脳出血の治療で手術を受けるのはどんなとき?想定されるリスクは?

2020/1/8

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

脳出血の治療というと、外科的手術を思い浮かべる人もいるのではないでしょうか。そこで今回は、脳出血した場合の治療法とそのリスクについてご紹介します。

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脳出血の治療は手術が必要?

出血が少ない場合や比較的症状が軽い場合、点滴を行って損傷した脳の腫れの悪化を防いだり、血圧を下げることで出血を抑えるといった内科的治療が優先されます。

一方、重症の場合は開頭手術を行うこともあります。脳出血を起こすと「血腫」という塊ができます。この塊が大きくなったり、脳に直接ダメージを与えることなどにより、正常にはたらいている脳を圧迫してさまざまな障害を脳内に引き起こすといわれています。そのため、止血だけでなく、開頭手術を行うことで頭蓋内圧の上昇を防ぐことができると考えられています。

 

手術に伴うリスク

手術を行う上で考えられるリスクとして、主に以下のようなものが考えられます。

脳内の合併症

次のような場合、正常な脳細胞を一部切り取らなければならないことがあります。

  • 血腫に行き着くまでに、除去することが必要と判断された場合
  • 手術中に脳浮腫を起こした際、脳の腫れが広範囲に及んでいた場合

このような場合、手術前にはなかった神経症状があらわれることがあります。また血腫を取り除いたことにより、止血されていた血管から出血したり、他の血管から出血することで止血ができない場合には血腫が大きくなる可能性もあります。

感染症や薬剤などによる副作用

開頭手術によって、脳や皮下組織などが露出され、外からの微生物が侵入します。そのため、手術中や手術後に微生物を死滅させるための抗生物質を使うといわれています。大抵の患者さんは感染による問題は起きないとされていますが、抗生物質の効き目や患者さんの抵抗力の弱さなどにより、脳腫瘍や細菌性髄膜炎などの感染性合併症を引き起こす恐れがあります。

また抗生物質だけでなく、その他にも麻酔薬などさまざまな薬剤を使用して手術を行うため、人によっては副作用を起こすことがあります。さらに輸血をする場合にはまれにエイズウイルスやB型肝炎ウイルスなど、さまざまな感染症にかかる場合も考えられます。また手術後に糖尿病や胃潰瘍など、それまでかかったことのない病気になったり、持病が重症となることがあります。

その他

血腫を取り除いても脳の腫れが強い場合、脳の圧迫が続いて生命に危険が及ぶ恐れがあります。また、手術後に意識が回復せずに植物人間になったり、意識が戻った場合でも麻痺が残って寝たきりの状態になることも考えられます。手術の時間が長時間に及ぶことで、手足や胸部などの一部分に強い圧が加わり、組織が障害を起こす褥瘡ができる場合があります。また場合によっては頭蓋骨の一部を取り除くこともあるため、頭蓋骨が変形し、見た目の問題が起きる可能性が考えられます。

おわりに:内科的治療が最優先

脳出血の治療では、重症の場合に外科的手術が選択されます。ただしさまざまなリスクはつきものです。まずは救命を第一に考えて行われるということを心に留めておきましょう。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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