記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/4/20
記事監修医師
前田 裕斗 先生
赤ちゃんを両手で抱きかかえて母乳を与えている風景は、母と子の永遠の図…といってよいほど美しいものです。
赤ちゃんとのスキンシップもとれるし、何よりも添加物ゼロの純粋な母乳である安心感が、赤ちゃんによい影響を与えるにちがいありません。
しかし残念なことに、母乳を与えてはいけない場合もあります。母乳について少しお知らせします。
妊娠第二期の14週頃に入ると、胸の乳管が詰まったり、肥大したりしながら、赤ちゃんを育てられるように準備しています。これらのしこりや腫れは、赤ちゃんのために体が準備をしている証です。この状態がなければ母乳を作り出すことができません。出産後の授乳時期が終了すればもとに戻りますから、心配をすることはありません。
母乳を作るためには、母体の栄養にも気をくばる必要があります。ビタミンCは、血管、骨、軟骨および筋肉内で、体がコラーゲン(体内の結合組織として使用される主なタンパク質)を形成するのも助けてくれます。授乳中の女性は、毎朝朝食に新鮮なフルーツサラダを取り入れましょう。イチゴ5−6個分、またはメロンの角切り1カップ分(手のひらぐらいの量)で、ビタミンCの推奨量1日分を摂取できます。
授乳した母親は、乳がんのリスクを減らすという研究結果が出ています。
生まれた赤ちゃんには、できるだけ長い間、母乳育児をする。母乳育児は、妊娠糖尿病後に2型糖尿病を発症するリスクを低下させることがわかっています。これは、母乳育児が糖代謝とインスリン感受性を改善し、今後の糖尿病発症リスクを半減させるためです。そして、授乳期間が長くなればなるほど、リスクが低くなります。
はっきりした理由は不明ですが、赤ちゃんに母乳をあげることで、SIDSの可能性を減らすことが研究によって示されています。
赤ちゃんの感染対策をしっかりとれば、授乳を制限する必要はありません。
HIVで、母乳を通じて赤ちゃんにHIVを感染させることがあるため授乳は避け、人工乳を与えるようにしましょう。
いよいよ妊娠後期第32週頃になると「初乳」といわれる黄色味を帯びた液体が漏れ出すことがあります。これは母乳に先駆けて出るものです。プロテインと免疫体を含んでおり、赤ちゃんが最初に飲むものの一部で栄養豊富なものです。
出産後に母乳が出すぎたときのためにも、哺乳瓶を準備したり、搾乳器の準備をしましょう。容器の滅菌対策も含めて、母乳だけでは対応できないときのために、人工ミルクの用意もお忘れのないように。
それでなくても出産後のお母さんは疲れています。母乳が出すぎても心配だし、出なくて悩むこともあるでしょう。母乳で育てる効果は、予想を上回る大きなものがあるようですが、あくまで可能なら、です。神経質になりすぎないでください。