ST合剤ってどんなときに服用する抗生物質なの?

2019/4/24

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

抗生物質は、私たちの体に侵入した細菌を殺して炎症や痛みを抑えて感染症を治す働きがあります。こうした働きを持つ抗生物質には、患者の体質や感染症を起こしている原因細菌にあわせて使う薬を変えられるよう、さまざまな種類があります。この記事では、抗生物質のうちST合剤について解説します。

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ST合剤ってどんな薬?

ST合剤は、スルファメトキサゾール(Sulfamethoxazole)とトリメトプリム(Trimethoprim)の2種類の有効成分を含む抗生物質の一種です。治療のためにST合剤が使用される疾患として、以下のようなものがあります。

  • 慢性的な呼吸器疾患
  • 慢性的な膀胱炎
  • ペニシリン体性肺炎球菌
  • メチシリン耐性黄色ブドウ球菌による感染症
  • ニューモシスチス肺炎          など

上記の通り、ST合剤は食中毒のような日常でよく起こりうる感染症にはほとんど処方されません。ただ、一般的な抗生物質では十分な効き目が得られない場合や、少量ずつ長期間の抗生物質の投与が必要と判断される疾患に対し、ST合剤の処方が検討されることがあります。

あまり日常的な感染症には使われませんが、腎臓・膀胱・肺などの特定の臓器や、感染症治療薬の第二・第三の選択肢となり得る点が、ST合剤の特徴といえます。

ST合剤の働きは?

人間の体内に侵入した細菌は、自らの遺伝情報を含むDNAを複製することで増殖し、さまざまな症状を引き起こします。細菌は、自らDNA複製に必要なジヒドロ葉酸を合成して作り出し、さらに活性化させてテトラヒドロ葉酸に変換する過程を経て増殖していきます。

ST合剤は、細菌がDNA複製のために葉酸を合成する過程を以下の2段階で妨害し、細菌の増殖を防ぐことで殺菌・抗菌効果をあらわします。

  1. まず、スルファメトキサゾールが合成に必要な酵素の働きを阻害することで、第一段階であるジヒドロ葉酸の生成を止める
  2. 続いてトリメトプリムが、ジヒドロ葉酸をテトラヒドロ葉酸に活性化させる酵素の働きを阻害する

したがって、ST合剤は細菌が繁殖するメカニズムを崩すことで増殖を防ぎ、細菌を減らして感染症への治療効果を発揮する薬剤といえます。

主なST合剤の治療薬は?

以下に、ST合剤に分類される代表的な治療薬をご紹介します。

注射用の液剤として

  • バクトラミン®︎注

内服用の散剤として

  • ダイフェン®︎配合顆粒
  • バクタ®︎配合顆粒
  • バクトラミン®︎配合顆粒

内服薬の錠剤として

  • ダイフェン®︎配合錠
  • バクタ®︎配合錠
  • バクトラミン®︎配合錠

ST合剤の副作用は?

ST合剤の服用によって想定される代表的な副作用として、以下のようなものが挙げられます。

比較的軽度で、現れやすい副作用

  • 皮膚症状(発疹、じんましん、かゆみ、赤い斑点、水疱などを伴うもの)
  • 消化器症状(吐き気や嘔吐、腹痛、下痢、食欲不振などの症状を伴うもの)
  • 頭痛、めまい

重篤な状態になりやすいが、発症頻度がまれな副作用

  • 血液障害(白血球や赤血球、血小板が急激に減少する)
  • 血液障害による貧血や発熱、急な高熱、のどの痛み、皮下や歯茎などからの出血、さかむけなどの症状

またアレルギー体質の方の場合、ST合剤を服用し始めたときにアナフィラキシーショック(呼吸困難や意識の消失など、強いショック症状を伴うもの)を引き起こす恐れがあります。アレルギー体質かもしれない、と思う方は、ST合剤を服用する前に必ず医師または薬剤師にその旨を伝えてください。

おわりに:ST合剤は腎疾患や呼吸器疾患など、特定の疾患治療を中心に処方される抗生物質

ST合剤は、日常生活でかかりやすい感染症の治療薬として処方されることはないものの、ほかの抗生物質で十分な効き目が得られない場合や、腎臓・膀胱・肺など徳敵の臓器や部位の疾患治療に対して処方されることがあるものです。ただし、アレルギー体質の方の場合は副作用を引き起こす恐れがあるので、もしST合剤の処方を…といわれたら、医師・薬剤師にその旨伝えてください。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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