どうしても禁煙が続かない…その理由は?

2018/2/14 記事改定日: 2019/1/21
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

禁煙を始めてもなかなか続かない…と思い悩んでいる人は多いと思います。この記事では、禁煙が続かない理由や、タバコが持つ害、禁煙外来について解説します。

禁煙を続けられない理由とは?

禁煙しようと心に誓っても続けられない、という経験をされた人は多いと思います。では、なぜタバコはなかなかやめられないのでしょうか。

それは、タバコに含まれる「ニコチン」の依存性が原因です。脳の中にはニコチンを感じる受容体があり、タバコを吸うとその受容体にニコチンがくっついてドーパミンが分泌されます。ドーパミンは脳内神経伝達物質のひとつで、快楽や喜びを司るホルモンです。タバコを吸うとドーパミンが分泌され、気分がよくなったり、おいしいと感じたりするようになります。そして、脳がこの快楽を覚えてしまい、もう一度吸いたいと強く感じてしまうのです。

タバコにはどんな悪影響がある?

タバコには4,000種類もの化学物質が含まれています。そのうち200種が有害物質で、さらにそのうちの50種類以上が発がん性物質です。タバコの代表的な有害物質としてニコチン、タール、一酸化炭素がありますが、そのほかにアセトン(ペンキ除去に使われる物質)やヒ素も含まれています。このことからも、体への有害性が非常に高いことがうかがえます。

継続的な喫煙は体にさまざまな害をもたらしますが、なかでもがんの発症リスクは特に高くなります。肺がんはもちろんですが、食道がんや胃がんなどを発症する恐れがあるのです

また、副流煙を吸うことも発がん性リスクが高くなることがわかっています。タバコは喫煙者本人だけでなく、周囲の人にまで悪影響を及ぼすのです。

低タール・低ニコチンのタバコにも害はある?

低タール、低ニコチンであれば健康への影響は少ないのでは、と思いがちですが、実はそういうわけではありません。

タバコのパッケージに記載されているニコチンやタールの数値は、タバコ1本あたりの含有量ではなく、一定量喫煙した場合の煙を分析して算出した数値です。書かれている数値が実際のものよりも低くなることもあるので、体への害が少ないとは言い切れないのです。

また、軽いタバコほど深く吸い込んだり、根元まで吸ったりする傾向があるため、総合的にみると体に取り入れられてしまう有害物質の量は大きく変わらない場合もあります。

禁煙を続けるには?

自分の意志や市販の禁煙グッズのみで禁煙できない場合、「禁煙外来」を利用するのも一つの方法です。現在では、多くの医療機関で禁煙外来が設けられており、比較的利用しやすくなっています。

禁煙外来では、まず喫煙期間や本数、これまでの禁煙対策などの問診が行われ、必要に応じて禁煙補助薬(チャンピックス®など)が処方されます。禁煙補助薬は、脳内のニコチン受容体に結合し、ニコチンの受容体への結合を物理的に阻害する作用を持ちます。このため、タバコを吸っても多幸感が得られなくなると同時に、少量のドーパミンを分泌させる効果があるため、タバコの禁断症状を緩和することができます。

禁煙補助薬を使用すると、これまで禁煙できなかった人の半数以上が禁煙に成功すると言われています。必要に応じて、禁煙補助薬のほかにニコチンパッチやニコチンガムといったニコチン製剤が併用されるケースもあります。

費用は健康保険の適応になりますので、3割負担では診察料も含めて3カ月の通院で1~2万円ぐらいかかります。ただ、若年者や吸う本数が少ない人は、保険適応とならずに全額自己負担となることもありますので、事前に医療機関に問い合わせてみてください。

おわりに:ニコチンの依存性でやめられないタバコ。必要に応じて禁煙外来の利用も検討を

タバコに含まれるニコチンには依存性があるため、自分の意志ではやめることが難しいです。喫煙する人だけでなく、副流煙で周囲の人の健康にも影響を及ぼすことがわかっています。禁煙外来の利用も選択肢に入れ、ストレスをさほど感じることなく禁煙できるようにすることも大切です。

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