記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2020/3/10
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
大動脈瘤ができると、最悪の場合血管が破裂する恐れがあるため、破裂する前に適切な治療を受けることが大切です。この記事では、大動脈瘤の治療法としてどのようなものがあるかや、治療のタイミングなどを解説します。
大動脈瘤とは、動脈硬化などで弱くなった大動脈にできるこぶ状のふくらみのことを指します。大動脈とは体の中で最も太い血管で、心臓の左心室から送り出された血液がまず通るところです。大動脈は、ほかの血管よりも壁が数ミリと厚いことが特徴です。心臓から直接勢いよく出てきた血液が通るため、大動脈には100mmHg以上の高い圧がかかります。そのため、動脈硬化などで弱くなった部分があるとこぶができやすくなるのです。
そしてこのこぶは、いったん大きくなると加速度に膨らみます。その結果、血管壁が薄くなっていくため、最悪の場合破裂に至ります。また、大動脈瘤はこぶが30~40mm以上膨らんだものを指します。胸部に動脈瘤がある場合を胸部大動脈瘤、腹部に大動脈瘤がある場合を腹部大動脈瘤といいます。
大動脈瘤は自覚症状がないまま大きくなっていくことがほとんどです。まれに大動脈が膨らむときに痛みを感じるということもありますが、それさえ感じないまま進行していき、症状が最終的に出るのは大動脈瘤が破裂したときです。そのため、大動脈瘤が見つかったら治療をする必要があるのです。
大動脈瘤の治療は大動脈瘤の大きさや患者さんの状態、破裂危険率と手術危険率を比較して総合的に判断します。大動脈瘤は胸部50~55mm以上、腹部40~45mm以上となると破裂する可能性が高くなります。これより小さい場合や、現在の全身状態によってはすぐに治療を受けなくてもよいと診断される場合もあります。しかし、その場合でも大動脈瘤は一旦大きくなるとどんどん加速して大きくなっていくため、定期検診を継続して行い大動脈瘤の大きさを観察していくことが必要です。
大動脈瘤の治療方法は内科的治療、外科的治療、ステントグラフト治療に大別されます。
内科的治療は、薬物を使用して血圧をコントロールして大動脈瘤の拡大および破裂を予防します。しかし、大動脈瘤の根本的な治療には至りません。
外科的治療では、大動脈瘤のある血管を人工血管に置き換えます。一般的に胸部大動脈瘤で55~60mm、腹部大動脈瘤で45~50mmを超えれば手術適応と考えられています。また、紡錘状瘤よりも嚢状瘤のほうが破裂の危険性が高く、早期に手術適応としています。
ステントグラフト治療は近年注目されている治療法で、足の付け根の動脈から入れたカテーテルを通じて、外側に金属のリングであるステントがついた折りたたみ式の人工血管(ステントグラフト)を大動脈瘤のところに挿入します。こうすることで大動脈瘤を治癒させることが可能になります。
また、大動脈瘤があると診断されたものの、今すぐに治療の必要がないといわれた場合には、高血圧、高脂血症、糖尿病といった大動脈瘤形成の誘因となっている疾患の治療をしたり、大動脈瘤の発症に大きくかかわっている喫煙をやめるなど、日常生活の見直しも治療の一環となります。さらに急激な温度差や熱湯のお風呂、便秘など血圧が変動する生活習慣を是正することも大動脈瘤をさらに大きくさせないための治療のひとつとなります。
大動脈瘤と診断された場合、必ずすぐに治療が必要というわけではありません。医師が現在の全身状態や大動脈瘤の大きさなどを見て、総合的に治療が必要かどうかを判断します。
大動脈瘤の治療には、薬剤を使用した内科的治療、外科的治療、ステントグラフト治療があります。外科的治療やステンドグラフト治療は、大動脈瘤の大きさによって行われるためすべての人に適応であるわけではありません。そのため、大動脈瘤と診断された場合には診察をしてくれている医師の治療計画に従って治療を受けましょう。