記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/6/5
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
播種性血管内凝固症候群(DIC)とは、血管内に小さな血栓がたくさんできることがきっかけで発症する病気で、既にがんや白血病などを発症している方に多くみられます。この記事では、DICを発症したときにみられる症状や治療法を紹介します。
播種性血管内凝固症候群(DIC)とは、様々な原因によって身体の血を固める作用(凝固作用)に異常がおきることによって生じる症候群のことで、汎発性血管内凝固症候群と呼ばれることもあります。DICは、元々がん、白血病、敗血症といった疾患にかかっていることで発症する病気で、これら3つの病気がDICの原因の多くを占めています。
がん細胞や白血病細胞の表面に凝固反応を引き起こす組織因子が現れ、通常の止血時と同様の現象が起こって全身に血栓が生じます。全身に血栓が無数に生じると細い血管も詰まるため、血流が妨げられます。そうすると酸素や栄養などが組織に届かなくなり、結果として生命に重大な危険をもたらす恐れがあります。
また、血栓ができるとその血栓を溶かすためにプラスミンが活発に働くようになります。本来出血を止めるためにできた血栓をも溶かしてしまうため、さらに出血しやすくなります。
このように、血液を固める凝固作用と固まった血液を溶かす作用が同時に無秩序に起こる病気であり、治療が極めて難しい病気であるとしています。DICは治療を積極的に行ったとしても寛解率が約50%と非常に予後が厳しい病気になります。
DICは突然発症する場合とゆっくりと発症する場合で、現れる症状が微妙に異なります。
突然発症する場合、静脈内注射をしたところや、脳、消化管、皮膚、筋肉、体腔などあらゆるところに出血が起こります。この場合にみられる症状として、皮膚に内出血ができやすい、鼻血、歯ぐきの出血、血尿、鮮血便、目(結膜)の出血などの出血症状があります。
ゆっくりと発症する場合、出血よりも静脈内の血栓が多くみられます。この場合にみられる症状として、血栓ができた部分の腫れ、発赤、痛みがあります。また、血栓が脳にできると意識障害、肺にできると呼吸困難や息切れ、ほかにも尿が出なくなったり黄疸がみられたりします。また、進行すると多臓器不全となり、死に至ることもあります。
DICの治療として、主に基礎疾患の治療、抗凝固療法、補充療法の3つがあります。基礎疾患の治療で原因を取り除くことができれば、凝固が改善する可能性があります。
抗凝固療法では、多くの場合抗凝固薬が使われます。代表的なものとして、合成プロテアーゼインヒビターやアンチトロンビン、そして共同して凝固にブレーキをかける役割のヘパリン類などがあります。
補充療法とは、DICによって消費され、減少していった血液成分を体外から補っていく方法です。血小板製剤、凝固因子全般を補うための新鮮凍結血漿製剤、アンチトロンビンⅢ製剤が使用されます。特に、突然発症した場合には命にかかわるリスクが高まるため、補充療法を行うことが必要です。
播種性血管内凝固症候群(DIC)はがん、白血病、感染症にかかっている人の発症が4分の3を占めています。積極的に治療しても、寛解率は約50%程度になりますが、それでも早期に発見、治療するのが理想です。DICを発症しやすい病気にかかっている人で、明らかな出血症状もしくは凝固症状が見られた場合は、早急に治療を受けるようにしましょう。