冠動脈CT検査でわかることは?造影剤の注意点は?

2019/2/5 記事改定日: 2020/6/14
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

冠動脈CT検査とは、CT検査の一種で、X線を使って体の内部を画像かして調べる検査です。CT検査はどのように行われ、どんなことがわかるのでしょうか?冠動脈CT検査を受けることのメリット・デメリットや造影剤使用についての注意点を解説していきます。

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冠動脈CT検査とは?

冠動脈CT検査とは、心電図を取りながら心臓の撮影を行う造影CT検査です。

冠動脈は、心臓の筋肉を動かすため、心臓そのものへ酸素やエネルギーを供給するための血液を送っている血管です。カテーテルを利用した冠動脈造影検査を行う場合では入院が必要となっていましたが、冠動脈CT検査では体内に器具を入れたり体を切開したりする必要がないため、外来で行えて体の負担も少なく済みます。

主に狭心症や心筋梗塞などの心疾患の診断、冠動脈にバイパス手術を行った患者さんの経過観察にも使われます。かかる時間はおよそ30分程度で、以下のような手順で行います。

冠動脈CT検査の手順
  1. 検査室に入って心電図をとり、造影剤を静脈に入れるために注射する
  2. 舌の内側に冠動脈を拡張させるためのニトログリセリンを噴霧し、撮影を開始する
  3. 撮影終了後、副作用が起こらないか15分程度様子見。問題なければ退院

冠動脈CT検査前の食事制限

冠動脈CT検査では、造影剤を用いてCT撮影を行います。
造影剤はアレルギーがでやすい薬の一つであり、使用後に吐き気や嘔吐などが見られることもあります。そのため、安全に検査を行うために検査前3時間は食事を摂らないよう指導する医療機関が多くなっています。

ただし、飲み物の摂取には制限はありません。むしろ、造影剤は尿と共に排出されるため、よりスムーズな排出を促すべく水やお茶を多めに摂取するのがよいとされています。

冠動脈CT検査が必要になる病気にはどんな種類がある?

冠動脈CT検査が必要な病気には、以下のようなものがあります。

狭心症
  • 冠動脈CT検査は、狭心症の診断に特に有用
  • 器質的な狭窄の病変や冠動脈の石灰化を発見するだけでなく、プラーク(動脈壁の肥厚)の性状を評価することが可能
  • 冠動脈ステント留置後の経過観察や、冠動脈バイパス手術後の経過観察も患部を痛めることなく非侵襲(検査器具などによる負担を体に与えない)でできる
心臓弁膜症
  • 大動脈弁狭窄症などの弁膜症の診断で、大動脈の弁口面積の評価ができるようになってきた
  • 弁口面積と同時に、大動脈や弁輪部、冠動脈の情報も得られ、手術前の術前精査としても活用できる
大動脈疾患(大動脈瘤、大動脈解離)
  • 大動脈壁・瘤・大動脈解離のフラップ(解離で浮き上がった内側の膜)をより鮮明に描出し、手術の適応評価や術式決定に有用
肺塞栓症
  • 一度の撮影で造影CT画像と肺血流の画像を同時に得られるようになった
閉塞性動脈硬化症
  • 閉塞性動脈硬化症の場合、冠動脈疾患の合併の可能性が高い性質を持つが、下肢の造影CT時に冠動脈CTを撮影することができるため、同時に診断が可能
カテーテルアブレーション
  • カテーテルアブレーションとは、治療用のカテーテルを心臓に挿入し、先端から電流を流して疾患部位を焼灼する治療法
  • カテーテルアブレーションを行う前に、冠動脈CT検査を行って治療のための情報を得られる

冠動脈CT検査と心臓カテーテル検査

心臓カテーテル検査と比較して、冠動脈CT検査は次のような特徴を持ちます。

  • 苦痛が少ない
  • 重篤な合併症がない
  • 低侵襲であり、体への負担が少ない
  • 1回の撮影でさまざまな角度から術後の経過を評価できる

また、冠動脈へのステント挿入後や冠動脈バイパス手術後に、経過観察を行うのにも非侵襲的に行えるため、患者さんの体への負担を減らすことができます。カテーテルの挿入が困難なこともありますので、挿入したカテーテルによってステントやバイパスグラフトが傷つくリスクも少ないとされています。

