記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/2/10
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
溶連菌感染症は、発症するとのどの痛みと腫れ、突然の高熱、おう吐、赤い発疹が体にできるといった症状があらわれます。この記事では、もしこの病気を発症してしまっても自然治癒で治してしまっても問題ないかどうかや、自然治癒で治したことにリスクはないかなどを解説します。
「溶連菌感染症」とは、溶連菌(溶血性連鎖球菌)とよばれる細菌の飛沫感染(飛び散った唾などを吸い込むことなどによる感染)によって起こる病気の総称です。
代表的な症状は、のどの痛みと腫れ、突然の高熱、おう吐といった風邪に似たもので、頭痛、腹痛などがでることもあります。
特徴的なのは、体や手足に小さな赤い発疹や、舌にイチゴのようなブツブツ(イチゴ舌)が出ること、咳や鼻水が出ないことです。ただし発疹は必ず出るわけではなく、また3歳以下では熱はあまり上がらないこともあります。
症状は感染してから2~5日程度の潜伏期間を経てあらわれ、一般の風邪のように数日間で自然に治ってしまうこともあります。ただ、熱が下がらず、のどの痛みもひどい場合は、受診して検査を受けて薬を処方してもらうのが安心です。というのも、体内に残っている細菌が活発になって再発したり、重い合併症を引き起こす場合があるからです。
合併症の代表的なものとして、「急性腎炎」があります。溶連菌感染症にかかって1~2週間後に目の腫れや血尿が起こり、悪化すると肺に水が溜まって呼吸困難を引き起こす可能性があります。
また、「アレルギー性紫斑病」になると1~2週間後に手足に出血斑や腫れがあらわれます。腰痛や関節痛が起き、さらに紫斑性腎炎も併発して治療が長引く場合があります。近年ではほとんどみられなくなっていますが、2週間後前後に高熱や関節痛、心臓弁膜の障害などを起こす「リウマチ熱」などもあります。
のどの迅速検査(5~10分)をして、溶連菌が出た場合には10日間ほど抗生物質を服用しますが、熱が下がったからといって3~4日で抗生物質をやめてしまうと、再発して合併症を起こしやすくなります。薬は医師の指示通り、きちんと最後まで飲むことが大切です。
もともと溶連菌は珍しいものではなく、主にのどの病気を引き起こす菌として子供の20%前後、大人でも2~3%程度はのどに存在しているといわれています。
しかし、溶連菌がのどの粘膜や傷口から体内に入ると、「劇症型溶血性連鎖球菌感染症」となって重症化することがあります。
劇症型溶血性連鎖球菌感染症を発症する原因は、まだ明らかになっていません。発症すると、最初は手足が痛む程度で見た目に変化はありませんが、徐々に赤くなったり、水ぶくれができるなどして高熱に見舞われます。進行すると、手や足の筋肉が壊死して腐っていき、3日以内にショック状態となって多臓器不全で死に至る方が30%近くいます。
現時点では抗生物質による治療以外に対処法はなく、溶連菌が手足などに侵入して壊死が始まってしまった場合は切断してそれ以上の転移を防ぐことしかできません。このため、劇症型溶血性連鎖球菌感染症は「人食いバクテリア」ともよばれています。
一般の風邪のように数日間で自然に治ってしまうこともありますが、熱が下がらずのどの痛みが続くなら必ず受診するようにしましょう。生き残った細菌による再発や重い合併症を引き起こすことがあるので、検査した上で医師の指示に従って抗生物質をきちんと最後まで飲みきるようにしましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。
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