記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/4/17
記事監修医師
前田 裕斗 先生
赤ちゃんは、乳幼児健康診査(以下、健診)を受けなければなりません。日本では、母子保健法によって「満1歳6カ月を超え満2歳に達しない幼児に対する1歳6カ月児健診、満3歳を超え満4歳に達しない幼児に対する3歳児健診を実施しなければならない」とされています。対象の月齢・年齢は各市町村の工夫に委ねられていますが、ここではそのなかでも多くの市町村で施行されている6カ月健診と9カ月健診についてお話します。
生まれてすぐの1カ月健診は、赤ちゃんとともにお母さんの検診も兼ねていました。6カ月健診は、言ってみれば赤ちゃんだけのはじめての健診なのです。
6カ月健診では、赤ちゃんの身長、体重、頭囲の計測を行います。1カ月健診から比べて赤ちゃんはずいぶん大きくなったことでしょう。ついついちゃんと大きくなっているかどうかを気にしてしまいがちですが、正常範囲の値には幅があることは頭にいれておいてください。赤ちゃんの成長には個人差があります。何か気になる点があれば、医師に尋ねてみましょう。
生後半年以上たった赤ちゃんでは、毎日11 mgの鉄分が必要といわれています。これは14~18歳男児の推奨摂取量と同じ量にあたります。特に母乳栄養で育った赤ちゃんではビタミンDが不足する傾向にあり、米国小児科学会のようにビタミンDを毎日400 IU摂取するように国として推奨しているところもあります。日本では学会として推奨することはないものの、赤ちゃんに「ビタミンD欠乏症」が増えているという現状があります。ここまで完全に母乳栄養なら、離乳食で必要な栄養が補えているのか、離乳食をあまり食べてくれないなどの心配事はこの機会に医師に相談してみましょう。
そのほかに、歯が生えてくる兆候があるか、頭部の柔らかい部分が閉じたり、少し縮んできているかで発達の進み具合を評価します。頭が動かせるか、視力はどうか、聴力はどうか、手を伸ばしたり、寝返りや発語ができるかを確認します。こうした動作や赤ちゃんの発達面で心配があるようであれば、気づいたときにメモしておき、健診時に医師に質問してみましょう。
9カ月健診では、身体と精神の発達を評価します。赤ちゃんの身長、体重、頭囲を計測して、前回との比較をしてどのような成長をしているのかを診るとともに、以下の項目を確認します。
・1人で座っていることができるか
・物に手を伸ばしたり、つまみあげることができるか
・隠したものを探そうとするか
・名前や「バイバイ」「ダメダメ」などの言葉に反応するか
・「いないないばあ」のような遊びに反応するか
・「指差し」や「手を振る」などのコミュニケーションを取ろうとする動作をするか
・赤ちゃんの原始反射である「パラシュート反射」ができるかどうか
医師は、これによって赤ちゃんの成長度を確認するとともに家での様子を聞くかもしれません。日中どのように過ごしているか、好きな遊びなどをメモしておくといいでしょう。
病気を見つけ出すために成人が行う「検診」では、事前に問診表を自分で記入することから始めます。赤ちゃんの「健診」では、お母さんが問診表のようなものです。赤ちゃんが健康に育ってくれていることを確認するために、日常を母子健康手帳にメモしておくといいでしょう。
疑問に思っていることは、この機会にすべてお医者さんに投げかけてください。お医者さんは、あなたの投げた球を受け取ってナイス・スローで返してくれるでしょう!