記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/1/28
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
従来の紙巻きタバコよりもニコチンなどの有害物質が少ないという謳い文句から、「健康的なタバコ」「禁煙に近づくツール」としても近年注目されている、アイコス®やグロー®等の加熱式タバコやVAPE等の電子タバコ。これらの新型タバコは、本当に紙巻きタバコよりも禁煙につながりやすいのでしょうか?
タバコの葉っぱを燃やし、煙を吸い込む紙巻きタバコ。一方、アイコス®やプルームテック®、グロー®といった加熱式タバコは、葉を加熱して水蒸気を吸い込むタイプのタバコで、また十分な検証が実施されていないものの、紙巻きよりもタールの摂取量が少ないといわれています。
しかし、加熱式タバコにもニコチンは含まれているので、禁煙の障害となる「ニコチン依存」の問題は解決しません。尿中のニコチン代謝物の量を加熱式タバコの喫煙者と紙巻きタバコの喫煙者で比較したところ、前者のほうが高い数値が出たという研究も報告されています。
また小規模調査になりますが、紙巻きタバコからアイコスに移行した人の喫煙意識を調査した結果によると、加熱式タバコによって禁煙に至った事例は少数派だったようです。
そもそも新型タバコには、「加熱式タバコ」と「電子タバコ」があります。加熱式タバコの概要はさきほど説明したとおりですが、電子タバコはタバコの葉っぱが含まれておらず、リキッドを加熱して発生した水蒸気を吸い込むタイプのタバコです。ニコチン入りのものと、ニコチンを含まないものの2種類に分けられます。
この電子タバコを吸っている人の禁煙の成功・失敗について、国立がん研究センターが、過去5年間で禁煙に取り組んだ20~69歳の禁煙施行者約800名を対象に調査したところ、電子タバコを使用した人は使用しなかった人よりも禁煙成功者が37%も少なかったことがわかったそうです。
また、アメリカのピッツバーグ大学などの研究によれば、電子タバコを使用した人は約47%の割合で18ヵ月後に喫煙者になっており、これは電子タバコを使用しなかった人のなんと6.8倍にあたる数値で、禁煙成功どころかむしろ失敗のリスクを高める行為と考えられるようになってきています。
実は国内外の数々の研究により、紙巻きよりも新型タバコを吸っている人のほうがタバコをやめられなくなっているという結果が報告されています。国内の研究によると、新型タバコの喫煙者は、禁煙の際に使用する禁煙補助剤「バレニクリン」(ニコチン依存症の症状を和らげる作用がある)をより多く必要とする傾向にあるという報告もあがっています。
「有害物質が大幅にカットされている」といった謳い文句から、依存性が低いと思われがちな新型タバコ。しかし数々の研究によって、新型タバコの依存性は決して低いものではなく、むしろ禁煙成功を遠のかせる恐れがあるとして、問題視されるようになってきています。禁煙外来を受診して薬物療法をしたほうが、禁煙の成功率は格段に上がるともいわれているので、禁煙目的での新型タバコ使用は避け、病院で治療することをおすすめします。
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