記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
大動脈瘤は、体の中で一番太い血管(大動脈)にこぶができることです。高血圧や動脈硬化、糖尿病を始めとする生活習慣病が原因で発症します。この記事では、大動脈瘤の原因や症状とともに、発症した場合の対処法についても解説します。
大動脈は、体の中で最も太い血管です。胸からお腹まで体の中心を軸として、全身に分岐しており、心臓の左側下部にある左心室から送り出された血液が通ります。
心臓が最初に送りだす血液をしっかりと受け取るために、大動脈の血管の壁は厚くて弾力があります。しかし、弱くなった部分に血圧が強くかかり続けると、こぶのような膨らみ(瘤)ができることがあります。大動脈瘤は、大動脈に瘤ができた状態のことをいいます。また、大動脈から枝分かれをした動脈にできる瘤を動脈瘤といいます。
胸部にできたものを胸部大動脈瘤、腹部にできたものを腹部大動脈瘤といいます。大動脈瘤や動脈瘤は、一度大きくなり始めると一気に大きくなり、最終的には破裂してしまいます。大動脈瘤が破裂すると、激しい痛みとともに大出血によってショック状態となり、命を落とすこともあります。
大動脈瘤の原因の多くは、血管の動脈硬化によるものと考えられています。動脈硬化は、血管の内側に脂質がたまったり、血管が硬くなったりしていくことをいいます。
血管は生まれたときから徐々に変化していくため、高齢になればなるほど動脈硬化は進んでおり、大動脈瘤もできやすくなると考えられます。また、高血圧や脂質異常、糖尿病といった生活習慣病によっても動脈硬化のリスクは高まります。また、喫煙は血管に負担をかけ動脈硬化の原因となると考えられています。結果として、大動脈瘤のリスクも高まるといえるでしょう。
また、睡眠時無呼吸症候群も大動脈瘤の拡大を進めるといわれています。そのほか、大動脈の血管壁が弱く変化してしまう変性疾患や、ケガ、感染や炎症なども原因とされています。原因がはっきりしないものもあり、遺伝の可能性が疑われています。
たとえ大動脈瘤ができても、小さいときは自覚症状はほとんどありません。しかし、大動脈瘤の場所によっては、大きくなるにつれて周囲組織を圧迫することで症状があらわれることがあります。
胸部では大動脈弓の周辺には反回神経という大きな神経があります。弓部大動脈瘤が大きくなるにつれて神経を圧迫し、神経の働きを邪魔することで症状があらわれることがあります。反回神経は、声帯や飲み込みにかかわる運動を支配している神経です。そのため、しわがれ声になったり、むせやすさや飲み込みづらさが起こることがあります。また、胸や背中の痛み、血の混ざった痰といった症状が生じることもあります。
腹部大動脈瘤では、ほとんど自覚症状がないといわれます。痩せている人などは、外から触ったときに膨らみを感じることがあります。そのため、健康診断の超音波検査やCT検査で発見されることがあります。また、腰やお腹に持続して強い痛みを感じるときには、すでに破裂のリスクが高まっているかもしれません。
いずれにしても、何らかの自覚症状があらわれているときには、大動脈瘤が大きくなっている可能性があります。早期の受診がすすめられます。
大動脈瘤は自覚症状が起こりにくく、症状があらわれたときには大きくなっていたり、破裂して命の危険性が高くなったりする病気です。
大動脈瘤の大きな原因に、血管に負担をかける高血圧や、血管の内部が細くなってしまう動脈硬化があります。高血圧や動脈硬化の要因としては、糖尿病や脂質異常、喫煙習慣などがあります。血管の負担を軽減するために、食生活や運動といった生活習慣の見直しや喫煙などを行っていきましょう。
また、定期的に検診を受けるほか、自覚症状が気になるときは放置せずに受診をしてみましょう。たとえすぐに治療が必要なくても、定期的に大動脈瘤の大きさの変化を確認しながら、必要であれば早期の治療につなげることができるのではないでしょうか。
大動脈瘤は、人間の体の中でもっとも太い血管にできる膨らみをいいます。自覚症状はほとんどなく、かなり大きくなってから見つかったり、破裂するまでわからなかったりすることもあります。大動脈瘤は、破裂すれば太い血管から大出血が起こるため、命を失うこともある病気です。
定期的な検診を受け、必要であれば血圧のコントロールや生活習慣の見直しを行っていきましょう。また、異常を感じたときは放置せず、早めに受診をすることが大切となるでしょう。