妊娠初期のからだの変化~気をつけたい症状と検査~

2017/4/10

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

妊娠初期では、からだに大きな変化が起こります。妊娠前とはあきらかにちがう変調に、多くの人はとまどいます。症状の差はあっても、ほとんどの妊婦さんが経験することで心配することはありません。それよりも、妊娠初期がもっとも「流産」の危険性が高いということを理解することが重要です。

妊娠初期に気をつけたい症状

以下のような症状が1つでもあるときは医師に連絡し、受診してください。

・腟(ちつ)からの大量出血
・激しい腹痛
・急なのどの渇き
・排尿痛
・38℃以上の熱、寒気、背中の痛み
・手や顔の激しいかゆみ
・視覚障害

妊娠初期にしておきたい検査

初回の妊婦健診では全身の身体検査のほかに、各種感染症の検査、細胞診検体検査(パップスメア)、尿検査、血液検査など一連の検査を受けます。
超音波検査では、胎児の状態を確認します。
また、生殖器に病気がないか、糖尿病でないか、家族の病歴をふまえての問診や検査があるかもしれません。医師の質問に備えるだけでなく、服用している薬は安全か? 禁煙や飲酒など頭に浮かんだものはすべて質問して相談してください。

出生前診断

ダウン症や先天異常がないかどうかを調べる以下のような出生前診断があります。出生前診断を受けるかどうかは、医師の説明を十分に受けたうえで決めてください。大切なことは、検査の結果が確定的なものかどうか(必ず遺伝子や染色体異常があると診断できるものかどうか)と、検査は必ずしも絶対ではない、と理解しておくことです。

非侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)

妊婦から採血した血液中の遺伝子から胎児の染色体や遺伝子を調べます。この検査は確定的なものではありません。NIPTで陽性になった場合、羊水検査などの確定診断を得るための検査を行うことができます。また、年齢が低い方は元々遺伝子や染色体異常をきたす可能性が低いため、積極的にこの検査を受ける価値はありません。

羊水検査

子宮に長い注射針に似た針を刺して羊水を吸引して(羊水穿刺)得られた羊水中の物質や羊水中の胎児細胞をもとに、染色体や遺伝子異常の有無を調べる検査です。この検査は確定的な検査です。一方で破水などの合併症も多い侵襲的な検査になります。

風疹抗体検査と風疹予防接種

妊娠初期に風疹に罹患すると、難聴、白内障、心臓の異常など胎児に影響がでることがあります。母体が風疹に感染しても胎児に感染しているとは限りませんが、胎児感染の確定診断のためには羊水検査が必要となります。超音波検査でも胎児に感染しているかどうかの徴候を調べることはできます。
妊娠中の風疹感染を予防するために、風疹抗体検査(妊娠12週ころまでに実施されます)を受けましょう。抗体なし、あるいは抗体価が低いときには感染する危険があります。産後に風疹ワクチン接種を受けることにより抗体を得ることができます。

おわりに

妊娠は、女性が母親となる最初のステップです。健康な赤ちゃんを産むために母子保健法に基づいて推奨されている「妊婦健診」は、妊娠が正常に経過していることを確認し、妊娠中に発症するさまざまな合併症の発症を予防します。妊娠によって変化するからだをケアすることは、赤ちゃんの健康にもつながります。

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