冠動脈バイパス術ってどんな手術?手術をするメリットは?

2018/12/14

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

虚血性心疾患に対して行われる手術「冠動脈バイパス術」。この冠動脈バイパス術とは、具体的にどんなことを行う手術なのでしょうか。手術によるメリットや合併症のリスクなどをお伝えしていきます。

冠動脈バイパス術とは

冠動脈バイパス術とは、心臓を栄養する冠動脈が狭くなったことで起こる虚血性心疾患に対して行われる手術です。

体内の別の血管を、狭くなった先の冠動脈につなぐことで迂回路をつくり、血流を改善させる治療法で、静脈の場合は通常脚の静脈である大伏在静脈を、動脈は胸骨の裏を走る内胸動脈あるいは前腕の橈骨動脈を使用します。冠動脈の中でも最も重要な左前下行枝には長期開存性に優れた内胸動脈を使用します。

冠動脈バイパス術には大きく分けて、人工心肺を使用することで心臓を止めて血管を吻合する「心停止下冠動脈バイパス術(On-pump arrest CABG)」と、人工心肺を使用せず心臓が動いたまま行う「心拍動下冠動脈バイパス術(Off-pump CABG)」があります。

心停止下冠動脈バイパス術は、心臓を止めて血管をつなぐことから、質の高い吻合(ふんごう: 血管や神経などを互いに連絡するように手術でつなぐこと)が期待できるというメリットがありますが、塞栓症や腎障害、出血が起こる可能性があります。

一方、心拍動下冠動脈バイパス術は、人工心肺の使用に伴う合併症やリスクを回避できるというメリットがあり、脳血管や呼吸器など腎機能に障害がある方でも行うことのできる手術ですが、血圧低下や不整脈を引き起こす恐れがあります。

手術は移植する血管数によって異なりますが、短いものでもおおよそ2~4時間前後かかり、難手術で10時間にも及ぶこともあります。入院期間は7~14日が想定されます。

冠動脈バイパス術を行う目的は?

冠動脈バイパス術の目的は、狭窄や閉塞により血液が不足している心筋へ新たな血液を供給して心臓への血流を増加することです。これにより心筋の活動を助けることと、狭心症の予防、そして心筋梗塞の予防をすることができ、患者さんの生活の質の向上および生命予後の延長へとつながります。

冠動脈バイパス術をするかどうかの判断は、臨床症状・運動負荷試験・心臓超音波検査・冠動脈造影・左室造影などさまざまな検査を行い、この結果を総合的に検討することで判断します。また、冠動脈造影検査をした結果において、左冠動脈主幹部に50%以上の有意狭窄、心機能の低下した3枝病変、左冠動脈前下行枝に70%以上の高度狭窄を有するなどの所見が認められた場合は冠動脈バイパス術の対象となります。

その他にも内科的な薬物治療においてコントロール不良な症例や、ステントなどによる経皮的冠動脈内カテーテル治療が困難と思われるような症例は、病変が1枝、2枝であった場合でも手術の対象となります。

冠動脈バイパス術を受けたあとに予想される合併症は?

冠動脈バイパス術によって起こりうる合併症は、冠動脈バイパスの吻合部、あるいはグラフト採取部位からの術後出血、術後心機能障害として心筋梗塞や心不全、致死的不整脈を含む不整脈、脳梗塞、腎不全・肝機能障害・呼吸機能障害、術後感染症が主なものとなります。

術後出血に対しては、開胸手術が必要となるほどの出血は約1%程度とされており、術後感染症は1~4%程度とされています。脳梗塞に対しては1~2%とされていましたが、心拍動下冠動脈バイパス手術の導入以後は減少しています。

その他に、胃潰瘍や消化管出血などの消化器合併症やてんかん発作なども、術後に起こりうる合併症とされています。手術を受ける際には必ずこれらの合併症について担当医から説明をしてもらうようにしておきましょう。

おわりに:メリットやリスクをよく知ったうえで冠動脈バイパス術を

冠動脈バイパス術は体内の別の血管を、狭くなった先の冠動脈につなぐことで迂回路をつくり、血流を改善させるという治療法で、狭心症や心筋梗塞などを予防して生活の質の向上や生命予後を延長することを目的として行われます。

冠動脈バイパス術には心停止下冠動脈バイパス術と心拍動下冠動脈バイパス術があり、それぞれメリット、リスクがあります。また、術後には出血や感染、心機能障害などさまざまな合併所も起こりうる可能性があります。医師からしっかりと説明を受けよく理解したうえで、治療を受けるようにしましょう。

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