SERM(選択的エストロゲン受容体調節薬)ってどんな薬?

2019/5/15

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

閉経後、女性の体ではエストロゲンなど女性ホルモンの分泌量が急激に下がり、更年期障害や骨粗鬆症を誘発しやすくなります。
この記事では、閉経後のホルモンバランスの変化による骨粗鬆症治療に用いられるSERM(選択的エストロゲン受容体調整薬)について解説します。

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SERM(選択的エストロゲン受容体調節薬)とは

骨は、定期的な破壊・修復を繰り返すことで密度や強度を保っていますが、骨の修復や骨量の増加には、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンが関わっています

このため、閉経後にエストロゲンの分泌量が急激に低下すると、ホルモンバランスが乱れて骨の破壊に対して修復が追い付かなくなり、骨量が少なくなってしまうことがあります。その結果、骨がもろく弱った状態になって骨粗鬆症になってしまうのです。

SERM(選択的エストロゲン受容体調整薬)は、骨の代謝に影響を及ぼすエストロゲンのバランスを調整し、骨量を増加させ骨粗鬆症を改善する薬剤です。体のうち、骨のエストロゲン受容体にだけ作用してホルモンバランスを調整することで、骨量を増やし骨を作用を持っています。

SERMの種類は?

代表的なSERM(選択的エストロゲン受容体調整薬)は、以下の2種類です。どちらの薬剤を使用するかは、医師が患者の状態を総合的に判断して決定します。

ラロキシフェン製剤(商品名:エビスタ®︎)
女性の閉経に伴う骨粗鬆症治療の第一選択薬となっている薬
ただし、発汗やのぼせといった他の更年期症状が強く出ている場合、症状を悪化させる恐れがあるため使わない方が良いとされる
バゼドキシフェン製剤(商品名:ビビアント®︎)
ラロキシフェン製剤とならび、閉経後の女性の骨粗鬆症治療に使われている薬
こちらも、更年期症状を悪化させる恐れがあるため、のぼせや発汗の症状が出ている人への処方には不向き
ただし、背骨以外の手足などへの骨折予防効果はラロキシフェン製剤よりも高いとされる

SERMで起こりうる副作用や、服用時の注意点は?

SERM(選択的エストロゲン受容体調整薬)を服用すると、以下のような副作用が現れることがあります。

比較的発症頻度が高い副作用
  • 発疹、赤み、かゆみなどの皮膚症状
  • 乳房が張る、痛みを感じるなどの乳腺症
  • ほてり
比較的発症頻度がまれな副作用
  • 下肢の疼痛、むくみ、息切れ、突然の呼吸困難、胸痛
  • 長引く倦怠感、食欲不振、黄疸、発熱、吐き気、かゆみ

上記のうち、発症頻度が高い軽度の副作用の場合はしばらく様子をみても構いません。ただし、あまりにも長期にわたって続く場合や、発症頻度がまれな副作用が現れた場合は注意が必要です。命にかかわる重大な事態につながる可能性もあるので、重篤な副作用症状がみられたら、すぐに医師や薬剤師に相談してください。

おわりに:SERM(選択的エストロゲン受容体調整薬)は、ホルモンバランスの調整から骨粗鬆症を治療する薬です

SERM(選択的エストロゲン受容体調整薬)は骨のエストロゲン受容体にのみ作用し、ホルモンバランスと骨を修復するサイクルを整えて骨粗鬆症を改善してくれる薬です。代表的な女性ホルモンの一種であるエストロゲンは、骨の破壊・修復のサイクルに深く関わっています。このため、閉経してエストロゲンの分泌量が急激に減った女性は、ホルモンバランスの影響を受けて骨量が減り、骨粗鬆症を発症するリスクが高くなります。服用時には乳腺疾患やほてりといった副作用がみられれます。しばらく様子をみてもこうした副作用が落ち着く気配がない場合は、念のためかかりつけの医師・薬剤師に相談しましょう。

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