虚血性心疾患とは!?心筋梗塞と心不全は何が違うの?

2017/11/29 記事改定日: 2018/12/20
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

虚血性心疾患は、心臓にある「冠動脈」が何らかの原因で狭くなってしまうことで発症します。虚血性心疾患になると、どんな症状が現れるのでしょうか。
この記事では、虚血性心疾患の症状や原因、治療法まで、基礎知識を紹介していきます。

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虚血性心疾患とは?

虚血性心疾患とは、心臓の筋肉に血液を起こる血管である冠動脈の病気のことです。一般的には、主に狭心症や心筋梗塞のことを指します。

心臓は1日10万回程度の収縮と拡張を繰り返しながら、全身に血液を送り出しています。いわゆる「血液のポンプ」の役割を担っており、この心臓の周りにある筋肉に酸素や栄養素を送り込むのが冠動脈です。

冠動脈が細くなって十分な量の血液が心臓に送られていない状態が狭心症で、冠動脈が詰まって血液が流れなくなった状態を心筋梗塞と言います。どちらも、必要な血液量が心筋に流れていない状態で、多くが冠動脈の動脈硬化が原因となっています。

虚血性心疾患の種類

虚血性心疾患には以下のような病気があります。それぞれの特徴は以下の通りです。

狭心症

冠動脈の一部が狭窄することで心筋への血流が低下し、胸痛や胸部圧迫感などを引き起こす病気です。
動脈硬化などによって冠動脈が物理的に狭窄するタイプの「労作性狭心症」と物理的な狭窄がないにも関わらず冠動脈が攣縮することで発症する「不安定型狭心症」があります。

心筋梗塞

冠動脈の一部が閉塞し、その先の冠動脈への血流が途絶えることで広範囲な心筋壊死を引き起こす病気です。
突然の激しい胸痛や吐き気、冷や汗などが生じ、早期に治療を行わないと死に至る可能性が高い重篤な病気です。

虚血性心不全

狭心症や心筋梗塞などによって心筋がダメージを受けると、心臓の拍出能が低下して心不全を引き起こすことがあります。
特に労作時に胸の痛みや呼吸苦が生じるようになり、尿量が減少して全身にむくみが見られることもあります。

虚血性心疾患の致死性不整脈

心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患によって心筋に大きなダメージが加わると、心筋内に異常な電気的興奮が生じて心房細動などの致死的な不整脈を引き起こすことがあります。

虚血性心疾患を引き起こす原因は?

冠動脈にプラークと呼ばれる脂肪の固まりのようなものが内腔に蓄積したり、プラークが破けて脂肪によって血栓ができてしまうことで血流の流れが悪くなったり、場合によっては完全に血液が流れない状態になってしまうことが原因で虚血性心疾患を発症します。
冠動脈が完全に詰まってしまう心筋梗塞になると、心臓が壊死した状態になり命に危険が及びます。

リスクを高める要因

虚血性心疾患は、不安定な生活習慣が発症に大きく関与しています。
虚血性心疾患の最も大きな発症原因は動脈硬化ですが、動脈硬化は肥満や高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病によって引き起こされます。

発症を予防するには、適正カロリーを厳守し、高脂質・高糖分・高塩分の食事を避けましょう。また、適度な運動習慣も発症予防に役立ちます。特に有酸素運動は心臓への負担も少なく、脂肪燃焼効果が高いのでウォーキングや軽めのジョギングを無理のない範囲で行うとよいでしょう。喫煙習慣は動脈硬化の発症リスクになることが知られていますので、禁煙することをおすすめします。

さらに、ストレスや睡眠不足は冠攣縮性狭心症の原因になることがありますので、日頃から休養をしっかり取って無理のない生活を心がけるようにしましょう。

虚血性心疾患の症状

虚血性心疾患は、多くが動脈硬化が原因で引き起こされますが、冠動脈の痙攣によって起こることもあります。どちらも冠動脈が狭くなることで血流が少なくなってしまい、どちらが原因になっていても似たような自覚症状が現れます。

まず、胸の締め付けるような激しい痛みや圧迫感を感じます。心臓がある左側で特に感じることが多いです。ただし、高齢者や糖尿病患者の人は胸の痛みを感じないこともあるので、他の症状で判断する必要があります。

他にも、首がしまって息ができないように感じたり、背中が痛い、動悸、息切れ、頭痛やめまいを感じることもあるようです。

狭心症では圧迫感を感じやすく、心筋梗塞では不安感が出やすいとされています。狭心症で少しずつ冠動脈にプラークが蓄積している状態であれば、日常生活において疲れやすさや倦怠感が気になったり、食欲低下を感じたりします。重度になると意識障害を起こすことがあるので注意が必要です。

虚血性心疾患の治療

虚血性心疾患と診断されたら、まずは薬物療法を行います。血管を拡張させる作用があるニトログリセリンは狭心症に有効であり、血圧を下げたり血液中のコレステロールを減らして動脈硬化の進行を遅らせる効果のある薬を服用することもあります。

また、不摂生な生活習慣は動脈硬化の原因のひとつです。有酸素運動などの適度な運動を取り入れ、塩分や脂肪分の摂取を控えたバランスのいい食事を摂るようにしましょう。

必要に応じて狭くなった冠動脈を広げるカテーテル手術や、冠動脈に体の別の場所の血管を繋いで心臓に血液を送るバイパス手術などが行われることもあります。再発しやすい病気でもありますので、定期的な通院が必要になり、医師の指導のもと生活習慣を見直す必要もあります。

おわりに:虚血性心疾患は再発しやすい病気。治療後も再発予防に努めよう

虚血性心疾患は、心臓の筋肉に酸素や栄養を送っている冠動脈の病気です。重症化して心筋梗塞を発症すると死の危険があります。治療後も再発しやすい傾向があるので、生活習慣を見直して再発予防に努めましょう。

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