手や足のしもやけ、薬以外の有効な治し方は?

2019/12/7

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

手や足がじんじんと痛くなったり、かゆくなったりしてくるしもやけは、冬のやっかいな症状の一つです。しもやけは、症状がひどければ皮膚科で薬を処方してもらって治す必要がありますが、病院に行くほどではないちょっとした赤みやかゆみはできれば薬を使わず、対処したいものですよね。
この記事では、薬を使わない有効なしもやけの対処法についてご紹介します。

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手や足にしもやけが…。効果的な治し方は?

手や足に以下のような症状が出てきたら、しもやけの可能性があります。

  • 指先や足先、耳のふちが赤くなる
  • 赤くなった場所が腫れ、ゴムのように固くなる
  • 赤くなった場所にムズムズとしたかゆみを感じる
  • 赤くなった場所にジンジンとした痛みを感じる

このような症状が出るのは、体温と外気温の温度差によって血行が悪くなったのが原因です。人間の体は寒いと皮膚表面に近い血管が収縮し、狭くなるため血液が流れにくくなります。これは外気に触れやすい部分に流れる血液を少なくして熱を逃げにくくし、体幹部(心臓や諸臓器のある中心部分)の体温を下げにくくするための防衛機構です。

このため、常に寒い状況に置かれている人よりも、暖かい室内と寒い外気を行ったり来たりして血管の収縮と拡張を繰り返している人の方がしもやけになりやすいです。特に、気温が5℃前後で昼夜の温度差が大きい時期が最もしもやけになりやすいとされています。また、しもやけからの回復のスピードや程度には遺伝的な差があり、しもやけになりやすい体質の人となりにくい体質の人がいることが知られています。

しもやけが起こる例としてよくあるのが、雪遊びに夢中になっていた子供の手袋や衣服についた雪が体温で解けて水分として染み込んでしまい、指先や足先を冷やしてしまうパターンです。また、冬でもタイトな服装を好む人は、冷えやすいとともに締めつけによって血行を阻害されやすく、しもやけになりやすいと考えられます。

しもやけになったらどう治せばいい?

しもやけを治すには、症状が出ている部分の血行を再び良くすることが大切です。まず、湿った状態では水分によってどんどん体の熱が奪われてしまいます。濡れている場合はしっかりと水分を拭き取り乾かしましょう。その後、お湯やストーブなどで体を温めましょう。さらに、血行を阻害しないような締めつけの少ない、ゆったりとした衣服に着替えることも大切です。

家庭で簡単にできるしもやけの治療法は、40℃前後のお湯と5℃くらいの水をボウルやバケツに用意し、しもやけになった部分を20秒ずつ交互につける方法です。だいたい5回くらい繰り返し、終わった後は乾いたタオルで水分をしっかり拭き取りましょう。

耳などでお湯や水につけるのが難しい部位の場合は、手で覆って温めたり、ストーブなどの暖房器具のそばに行ったりして温めましょう。エアコンなどの風を発する暖房器具よりも、ストーブやこたつなどの方がすぐに患部を温められるだけでなく、必要以上に乾燥することもないのでおすすめです。また、手指の場合は手を握ったり開いたりする動作で血行を促進するのも効果があります。

ツボ押しはしもやけに効果ある?

しもやけ解消には、冷えを改善するツボを押すことも効果的です。特に手首にある「陽池」というツボは冷え性の特効ツボですから、ここを中心に押していきましょう。そのほか、冷え性に効果的なツボは以下のとおりです。

  • 陽池(ようち)…手首の甲側、やや小指よりの腱と腱の間
  • 関衝(かんしょう)…薬指の爪の根元
  • 命門(めいもん)…小指の第二関節の横じわ中央
  • 手心(しゅしん)…手のひらの真ん中

これらのツボをゆっくりと押し揉みします。親指の腹で、深呼吸をしながら息を吐くときにぐーっと押し込みましょう。そして、ゆっくりと離します。ただし、やりすぎると「揉み返し」という痛みが生じてしまうことがありますので、「痛い」と感じたら緩めましょう。気持ちがいい程度にとどめ、1個所にかける時間は10秒程度で構いません。

しもやけにはハンドクリーム&マッサージも有効

しもやけのケアには、ビタミンEやトウガラシチンキなどの血行促進成分を配合したクリームや軟膏を塗るのも効果的です。ビタミンEは成分表示ではトコフェロール(トコフェロール酢酸エステル)とも記載され、手足の末梢血管を拡張し、血行を良くします。また、トウガラシチンキは温感刺激作用があり、温めることで血管を拡張してビタミンE同様、血行を良くします。

血液循環を良くするためにはどちらのクリームでも構いませんが、外出前など速攻で患部を温めたい場合には温感刺激作用を持ったトウガラシチンキ配合のクリームがおすすめです。また、クリームや軟膏で保湿をするとともに、マッサージをするのも血行を良くするのに効果的です。

しもやけケアのための、クリームを使ったマッサージ方法って?

