低温やけどの適切な処置は? 「冷やす」は間違い!?

2019/1/17

谷口 隆志 先生

記事監修医師

川崎たにぐち皮膚科、院長

谷口 隆志 先生

カイロを貼ったまま寝てしまったり、湯たんぽを長時間当てていたりしたときに起こる可能性のある「低温やけど」。今回はこの低温やけどの適切な処置や、病院での治療法についてお伝えしていきます。

低温やけどの処置、「冷やす」は間違いってホント?

低温やけどとは、湯たんぽやカイロなどで同じ場所を長時間暖め続けた結果、起こるやけどです。熱湯のように高温の熱源ではありませんが、40~50℃の低温でも長時間接触を続ければやけどになり、重症度に応じてヒリヒリ感やかゆみ、赤み、水ぶくれなどの症状が起こります。

この低温やけどになってしまったときの処置についてお話します。「熱湯がかかった」「火に触れてしまった」といった一般的なやけど(高温のやけど)の場合、適切な処置とされるのが「冷やす」行為ですが、低温やけどの場合にも、朝起きたときにやけどしていたのがわかるような受傷直後であれば患部に熱のダメージが残っていますので、さらに進行するのを少しでも和らげるために「冷やす」処置を行います。

一方で、低温やけどを受傷した直後には気付かずに、後になって深い傷になって気付いた場合には、すでに熱のダメージがおさまっているため患部を冷やす必要はありません。

低温やけどの適切な処置って?

では、低温やけどになったときどんな処置をすればいいのかというと、皮膚科を受診してください。
低温やけどの多くは痛みがほとんどなく、水ぶくれも大きくないため、「大したことない」と思われがちですが、反射的に体が逃れる高温のやけどと違い、低温の熱源に長時間当たってしまっているために、皮膚の深くまで損傷が進んでおり、見た目よりも重症のケースが多いのです。放置していると深く壊死にまで進行してしまう恐れもありますし、自然治癒には半年以上かかることもあります。

なお、赤みが出る、ヒリヒリするといった症状でおさまっていれば、ワセリンを塗って保護すれば自然治癒する可能性がありますが、受傷直後に外からの見た目だけで深さを判断することは困難ですので皮膚科を受診することをおすすめします。

低温やけどのとき、やってはいけない処置とは

「味噌や油、アロエを塗る」という民間療法があるようですが、これは行わないでください。また、水ぶくれをつぶす行為もNGです。いずれも患部から雑菌が侵入し、細菌感染を起こしてしまう恐れがあります。

なお、消毒も行わないようにしてください。消毒液には殺菌作用がありますが、悪い菌を殺すだけでなく良い細胞組織も破壊してしまい、さらに患部がかぶれて傷を悪化してしまう可能性があるからです。

おわりに:症状は軽度に見えても、実は重症のケースも。低温やけどはすぐに皮膚科へ

低温やけどはやけどの一種ではありますが、適切な処置の方法は、一般的な高温やけどとかなり異なります。また、水ぶくれが小さく、痛みもそこまでないことから軽くとらえがちですが、実は皮膚の深くまでやけどが進行しており、重症化しやすいのも特徴です。軽く考えず、すぐに皮膚科を受診しましょう。

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