テトラサイクリン系の抗生物質、その特徴や働きは?

2019/6/7

感染症などで病院に行くと、治療のために抗生物質を処方されるケースも多いです。抗生物質にはいくつかの種類があり、その一つに「テトラサイクリン系抗生物質」があります。今回はこのテトラサイクリン抗生物質の特徴、作用、副作用などをご紹介します。

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テトラサイクリン系抗生物質とは

テトラサイクリン系抗生物質は、細菌のリボソームの30Sサブユニットに特異的に結合することで、タンパク質の合成を阻害する静菌的作用を示す薬です。少し専門的な内容になってしまいますが、テトラサイクリン系抗生物質について理解できるよう以下で説明します。

リボソームとは

細菌が増殖や生命維持するには、細胞内にある「リボソーム」でタンパク質を合成する必要があります。そして、細菌のリボソームには小サブユニット(30S)と大サブユニット(50S)の2種類があります。テトラサイクリン系抗生物質は細菌の小サブユニットに結合し、タンパク質を合成できないようにすることで細菌の増殖を抑える働きがあるのです。

静菌的作用とは

先ほど「テトラサイクリン系抗生物質は静菌的作用を示す薬」と紹介しましたが、この静菌的とは細菌の増殖を抑える働きがあるという意味です。しかし、細菌の増殖を抑えるだけで、細菌自体を減らす働きはありません。一方、細菌を減らす働きがある場合は「殺菌的作用を示す」などと言われ、β-ラクタム系やニューキノロン系などがこの作用を持っています。

テトラサイクリン系抗生物質の働きは?

前項で説明したとおり、テトラサイクリン系抗生物質の主な働きは、細菌のリボソーム30Sと結合して、細菌の増殖を抑えることです。ただ、一口に「細菌の増殖を抑える」と言っても、実際にはさまざまな病気の治療にテトラサイクリン系抗生物質は使用されています。

例えば、「ビブラマイシン®︎」というテトラサイクリン系抗生物質があるのですが、こちらは、咽頭炎、喉頭炎、中耳炎、急性気管支炎、角膜炎、麦粒腫、乳腺炎、腎盂腎炎、膀胱炎、尿道炎、淋菌感染症などの治療に用いられます。また、薬によってはマラリア、ブルセラ症、ライム病、ピロリ菌感染症などの治療に使用されるものもあります。

主なテトラサイクリン系抗生物質の治療薬は?

テトラサイクリン系抗生物質は作用の持続時間に応じて、短時間作用型、中等度作用型、長時間作用型に分類できます。そして、それぞれの薬には以下のようなものがあります。

短時間作用型
アクロマイシン®︎V
中等度作用型
レダマイシン®︎
長時間作用型
ビブラマイシン®︎、ミノマイシン®︎

抗生物質の場合、この作用時間の違いは服用回数にも影響します。たとえば、アクロマイシン®︎Vは1日に4回の服用が必要ですが、ビブラマイシン®︎やミノマイシン®︎は1日に1~2回の服用で済みます。もちろん病状、重症度、年齢、体重などによって薬の使用量は異なりますが、一般的には長時間作用型の方が服用回数は少ないと言えます。

テトラサイクリン系抗生物質の副作用は?

テトラサイクリン系抗生物質の主な副作用には、吐き気、おう吐、食欲不振、下痢といった消化器症状があります。また、発疹、じんま疹、発熱、頭痛、光線過敏症などもあります。もしこれらの副作用に心当たりがあれば、早めに医師や薬剤師に相談しましょう。

また、テトラサイクリン系抗生物質の特徴的な副作用として歯牙の着色、エナメル質形成不全、一過性の骨発育不全が知られています。そのため、治療上必要がある場合を除いて、基本的には8歳未満の子どもにテトラサイクリン系抗生物質を使わないようにしています。

テトラサイクリン系抗生物質を牛乳では飲まない!

多くの薬には相互作用(薬の作用を減弱または増強すること)があり、テトラサイクリン系抗生物質の場合は牛乳との相性が良くありません。牛乳で飲んだ場合、薬の有効成分と牛乳のカルシウムが結合し、薬の吸収や作用が低下してしまいます。

また、テトラサイクリン系抗生物質をお水なしで服用すると、食道につかえてびらん性の食道炎を起こすリスクもあります。服用に伴うリスクを回避しつつ、薬の効果を十分に得るためにも、テトラサイクリン系抗生物質はお水や白湯で飲むようにしてください。

おわりに:テトラサイクリン系抗生物質の薬の形状はさまざまです!

実際に目にするテトラサイクリン系抗生物質はカプセル剤、錠剤、散剤(粉薬)といった形状をしています。いずれのタイプも基本的な特徴や作用は本記事で紹介したとおりですが、薬によって飲み方や副作用は異なります。そのため、薬の使用にあたって不明点や疑問点があれば、医師や薬剤師などに確認しましょう。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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