大動脈瘤は手術しないと小さくならないって本当?

2019/3/5

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

人間の体の中でもっとも太い血管である大動脈。この大動脈の血管壁が弱くなった結果、こぶのようなものができるのが大動脈瘤です。この記事では、大動脈瘤が見つかったら手術が必要なのかどうかや、手術以外の治療法はないのかを解説します。

大動脈瘤は手術しないと治らない?

大動脈瘤は、薬を内服して血圧をあげないようコントロールして、破裂を防ぐということはできます。しかし、薬だけで大動脈瘤を小さくすることはできません。そのため、長期的にみれば手術が必要となります。

大動脈瘤で手術するかどうかは、内科治療における破裂および大動脈解離のリスクとの比較により、大動脈径60mm前後が比較的妥当な基準と考えられています。

大動脈瘤で行う手術とは

大動脈瘤で行う手術では、人工血管置換術もしくは血管内治療(ステントグラフト内挿術)が行われます。

人工血管置換術とは、大動脈瘤の部分をポリエステル繊維などでできた人工血管で置き換える手術です。合併症症状がなく、手術が安全に行われれば、待機手術の死亡率は1~3%程度とされています。

大動脈瘤のできている部分によって、手術の手技は異なります。胸部大動脈瘤の場合、人工心肺によって血液を体外循環させながら、この部分をダクロンというポリエステル繊維でできた人工血管で大動脈瘤を置き換えていくのが一般的です。感染合併例では、ゴアテックス®︎という樹脂でできた人工血管を使用します。また、腹部大動脈瘤の場合、体外循環は必要としません。大動脈瘤壁は切除せず、後で人工血管を覆うために使用します。

血管内治療(ステントグラフト内挿術)とは、カテーテル類を用いて足の付け根の血管である大腿動脈から治療するものです。人工血管置換術と比較して低侵襲であることが特徴で、近年急速に発展してきている治療法です。適応できる範囲が限られていて、胸部大動脈領域では下行大動脈瘤の治療に用いることが一般的です。

大動脈瘤の手術をするタイミングは?

大動脈瘤は大きくなればなるほど破裂をする可能性が高くなるため、この大動脈瘤の大きさが手術を行うタイミングを見極めるきっかけとなります。

通常、大動脈瘤が直径5~6cmになれば破裂の危険性が高まるので手術を行うとされています。2011年に改訂された大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドラインでは、一般的に6cm以上の胸部大動脈瘤は手術による治療が推奨されています。しかし、動脈瘤が急激に大きくなった場合や、嚢状大動脈瘤、マルファン症候群などの場合は、6cm以下でも手術の対象となります。

また、特に胸部大動脈瘤がある方では、冠動脈疾患や脳血管病変、高血圧や糖尿病、腎機能障害、呼吸機能障害など多くの合併症を併発している場合があるため、主治医がこれらの疾患との兼ね合いを総合的に評価して手術をするかどうかが決定します。

手術する場合、想定されるリスクは?

胸部大動脈瘤の手術では、いったん自分の心臓を止めて人工心肺を使用するため、心機能が低下することが予想されます。また、脳梗塞などの脳合併症が3~5%発生するリスクがあり、発症した場合は重大な合併症となります。そのほか、脊髄神経障害が0~5%、呼吸不全が3~8%、腎不全が2~5%、動脈損傷・出血が2~6%ほどとなります。

腹部大動脈瘤の手術では腸管の機能の低下、腸の癒着による腸閉塞、創部の感染が合併症として考えられます。

また、術後は術前同様の日常生活を送ることができますが、人工血管自体は、感染に対して弱いので、歯などを受ける場合は、事前に人工血管のことを、担当医に知らせたほうが良いでしょう。また、発熱が続く場合は感染を起こしている可能性もあるため早めに主治医へ相談するようにしましょう。

おわりに:大動脈瘤は手術でないと除去できない!適応者はなるべく早い手術を

大動脈瘤は薬を服用すれば破裂を予防することはできますが、小さくすることはできません。したがって、いずれは手術が必要となります。手術が必要になるのは、大動脈瘤の直径が5~6cm以上の方ですが、これ以外でも医師が必要と認めた場合には手術の適応となります。手術が必要と診断された場合には、なるべく早く手術を受けるようにしましょう。

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