大動脈解離の予後について ― 治療したらまた元気になる?

2019/12/26

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

大動脈解離の原因は、主に高血圧や動脈硬化などといわれています。今回は大動脈解離の症状や治療法などをご紹介します。

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大動脈解離ってどんな病気?

心臓から手や足など体中に血液を巡らせている大動脈は、内側から順に「内膜」「中膜」「外膜」という3つの壁からできています。中膜は内膜と外膜をつなぐ役割があり、それぞれには十分な弾力と強さがあるため、簡単に破れることはありません。

しかし、内膜の一部が裂け、中膜の中へ血液が入って大動脈が裂ける「大動脈解離」になることがあります。また、この状態がさらに進行し、中膜に入った血液が新しく道をつくることで血管が膨張した状態も、大動脈解離(解離性大動脈瘤)と呼びます。原因は不明とされていますが、主な原因は高血圧や動脈硬化といわれています。

急に血圧が上がった場合などに発生しやすいと考えられていますが、まれに先天的に中膜が弱いマルファン症候群などの病気の人にみられることがあります。

血管が裂けた箇所や状態によっては、意識障害、麻痺、腹痛、下血、腎不全などさまざまな症状がみられます。突然発症するため、痛みも強烈といわれ、胸部、腹部、脚と下方向に痛みが移ることが特徴です。破裂した場合にはショック状態となって失神を引き起こすこともあります。

男女ともに70代に最も多く発症しますが、40~50代でもみられる場合があります。また発症時期は夏に少なく、冬に多いことも特徴のひとつです。

大動脈解離はどうやって治療する?

まずは薬物療法を行い、収縮期血圧を100~120mmHg以下に保つことが優先されます。ただし、裂けたところが心臓に近い上行大動脈にまで及んでいる場合は緊急手術が必要となり、裂けた血管が人工の血管に置き換えられる場合もあります。手術では、脳分離循環法や超低体温循環法などの人工心肺操作が行われます。一方、裂けたところが背中側にある下行大動脈以下にある場合には、手術はせずに経過観察を行うこともあります。

血圧の管理をきちんと行い、血圧を下げる薬の服用や減塩食、禁煙などを通して通院します。改善されない場合には、手術が必要となることもあります。

治療したらどのくらい長生きできる?

裂けた箇所が心臓に一番近い部分であった場合には70%、離れた部分であった場合には90%の人が退院することができるといわれています。一方で治療を行わなかった場合には、2週間以内に約80%の人が死亡するといわれています。

治療後、日常生活で気をつけることは?

人工血管による感染はまれにしか起こらないといわれていますが、注意する必要があります。その原因として、抜歯や歯槽膿漏などが挙げられます。歯科治療を受ける際には、事前に歯科医師へ大動脈の手術を受けていることを伝えましょう。

また38度以上の高熱が続く場合は病院での受診が必要です。胸骨の切断による手術では、胸骨ワイヤーで固定しているため、過度な負荷をかけるとワイヤーが切れたり、骨がずれる恐れがあります。手術後半年ほどは上半身をねじるような運動は避け、3カ月程度は車の運転も控えてください。手術の治り方や痛みの具合には個人差があるため、傷口が化膿すると熱がある、赤く腫れるなどの場合にはすぐに医師へ相談しましょう。

おわりに:大動脈解離は緊急性が高い場合もあります

まずは薬物療法が基本といわれていますが、場合によってはすぐに手術が行われることもあります。もし手術をした場合は主治医の指示に従うとともに、体に負担をかけないような生活を送りましょう。

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