過活動膀胱の原因と治療方法について

2023/6/7

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

急な尿意を我慢できなくなったり、さっきお手洗いに行ったばかりなのにまた行きたくなってしまったり…。このような症状が起こる状態を過活動膀胱と言います。過活動膀胱の治療ではどのような薬を服用し、薬以外にはどのような治療方法があるのでしょうか。過活動膀胱の原因とあわせて解説していきます。

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過活動膀胱とは?

過活動膀胱は、頻繁に尿意をおぼえてトイレに行きたくなってしまったり、我慢しきれずに頻尿や尿漏れなどを起こしてしまう状態です。過活動膀胱は、何らかの原因で尿を溜めている膀胱の働きが過敏になり、尿意や排尿のタイミングのコントロールを失ってしまうことによって起こります。

おもな症状としては、尿意が急に起こり、我慢できなくなってしまう「尿意切迫感」や、トイレが近くなってしまう「頻尿・夜間頻尿」、トイレまで尿を我慢できず漏らしてしまう「切迫性尿失禁」などが挙げられます。「頻尿」かどうかは、なかなか自分では判断しづらいところもありますが、昼間の場合は1日8回以上、夜間の場合は1回でもトイレのために起きるのであれば「頻尿」と判断できるようです。

過活動膀胱の原因について

過活動膀胱は、おもに神経のトラブルが原因の「神経因性過活動膀胱」と神経トラブル以外が原因の「非神経因性過活動膀胱」に分けられます。

神経因性過活動膀胱

「神経因性過活動膀胱」は、脳と膀胱(尿道)を結ぶ神経のトラブルが原因で起こるものです。脳血管障害・パーキンソン病・多系統萎縮症・認知症・脳腫瘍などの脳の障害、脊髄損傷・多発性硬化症・脊髄腫瘍・頚椎症・脊髄血管障害などの脊髄の障害がおもな原因となります。

非神経因性過活動膀胱

「非神経因性過活動膀胱」の原因として、下部尿路閉塞・加齢・骨盤底の脆弱化・原因が特定できない突発性のものなどがあります。このなかには、加齢による男性ホルモンの乱れなどが原因で起こる前立腺肥大症や加齢や妊娠・出産などによって起こる骨盤底筋の損傷のように、男女の性別の違いによって起こりやすさに違いがあるものもあります。

過活動膀胱の治療方法

過活動膀胱の治療は、主に薬を用いて行われます。使われる薬剤として代表的なものは、膀胱のまわりにある排尿筋をゆるめて膀胱を拡げる抗コリン薬(抗ムスカリン薬)で、ポラキス®︎錠(オキシブチニン塩酸塩)、バップフォー®︎錠(プロピベリン塩酸塩)などがあります。薬には特徴に違いがあり、たとえば、ポラキス®︎錠は有効性が高いというメリットをもつ反面、便秘や口の乾きなどの副作用が起こりやすく、バップフォー®︎錠は作用時間が長くポラキス®︎錠よりも副作用が少ないといわれています。また、ブラダロン®︎錠(フラボキサート塩酸塩)は比較的軽めの症状に使われる薬で、副作用も少ないといわれています。

また、尿路が狭くなることによって起こる過活動膀胱では、尿道を拡げる交感神経遮断薬(α受容体遮断薬)が使われます。排尿困難だけでなく、頻尿や尿意切迫感にも効果が期待できる薬で、エブランチル®︎カプセルやハルナール®︎カプセルなどが代表的です。エブランチル®︎カプセルには血管を広げる作用があるため高血圧の薬などにも用いられていますが、立ちくらみや尿失禁などの副作用があります。なお、ハルナール®︎カプセルは比較的副作用が少ない薬ですが、前立腺肥大症にしか保険適応されないため、女性が服用することはできません。

薬以外の治療方法

薬以外の治療法として、まず「行動療法」があります。「行動療法」とは、食事や運動、トレーニングを用いる治療法です。たとえば、肥満や便秘を改善するための生活指導、骨盤底筋を鍛えるためのトレーニング、尿を我慢して膀胱の容量を増やす膀胱訓練、皮膚から電極を流して骨盤底を刺激する干渉低周波療法などがあります。

また、「磁気刺激療法」や「仙骨神経刺激療法(SNM)」という治療法もあります。「磁気刺激療法」とは、急速な磁場の変化によって骨盤底領域に電流を起こし、骨盤底領域の神経を刺激する治療法です。「仙骨神経刺激療法(SNM)」とは、排泄に関する神経に持続的に電気刺激を与える治療法です。心臓ペースメーカーのような装置を体内に埋め込み、症状の改善を図ります。

おわりに:薬物療法が中心だが、行動療法や磁器刺激療法など薬を使わない治療もある

過活動膀胱は、神経が原因のものとそれ以外が原因(原因がわからないものも含む)のものがあり、一般的に薬物治療を中心に治療が行われ、「行動療法」「磁器刺激療法」「仙骨神経刺激療法(SNM)」などの治療方法を用いることもあります。

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