記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/1/13
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
囊胞性肺疾患には、生まれつきできる先天性嚢胞性肺疾患と、生まれてからできる後天性嚢胞性肺疾患があります。あまり聞いたことのない病気かもしれませんが、これは肺の病気で、幼児から小児では最悪の場合死に至るケースもあります。囊胞性肺疾患とはどのような病気か、症状や治療方法についてご紹介していきます。
囊胞性肺疾患とは、「肺嚢胞症」とも呼ばれる病気で、肺内に丸い袋状の構造物(嚢胞)ができる病気です。
嚢胞は体の色々なところにでき、たとえば肝臓や腎臓の中にできた嚢胞ならば内容物は水分、女性の卵巣にできるチョコレート嚢胞(子宮内膜症性卵巣嚢胞)の場合は古い血液で、肺にできる嚢胞は空気でできています。肺嚢胞症には、肺の形成過程での異常により発生する気管支性嚢胞と、炎症や傷跡などにより胸膜の近くに発生する気腫性嚢胞症があります。
そのほとんどが先天性で、発生部位によって、縦郭(左右の肺の間のこと)と、肺内の嚢胞に分類されます。縦郭内にある縦郭気管支嚢胞は日本では稀で、肺内に発生する肺内気管支嚢胞がよくみられます。心臓、肺、心膜、胸膜、食道、横隔膜などの異常を伴うことがあります。
肺内の異常に拡大した気腔(体の中にある空気のスペース)の病変のことで、胸膜直下にみられる気腫性嚢胞や、片肺の3分の1以上を占める巨大気腫性嚢胞などがあげられます。また、自然気胸発症の原因の多くは、気腫性嚢胞の破裂によるものと考えられています。
一般的に症状はありませんが、幼児から小児では呼吸器症状が強くあらわれ、ときに死亡することもあります。
一方、成人で症状がある場合、嚢胞に近い臓器が圧迫されることによって発生する症状か、嚢胞内で起きた感染による症状がみられます。嚢胞によって気管支が圧迫されると、呼吸困難や咳、呼吸するときにゼーゼー音がする喘鳴(ぜんめい)がみられます。
また、食道が圧迫されると、食べ物が飲み込みづらくなる嚥下障害が引き起こされます。あるいは、嚢胞壁が破れて感染した嚢胞の中身が縦隔や近くにある気管支内へ流れ込み、細菌と白血球と粘液の混ざった膿性(のうせい)たんや血たんをもたらすこともあります。
気管支性嚢胞症と同じく、一般的には症状はありません。しかし、成長した巨大な嚢胞が、健常な肺を圧迫すると呼吸困難を引き起こします。感染の合併やのう胞の破綻により、気胸が発生することもあります。
気管支性嚢胞症は無症状なので、健康診断などの胸部X線検査などで偶然発見されることがほとんどです。腫瘤と周辺組織の境界が明瞭で、円形の均等影が気管支付近の縦隔や肺の中に観察されれば、この病気を疑います。胸部中央にある嚢胞では、食道が圧迫されている像が観察されることもあります。
小さな嚢胞で無症状のものは経過観察となる場合もありますが、経過観察中に嚢胞が大きくなって症状があらわれたり、嚢胞内部に炎症が起こったりすると、周辺組織と癒着してしまい、切除の際に周囲から剥離するのが難しくなります。このため、原則的には手術で切除し、切除後は良好な経過をたどります。また、喫煙は感染や症状を悪化させることがあるため、禁煙することが大切です。
こちらも気管支性嚢胞症と同様に、健康診断などの胸部X線検査などで発見されることがほとんどです。肺の機能障害を引き起こすような巨大気腫性嚢胞は、手術で切除します。
感染を起こしている場合は炎症が生じていることが多いので、抗生物質や去たん薬を使用して治療を行ない、炎症が完全に消失してから切除の治療を行うケースがほとんどです。
肺嚢胞症は、嚢胞に何かしらの菌が感染したり、巨大化した嚢胞が他の臓器を圧迫したりして初めて異常がみられます。
重度の場合は、無気肺といって、肺の一部もしくは全体に空気が入っていない状態を引き起こすこともあります。
定期的に健康診断を受け、いつもと違う息苦しさを感じるようになったら、肺嚢胞症を疑ってみましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。