもホームレスなど浮浪生活者もこれに該当します。

一方、低体温になりやすい誘因としては老人、新生児、皮膚疾患など体温を失いやすい人、低栄養、下垂体機能低下、甲状腺機能低下(粘液水腫)、 副腎機能低下などによって熱産生が低下しやすい人、アルコールを飲んでいる、老人、薬物中毒、脳血管障害、自律神経障害(パーキンソン病)などによって体温調節機能が低下している場合に起こります。

低体温症でみられる症状は?

低体温症に陥ると細胞機能や酸素消費量が低下するため、エネルギー産生が減少し、その結果、神経系、呼吸器系、循環器系、腎臓系の臓器機能が低下し、血液凝固系や代謝系へも影響を及ぼします。

一般的に低体温症は35~32℃の軽度低体温、32~28℃の中等度低体温、28℃以下の高度低体温に分類され、症状もこれによって異なります。
軽度低体温では骨格筋での戦慄が見られ、中等度低体温では戦慄が消失し、高度低体温では筋硬直が見られます。

他にも軽度低体温では健忘、構音障害、感情鈍麻、傾眠、頻呼吸、頻脈が見られ、中度低体温では昏睡、心拍数および心拍出量の低下、瞳孔散大となり酸素消費量は通常の1/2となります。高度低体温では自発運動の消失、心停止、肺水腫、無呼吸、顕著な血圧低下が見られます。

低体温症になると、いずれの臓器機能も抑制的に働くようになり直腸音が20℃を下回るとほぼ死亡状態と判断されることもあり、30℃を下回ると心筋の刺激性が著しく高まるため、致死的な不整脈を発症しやすくなります。

低体温症から回復させるために、どんな治療をするの?

低体温症の治療には支持療法と復温法があります。

支持療法とは人工呼吸器を使用した呼吸管理、40℃に加熱した輸液の投与などが行われます。これらの治療は集中治療室など高度な医療技術を整えているところで行われ、昏睡状態に陥っているなど深刻な状態に陥っている場合には蘇生処置も取られます。

復温法とは主に保温と加温を行います。保温では室温21℃以上の温かい環境へ移し、濡れた着衣を温かい乾燥着衣に着替えさせて毛布や寝袋で覆います。加温には体表加温と中枢加温があります。

体表加温とは電気毛布や保温マットの使用、赤外線ヒーターの使用、40~45℃の湯を使用した温水浴がありますが、赤外線ヒーターは新生児や未熟児のみの適応となり、温水浴も外傷には使用できないなどの制限があります。

中枢加温とは42~46℃の暖気の吸入、加温した輸液の投与、40~45℃の湯を使用して膀胱や胃、腹腔内などの洗浄を行うことです。

なお、低体温状態では薬物の効果が出にくいため基本的に薬物による治療は慎重に行われます。また、復温後も低体温続発症といい、脳血管障害、肺炎、肺水腫、消化管出血、膵壊死といった症状が起こることがあります。

おわりに:低体温症は登山のときだけに起こるものではない!

登山による遭難などアウトドアの最中に起こるイメージのある低体温症ですが、実はそのほかの原因によって起こることもあります。低体温症になると細胞機能や酸素消費量が低下するため、ときには昏睡や心停止など命に関わる状態に陥る可能性もあります。基礎疾患の治療など、できる対策を日頃からとることが重要です。

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