Th2サイトカイン阻害薬が処方されるのはどんなとき?

2019/7/3

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

アレルギー症状を抑えるための薬には、さまざまな種類があります。そこで今回は、Th2サイトカイン阻害薬の効果や副作用などをご紹介します。

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Th2サイトカイン阻害薬とは

アレルギー反応は、外から体内に入ってきたアレルゲンに免疫システムが反応し、アレルゲンを排除しようとする体の防衛反応です。本来必要な反応ですが、これが過剰に反応するようになると、鼻水や喘息などのアレルギー症状が表れます。

このようなアレルギー反応は、何らかの原因によって免疫細胞からアレルギー症状や炎症などを引き起こすもとになる「サイトカイン」や、IgE抗体などの「免疫グロブリン」という物質が放出されることによって引き起こされます。免疫細胞の中でも特に重要なはたらきをもつリンパ球の「ヘルパーT細胞」の中にあるTh2細胞は、サイトカインの一種であるインターロイキン(IL)などを生成します。

「Th2サイトカイン阻害薬」は、Th2細胞から作られるIL-4やIL-5の生成を抑制することによって、IgE抗体と白血球中の好酸球を減らし、鼻水、鼻づまりなどのアレルギー症状に効果を表すといわれています。またTh2サイトカイン阻害薬は、アレルギー性鼻炎だけでなく、アトピー性皮膚炎や喘息などの治療にも使われることで知られています。

Th2サイトカイン阻害薬がアレルギー性鼻炎の治療で使われる場合とは

アレルギー性鼻炎になると、くしゃみや鼻漏(鼻汁分泌)、また鼻閉(鼻づまり)などがみられることがあります。

ガイドラインでは、通年性アレルギー性鼻炎を①くしゃみや鼻汁の症状が強い「くしゃみ・鼻漏型」、②鼻づまりの症状がくしゃみなどより強いものを「鼻閉型」、③くしゃみや鼻汁と鼻づまりが同じくらいの程度の「充全型」の3つにわけています。通年性アレルギー性鼻炎の治療では、くしゃみ・鼻漏と鼻閉の症状をそれぞれ、くしゃみの回数や鼻づまりの程度などから「軽症」「中等症」「重症」にわけて薬などが選択されます。

このうち、Th2サイトカイン阻害薬は、軽症または中等症の「鼻閉を主とする充全型(主症状の鼻づまりに加えて、くしゃみや鼻汁もみられるタイプ)」で使用される場合があります。

花粉症では処方されないの?

花粉症は毎年、大抵同じ時期に花粉が飛び始めると症状が出始めます。花粉症の薬である第2世代の抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬は、現在出ている症状にはたらくため、即効性に期待できます。そのため、花粉症が飛び始めてから服用を始めても症状の改善が見込まれます。

しかし、Th2サイトカイン阻害薬は、症状が出始める前に服用することで症状を軽くすることを目的とするため、花粉が飛び始める1~2週間前から使用されることがあります。ただし、この方法で即効性がみられた報告はないため、使用時期は目安と考えるといいでしょう。

Th2サイトカイン阻害薬で起こりうる副作用は?

Th2サイトカイン阻害薬の主な副作用には、吐き気や胃痛などの消化器症状がみられる場合があります。またまれに、頭痛や眠気、発疹やかゆみなどが表れることもあります。このような症状がみられたら、医師や薬剤師へ相談しましょう。

おわりに:Th2サイトカイン阻害薬の使用時期は目安と考えよう

Th2サイトカイン阻害薬は、アレルギー反応に伴う鼻水や鼻づまりなどに効果があるといわれています。また花粉症の場合には花粉が飛び始める1~2週間前から使用することもあります。ただし、この期間はあくまで目安と考えるといいでしょう。

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