記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/1/17 記事改定日: 2020/5/27
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
生きるためのエネルギー作りに必要不可欠な酸素は、肺の働きによって体に供給されており、肺機能が低下すると肺疾患など体に重大な影響を引き起こします。ここでは、とくに注意したいタバコのリスクや治療方法を紹介します。
鼻や口から吸い込んだ酸素はのどを通って気管支に入り、肺へ届きます。気管支は左右の肺に入り、細かく枝分かれをします。気管支の先には「肺胞」という空気が入る小さな袋がついていて、ブドウの房のようなかたちをしています。肺胞は毛細血管に取り囲まれ、血管に酸素を渡しています。血管は、肺胞に二酸化炭素を送ります。
このように、酸素と二酸化炭素の入れ替えが肺の中で行われています。そのため、肺機能が低下すると酸素の供給がうまくいきません。脳は酸素不足の状態をなんとかしようと、心臓に「もっと血液を循環させて酸素を全身に送りなさい」と命令を出し、働かせようとします。肺機能が低下すると心臓の負担を招き、心不全など心疾患発症の可能性を上昇させるのです。
肺は上でも述べた通り、呼吸によって酸素を摂り込み、体内で産生された二酸化炭素を吐き出す作用を担う重要な器官です。
そのため、肺の機能が低下すると次のような症状が引き起こされます。
また、機能がさらに悪化すると、体内に必要な酸素が不足することで、歩行など日常的な動作が困難になることもありますし、心臓にも負担がかかるため心不全を引き起こし、動悸やむくみなどの症状が現れることもあります。
肺機能を低下させる主な原因の一つに、慢性閉塞性肺疾患(COPD)があります。COPDのおもな原因は「タバコの煙」です。
また、加齢も肺機能を低下させます。つまり、健康な人でも肺疾患を発症しないとは限らないのです。
慢性気管支炎や肺気腫など、肺の炎症性疾患の総称です。タバコの煙、粉塵、大気汚染、ウイルスや細菌への感染などが原因とされます。中高年に多い生活習慣病のひとつで、喫煙者の15~20%がCOPDを発症し、以下のような症状があらわれます。
COPDを発症して肺がダメージを負った場合、肺を健康的な状態に回復させる方法はありません。早期発見と適切な治療の早期開始で、肺機能の悪化を食い止めることが重要です。以下では、COPDでとられる治療方法を紹介します。
禁煙は、喫煙者の治療の基本です。タバコへの依存度が高い場合、禁煙補助薬(ニコチンパッチなど)など、専門医の指導のもとで薬物療法を検討します。
気管支拡張薬を使用して、気管支の働きをサポートする治療が一般的です。気管支拡張薬や感染症に対する抗生物質でも改善がみられなかった場合、吸入ステロイドを取り入れます。
COPDは感染症リスクが高く、症状を悪化させる場合もあります。そのため患者さん本人、家族、介助者にワクチンの接種を推奨しています。
呼吸リハビリテーション
患者さんの自立のために、呼吸困難の緩和、運動能力の向上を目指します。運動療法、栄養療法、セルフマネジメント教育などの総合的なサポートを行います。
呼吸によって十分な酸素を取り込めなくなった結果「低酸素血症」を発症し、呼吸不全を招くことがあります。医師の判断のもと要件を満たした場合に「在宅酸素療法」がとられ、酸素提供装置で酸素を持続的に吸入します。医療従事者による装置の説明や使用方法の指導が必須の治療法です。
上記で紹介した治療を行っても症状に改善がみられない場合、外科的治療が必要となりますが、根本的な治療とはいえません。医師にしっかりと相談し、症状や術後の生活を考慮したうえで手術を検討していきます。
加齢は誰にでも起こる変化ですが、肺機能低下への対策をとることはできます。肺の活動は、横隔膜など呼吸筋の動きによって正常に行われます。筋力は加齢とともに弱くなりますので、深呼吸に合わせて腕・肩・胸・背中を動かす呼吸筋トレーニングを行ったり、深呼吸をしながら胸部・肩等をストレッチすることで、呼吸筋の機能低下を防ぐことをおすすめします。
生活習慣の見直しも欠かせません。喫煙者のCOPD発症率は非喫煙者と比べて高いので、喫煙習慣を控えるようにしてください。できれば禁煙を目指しましょう。
また、栄養バランスのとれた食事も大切です。動脈硬化は肺機能にダメージを与えるおそれがあります。野菜を積極的に摂取し、脂質やカロリーは摂り過ぎないよう注意してください。さらに、ウイルスなどの有害物質も肺機能を弱らせます。風邪などが流行している時期は、外出時にマスクを着用して体を守りましょう。
COPDは根本的な治療が難しく、健康的な状態への回復は現代医療で望めません。特に喫煙者は、のどや呼吸に異常を感じたらすぐに病院を受診してください。一方、加齢によるCOPD発症予防にはトレーニングが効果的です。日常的にできる対策と、適切な検査・治療を組み合わせ、肺機能を健康的に維持していきましょう。
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