カルバペネム系の抗生物質の特徴・副作用は?

2019/5/28

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

実は抗生物質には色々な種類があり、それぞれ効果を発揮する病気が違います。カルバペネム系抗生物質は尿路感染症や副鼻腔炎など、細菌が原因となって起きる病気に効果を発揮します。今回はカルバペネム系抗生物質の特徴や副作用などをまとめました。

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カルバペネム系抗生物質とは

カルバペネム系抗生物質は、グラム陽性菌から陰性菌まで効果を示す範囲が広い抗生物質です。カルバペネム系抗生物質の種類としてはイミペネムやメロペネムなどがあり、特にイミペネムが陽性球菌に抗菌活性を示し、メロペネムが陰性桿菌に抗菌活性を示します。

カルバペネム系抗生物質に自然耐性を持つ細菌はマイコプラズマ、MRSA、クラミジア、真菌、レジオネラなどで、抗菌活性を示さない細菌は限定されています。そのため、重症患者さんに対しては最初はカルバペネム系抗生物質を用い、微生物学的な検査の結果が判明した後は、原因菌に作用する抗生物質に切り替える方針で治療が進められることもあります。

カルバペネムは様々な細菌に効果を発揮するため治療の切り札として使用されることが多いです。安易な使用はその反面で耐性菌を生んでしまい将来カルバペネム耐性菌を生んでしまいます。そのため、医師は必要な時に限ってカルバペネムを使用するように推奨されています。

カルバペネム系抗生物質の働きは?

カルバペネム系抗生物質は、細菌の細胞壁合成を阻害することで抗菌作用をもたらします。細菌が生きのびるためには細胞壁が欠かせないのですが、カルバペネム系抗生物質は細胞壁の合成に関わるタンパク質のひとつ(ペニシリン結合タンパク質[PBP])と結合することで、細胞壁の合成をブロックします。

主なカルバペネム系抗生物質の治療薬は?

カルバペネム系抗生物質には下記のような薬剤があります。

メロペン

従来のカルバペネム系抗生物質の治療薬に比べて中枢神経系への影響が少なく、意識障害やけいれんなどを引き起こす確率が低いとされています。また、腎障害を引き起こす腎毒性も従来の治療薬より少ないとされています。

オラペネム

カルバペネム系抗生物質としては珍しい内服薬(飲み薬)です。子どもの肺炎や副鼻腔炎、中耳炎などに用いられます。

フィニバックス

尿路感染症や呼吸器感染症などの原因となる「緑膿菌(りょくのうきん)」に対して、高い抗菌作用が期待できる薬です。従来のカルバペネム系抗生物質に比べると、中枢神経系への影響を抑えており、けいれんや意識障害などを起こす確率が低くなっています。腎障害を引き起こす腎毒性も、従来の治療薬よりは軽減されています。

カルバペネム系抗生物質の副作用は?

カルバペネム系抗生物質は副作用が現れることがあります。副作用が出た場合は、すみやかに医師に相談しましょう。
以下に主な副作用をまとめました。

中枢神経障害

頻度は非常に低いですが、意識障害や痙攣が起きる場合があります。

消化器症状

下痢や嘔吐などが起きる場合があります。

腎機能障害

頻度は非常に低いですが、急性腎不全などが起きることもあります。体がだるい感じがする、発疹、尿がほとんど出ない、尿量が減る、むくみなどの症状がみられたら注意が必要です。

てんかん発作

カルバペネム系抗生物質を使用すると、バルプロ酸の血中濃度が低下する傾向があります。それにより、てんかん発作などが起こりやすくなるという危険性もあります。

なお、カルバペネム系抗生物質とバルプロ酸ナトリウムと併用することはは禁止されています。セレニカやデパケンといったバルプロ酸ナトリウムが処方されている方は、カルバペネム系抗生物質の服用を控えなければならないため、診察時に必ず医師に伝えてください。

おわりに:カルバペネム系抗生物質には幅広い抗菌作用があります

カルバペネム系抗生物質は下痢などの副作用もありますが、幅広く細菌に効く頼もしい抗生物質です。ただ、カルバペネム系抗生物質との併用が禁止されている薬などもありますので、必ずご自身が服用している薬や、治療中の病気などを医師に伝えましょう。また、カルバペネム系抗生物質は内服薬ならば医師の指示通りに服用し、自己判断で服用をストップしないようにすることも大切です。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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