子供のおたふく風邪の特徴って?予防接種は重症化予防に役立つ?

2019/5/8

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

子供のおたふく風邪は、冬から初夏にかけて数年に一度大流行することがある感染症です。現在日本では予防接種は任意となっていますが、ムンプス難聴や脳炎などの重症な合併症を防ぐために予防接種を受けることが大切です。今回は、子供のおたふく風邪の特徴や後遺症・合併症などをお伝えします。

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おたふく風邪の特徴

おたふく風邪は、正しくは「流行性耳下腺炎」ともいい、ムンプスウイルスによって耳の下が腫れるウイルス感染症です。両方の耳の下または片方の耳の下が腫れて痛みが出る疾患で、程度には個人差がありますがおたふくのように腫れあがった顔になります。

年中を通して感染する病気ですが、冬から初夏にかけて流行し、通常は3~6歳に多く起こります。
このウイルスに感染すると、1歳児では症状が出るのは20%程度ですが4歳以降では90%程度症状が出るとされています。

感染経路は、おたふく風邪にかかっている子供からの飛沫感染や接触感染です。

子供のおたふく風邪の症状

子供のおたふく風邪は、2~3週間の潜伏期間ののちに発症し、38度程度の熱と耳の下の「耳下腺」の腫れが特徴で、口をあけたり食べ物を飲み込んだりするときに強く痛みます。

ほとんどの場合は両方の耳の下が腫れますが、片側だけ腫れることもあり、1~2週間ほどで症状は改善していく場合がほとんどです。
一度おたふく風邪にかかると免疫ができるため、通常は複数回かかることはまれとされています。

おたふく風邪の治療は熱を下げたり耳の下の痛みを和らげたりするための「対症療法」が基本です。解熱鎮痛剤などを使用して安静に過ごすことが大切です。

おたふく風邪に起こる合併症

子供のおたふく風邪は、約50人に1人の割合で無菌性髄膜炎が起こります。この無菌性髄膜炎になると激しい頭痛と吐き気が起こることもありますので入院による治療が必要になります。

また膵炎や脳炎、難聴にも子供のおたふく風邪の合併症です。みぞおちからへその上あたりに激しい痛みを特徴とする膵炎は、病後の経過はよく治療により回復へと向かいますが、脳炎は後遺症に注意しなくてはなりません。

気をつけておきたい後遺症

子供のおたふく風邪は重症化すると難聴や脳炎を引き起こす可能性があり、特に注意が必要です。

ムンプス難聴

おたふく風邪で起こる難聴は「ムンプス難聴」と呼ばれます。
ムンプスウイルスが耳の内耳という部分に入り込むと、内耳の機能が障害され、音を感じ取れなくなってしまいます。すると高度の難聴となり、ムンプス難聴発症後の症状改善は望めません。

大部分は片耳に発症しますが、まれに両耳に起こります。また、おたふく風邪によって起こる脳炎にも気を付けておかなければなりません。

子供のムンプス難聴は、痛みもなく無自覚であることも多く小学校での健康診断で発覚することが多いです。日常生活で呼びかけに反応がない場合など心当たりがある場合は、耳鼻科を受診し検査を受けましょう。

脳炎

おたふく風邪で起こる膵炎や脳炎はまれですが、乳幼児の脳炎は重症化しやすく死に至る可能性のある病気です。
ムンプスウイルスが血液によって脳に運ばれると、脳自体に炎症が起こり、痙攣やしびれなどの症状が現れます。脳炎はおたふく風邪の予防接種で重症化を防ぐことができますので、感染前に受けておくことをおすすめします。

重症化を防ぐために予防接種の推奨

おたふく風邪による難聴や脳炎を予防するためには、ワクチンの定期接種が有効です。
現在日本では任意接種となっていますが、免疫を確実に獲得するために2回予防接種を受けることをおすすめします。
1歳を過ぎたら1回目の予防接種を行い、3~4年あけて2回目を接種するようにしましょう。

おたふく風邪は軽度で回復することも多いですが、数年に一度大流行するためこれまでおたふく風邪になったことがない子供で、予防接種を受けていない場合は予防接種を受けておくことで重症化を防ぐことができます。

おわりに:おたふく風邪による合併症を防ぐためにも予防を!

子供のおたふく風邪は、冬から初夏にかけて数年に一度大流行することがある感染症です。現在日本では予防接種は任意となっていますがムンプス難聴や脳炎などの重症な合併症を防ぐためにも、まだ感染していない子供は予防接種を受けておくことをおすすめします。
おたふく風邪は見た目にも特徴がある感染症ですので、子供の様子がおかしいと感じる場合は早めに医療機関を受診しましょう。

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