心臓の疾患が疑われる際、まず初めに冠動脈CT検査で診断を行い、方針を決定するために行われることがあります。特に、狭心症の診断においては有用で、下記のリスク因子や症状のある人には冠動脈CT検査がすすめられます。

冠動脈CT検査の受診がすすめられる人
  • 高血圧や脂質異常症
  • 糖尿病
  • 喫煙をしている
  • 動脈硬化のリスク因子を持っている
  • 胸痛がある
  • 心臓病の家族がいる

ただし、以下の項目に当てはまる人は、冠動脈CT検査を受けることができません。

冠動脈CT検査が受けられない人

冠動脈CT検査は従来のカテーテルを血管内に挿入した行う造影検査よりも身体への負担が少なく、安全性も高いと考えられている一方で、造影剤のアレルギーがある人、放射線の被ばくを避けなければいけない妊娠中の人は検査を受けることができません。
また、造影剤は尿とともに排出されるため、腎機能が悪い方も検査を受けることができない場合があります。

そのほか、心房細動などの不整脈がある人や頻脈の人は心臓の動きが盛んになるため正確な画像が撮影できないことがあるため、冠動脈CT検査は適さないと判断されることがあります。

冠動脈CT検査が弁膜症診断で期待できること

弁膜症の診断では、以前から心エコー検査、経食道心エコー検査が、制度の高いゴールドスタンダードとされてきました。しかし、エコー検査は角度を任意に変更することが難しいため、特に人工弁を利用している症例などで、人工弁そのものが邪魔になってしまい、評価が困難になることが少なくありませんでした。

ところが、CTの時間・空間分解能の向上によって、大動脈弁の詳細な観察や、弁口面積の正確な評価ができるようになりました。これにより、今後は冠動脈CT検査が弁膜症の診断において非常に有用なツールとなるであろうと考えられています。

冠動脈CT検査のメリット・デメリットは?

冠動脈CT検査のメリット・デメリットをまとめると以下のようになります。

冠動脈CT検査のメリット
  • 心臓カテーテル検査と比べ、侵襲性が低く安全
  • 心臓カテーテル検査と比べ、短時間に行える
  • 心臓以外にもその周囲の胸部~上腹部の情報を得ることができる
  • 入院の必要はなく、外来で検査が行える
冠動脈CT検査のデメリット
  • 造影剤アレルギーの人は検査できない
  • 腎機能が低下している人など、検査できない状態がある
  • 冠動脈の石灰化が大きく進行している場合、診断の精度が悪くなる
  • 心臓カテーテル検査と同様に、造影剤の副作用や放射線被曝のリスクがある

冠動脈CT検査は、カテーテルを通す検査よりも非侵襲的、つまり体に直接的に器具を挿入するわけではないため、体への影響が少なく済みます。その点で比較的安全に、そして短時間で簡単に行うことができる検査だと言えます。さらに、心臓カテーテルよりも広範囲にわたって胸部〜上腹部の様子を観察することができます。

しかし、冠動脈CT検査にもデメリットはあります。造影剤アレルギーの人は検査ができない、造影剤と放射線被曝のリスクがある、という点は心臓カテーテル検査と同じです。また、腎機能が正常の範囲内である場合は問題ありませんが、腎機能が低下している場合は造影剤によって腎臓にさらに負担をかけるリスクがありますので、検査ができないこともあります。その他、体の状態によっては冠動脈CT検査を受けることができません。

また、冠動脈の石灰化が進行している場合、診断の精度が低くなることがあります。冠動脈の詰まり具合を実際よりも強く判定してしまうことも多く、石灰化が「ある」か「ない」かを判断するのには有用な検査ですが、石灰化の正確な進行具合を判断するのにはやや不確実であるといえるかもしれません。

おわりに:冠動脈CT検査は体への負担が少なく多角的な診断が可能

冠動脈の検査は、従来のカテーテルを用いた検査では侵襲性の問題がありました。しかし、冠動脈CT検査は造影剤とX線を用いて撮影を行うため、体内に器具を挿入することなく検査を行えます。体の断面を撮影することで、さまざまな角度から患部を描出し、観察・評価がすることで、病変の検出だけでなく経過観察にも有用です。冠動脈CT検査をすすめられる人は、医師と相談のうえ検査を検討してみると安心です。

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