記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/3/8
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
ピーナッツやうるしなど、食べ物や植物でアレルギー反応が出る場合があることはよく知られていますが、実は薬でもアレルギー反応が出ることがあります。この記事では、薬によるアレルギー反応としてどのような症状がみられるかとともに、アレルギー症状を予防するために気をつけたいポイントを紹介します。
私たちの周りにあるものは、人間にとって良い影響を与えるものばかりではありません。細菌やウイルスなど、人間に不調を引き起こし、ときには命に関わるものも存在しています。そのため、体には自分の細胞と外部から入ってきた異物とを区別し、異物を排除するための免疫という仕組みがあります。
しかし、中には本来はそこまで反応しなくても良い物質に対して、免疫が過剰に反応をしてしまうことがあります。この状態をアレルギーがあるといいます。アレルギーは花粉やダニ、ペットの毛、食品などによって起こることが知られていますが、病気を治療する目的で使った薬に対して起こることもあります。
アレルギー反応が恐ろしいのは、命に危険を及ぼすような、重症のアレルギー反応が起こる可能性があることです。この強い反応をアナフィラキシーといいます。発疹や浮腫などの皮膚粘膜症状や、呼吸困難や気道が狭くなるといった呼吸器症状、血圧の低下、意識障害、激しい腹痛や嘔吐などの症状があり、死に至る可能性もあるため迅速な治療が必要です。
重度のアナフィラキシーが起こった場合、血圧を正常にし、気管支を拡張するためにアドレナリンの筋肉注射が第一選択薬となります。呼吸器官の腫れによって呼吸が著しく困難な場合は、気管内挿管や気管切開を行い、気道を確保することになります。
過去には、薬へのアレルギーとして「ペニシリン・ショック」が注目されたことがあります。抗生物質として知られるペニシリンが原因となって強いアレルギー反応を起こし、死亡例もあったことから社会的にも注目されました。現在も、抗生物質や解熱鎮痛薬はアレルギーを起こす可能性があるとされています。ほかに、ホルモン剤や、体内のそれぞれ化学反応に必要とされる酵素製剤、胃カメラなどで使う造影剤などが、他の薬に比べるとアレルギーを起こしやすい薬として知られています。
薬がアレルギーの原因として疑われるときには、まずは、どんな薬を使用していたかを確認します。ある程度、原因として疑われる薬が絞られたら皮膚テストを行います。
皮膚テストにはさまざまなものがありますが、比較的よく知られているのがパッチテストです。パッチテストでは、皮膚に小さな傷をつけてアレルギーの原因として疑われる薬剤を塗り、一定時間経過後の状態を確認します。このほか、皮膚の下に薬を注射して発赤が起こるかどうかを確認する方法もあります。
また、薬剤誘発テスト(薬の量を増やしたときの反応をみるテスト)もあります。この検査を行う場合、万が一検査中に強いアレルギー反応が起きてもすぐに対応できるよう入院して行うこともあります。また、アレルギー反応の程度を確認するために血液検査を行うこともあります。
アレルギーの原因となっている薬が判明した場合には、その薬剤を中止します。しかし、抗がん剤や抗結核薬など、どうしても服用が望ましい薬があるときには、少量から徐々に量を増やして、からだを慣らしていく方法がとられることもあります。
一度、何らかの物質に対してアレルギー反応を起こすと、体内に抗体ができます。抗体は、再び同じものが入ってきたときに、抵抗をして体外に排出するように働きます。インフルエンザや風疹、はしかなどの各種予防接種は、この抗体をつくることを目的としています。
しかし、薬に対する抗体ができると、同じ薬に対してアレルギー反応が起こるばかりか、似ている薬を飲んだときにもアレルギー反応を起こすことがあります。そのため、薬によるアレルギーを防ぐためには、たとえ以前起こした反応が軽症であっても、薬の名称を必ず覚えておき、医師や薬剤師に伝えることが大切です。
また、食品などにアレルギーがある人は、薬に対してもアレルギーが起こる可能性があります。さらに、家族にアレルギー体質の方がいるときも、突然アレルギーが起こることがあるので気をつけましょう。
アレルギー反応は、異物から体を守るための免疫反応によって起こります。アレルギーの原因はさまざまで、本来は体調をよくするために使ったはずの治療薬で、アレルギー症状が起きてしまうこともあります。
万が一アレルギー反応が起こると命に関わることもあります。どの薬に対してアレルギーが起こったことがあるかがわかっているようでしたら、必ず医師や薬剤師に伝えましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。