まず、患部にたっぷりとクリームや軟膏を塗りましょう。しもやけで皮膚が赤くなったり腫れたりしている状態では、強く摩擦すると皮膚を痛めてしまうことがありますので、クリームや軟膏は指の滑りを良くするためにしっかりと塗ることが重要です。具体的には、人差し指の第一関節から先にたっぷりと掬い取った分量で片手、または片足分とするのが目安です。

クリームをすり込むように馴染ませた後は、手のひらや足の裏の広い部分をほぐしていきましょう。手のひらや足の裏をまんべんなくほぐした後、指の付け根から指先に向かって指を1本ずつほぐしていきます。このとき、爪の両側や根元などの部分もつまみながらよくほぐすと良いでしょう。冷え性の改善に効果的なツボも同時に押しながらマッサージすると、さらに血行が良くなります。

マッサージ後は、せっかく良くした血行を悪くしないため、締めつけないようなゆったりとした靴下や手袋をすると保温に効果的です。また、マッサージを毎日続けることで、冷え性の改善にも効果が期待できます。

気温が春めいてきて、暖房器具を使わなくなるころにはケアが必要なくなることがほとんどですが、寒さが和らいでも症状が長引く場合は単なるしもやけではなく膠原病などの何らかの疾患が隠れている可能性があります。春らしく暖かくなってきても症状が続く場合は、一度医療機関を受診しましょう。

食事で血行の促進を

しもやけに有効な栄養素には、「ビタミンE」「ビタミンC」の2つがあります。ビタミンEはクリームや軟膏にも含まれているとおり、末梢血管(毛細血管)を拡張し、血流を良くする働きがあります。また、ビタミンCはビタミンEを助ける働きがあるため、一緒に摂取するとビタミンEの吸収率が上がることがわかっています。

ビタミンEは、成人の摂取目安量は男性で1日6.5mg、女性で6.0mgとされています。ビタミンEは体内に蓄積されにくい栄養素のため、通常の食事程度では過剰摂取の心配はありませんが、サプリメントなどから大量に摂取する場合は過剰摂取となる可能性があります。そのため、耐容上限量と定められている1日800mgを超えることがないよう注意しましょう。

ビタミンEが多く含まれるのは、アーモンド・ヘーゼルナッツ・ピーナッツなどのナッツ類、アボカド・うなぎ・植物油・卵黄などです。これらはビタミンEとともに脂質を含む食材が多く、特にナッツ類や植物油の摂りすぎは肥満などの生活習慣病を招くリスクが高くなるため、くれぐれも注意しましょう。

ビタミンCが多く含まれるのは、ブロッコリー・ピーマン・パプリカなどの野菜類、イチゴ・オレンジ・キウイなどの果物類、じゃがいもなどの芋類です。これらをデザートや食事の中で上手く取り入れ、効率よくビタミンを摂取しましょう。

また、栄養素とは少し異なりますが、こしょうや唐辛子・生姜などのスパイス類は交感神経の機能を高め、エネルギーの消費や熱の産生を促して新陳代謝を活性化し、体を温めて血行を良くする働きがあります。中でも、生姜は胃や腸に負担をかけず体に優しいスパイスで、辛みの刺激があまりないため、辛いのが苦手な人にもおすすめです。

逆に、唐辛子の摂りすぎは胃腸に負担をかけてしまうため、普段から辛いものが好きな人は摂取量に注意しましょう。

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版) の情報をもとに編集して作成 】

おわりに:家庭でできるしもやけケアで、症状が軽いうちに治そう

しもやけの症状が軽いうちは、家庭でできる簡単な対処法でも治せることがあります。この記事でご紹介した温水と冷水につける方法、ツボ押し、マッサージ、食事療法などで血流を良くするとともに、体を冷やさないよう締めつけずゆったりとした衣服で防寒対策を心がけましょう。

また、血行を良くすることで体を温める効果も期待できます。体を内側から温め、しもやけだけでなく、冬の寒さに負けない体を作りましょう!

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