免疫グロブリン製剤の特徴は?どんな種類があるの?

2019/6/28

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

私たちの体には、免疫という体外から入ってくる細菌やウイルスなどの異物を排除する役割が備わっています。しかし、この免疫機能に生まれつき何らかの異常があって、体外から細菌やウイルスが入ってきても上手く追い出すことができず、感染症にかかりやすくなる人がいます。
とくに「グロブリン」という物質が足りない人に使われるのが「免疫グロブリン製剤」です。今回は、免疫グロブリン製剤の働きや副作用について説明します。

免疫グロブリン製剤とは

免疫グロブリンとは、血液や体液の中にあって抗体として働くタンパク質の総称で、IgG・IgA・IgM・IgD・IgEの5つのクラスに分かれています。血中に最も多く存在し、体内の全グロブリンの80%を占めるのは「IgG」で、体内に侵入してきた病原体やウイルスに結合して白血球の働きを助けるとともに、ウイルスや細菌が出す毒素と結合して無毒化する作用があります。

外部に最も触れやすい「粘膜」に多く存在しているのが「IgA」で、特定のウイルスや細菌だけでなく、幅広い病原体に反応して侵入を防ぎます。そのため、体内のIgAの量が少なくなると感染症にかかりやすくなったり、疲労感が強くなったりすることがわかっています。母乳に多く含まれるのもIgAで、乳幼児を感染から守る働きがあると考えられています。

また、花粉症などのアレルギー反応を引き起こすのは「IgE」です。一般的に体内に存在する免疫グロブリンとしては最も量が少ないとされていますが、もともとこの抗体は主に寄生虫に対して働く作用を持っており、衛生状態が良くなって寄生虫がほとんど存在しなくなった結果、花粉症などのアレルギー反応を引き起こしているのではないかと言われています。

これらのグロブリンが体内で十分に作られない状態を「低ガンマグロブリン血症」、グロブリンが全く作られない状態を「無ガンマグロブリン血症」と呼んでいます。グロブリンが体内で少ない、あるいは無い場合、胎盤や母乳を通じてお母さんからもらったグロブリンが少なくなってくると、感染症にかかりやすくなります。具体的には、胎盤を通じて貰った抗体が少なくなる生後6カ月ごろからとされています。

そこで、グロブリンの少ない人には定期的に免疫グロブリン製剤を投与し、外部から免疫グロブリンを補充します。投与される免疫グロブリンは血液中の成分であり、日本国内の健康な献血者の血液から分離・精製されて製品化されています。

免疫グロブリン製剤はどんな人に使われるの?

上記でご紹介した「無・低ガンマグロブリン血症」のほか、以下のような疾患の患者さんに対して使われます。

感染症
重症感染症
ウイルス感染症
自己免疫疾患
特発性血小板減少性紫斑病
川崎病
ギラン・バレー症候群

細菌感染で感染症を引き起こした場合、通常は抗生物質の投与だけで治療を行います。しかし、白血病やがんで治療を受けている場合、または大きな手術を受けた直後などの場合には、免疫力が通常よりも大きく低下しています。すると、健康な状態では、免疫の働きによってそれほど重くならない感染でも重症化しやすくなります。

こうした場合、抗生物質と一緒に免疫グロブリン製剤を投与します。実際、臨床試験によっても抗生物質と免疫グロブリン製剤を併用した方が治療の効果が高いことがわかっています。また、ウイルス感染も多くは抗生剤による治療が行われますが、麻疹(はしか)やA型肝炎などの予防・治療には免疫グロブリン製剤が使われます。

さらに、免疫グロブリン製剤は自己免疫疾患という免疫機能が正常に働かない、または自分自身の免疫によって細胞や体内の必要な成分を破壊してしまう疾患にも使われます。特に、「特発性血小板減少性紫斑病」や「ギラン・バレー症候群」は、自己抗体という自分の細胞や血小板を破壊してしまうタンパク質が発生する疾患です。

川崎病の原因はまだはっきりとはわかっていませんが、免疫グロブリン製剤を大量投与することで早く解熱できること、冠動脈の障害が著しく減少することがわかっているため、現在では川崎病の治療にはほとんどの場合で免疫グロブリン製剤が使われています。

免疫グロブリン製剤にはどんな種類があるの?

免疫グロブリン製剤は、効き方で大きく2つに分けられます。抗体の種類がたくさん入っていて、幅広い病原体をカバーする「免疫グロブリン製剤」と、特定の病原体や異物に対する抗体を多く含む「特殊免疫グロブリン製剤」です。さらに、前者の「免疫グロブリン製剤」は、さらに「筋注(=筋肉に注射する)」「静注(=静脈に注射する)」「皮下注(=皮下組織に注射する)」の3種類に分けられます。4つの製剤について、それぞれ見ていきましょう。

免疫グロブリン製剤:筋注用

筋注用の免疫グロブリン製剤は、アルブミン製剤と同様、血液から分離して作る製剤の中では最も古くから使われている部類の製剤です。エタノールを使って取り出した免疫グロブリン(IgG)をほぼそのまま使用して製剤にします。無・低ガンマグロブリン血症の治療のほか、麻疹・A型肝炎・ポリオなどの予防や症状の軽減に使われます。

しかし、筋肉注射という性質上、注射した部位に疼痛が起こるため大量に投与できないこと、さらに速効性に欠けることなどさまざまな制約がかかってしまいます。そのため、現在では麻疹やA型肝炎の予防に限って使われています。

免疫グロブリン製剤:静注用

静注用の免疫グロブリン製剤は、現在最も多く使われている免疫グロブリン製剤です。筋注用の製剤でよく見られた「凝集体」という、静注すると免疫を異常に活性化してしまう(※筋注ではほとんど問題はない)ものをほとんど含まない、あるいは凝集体による異常活性化を抑えるような加工をしている、などの処理によって静脈に注射できるようにしてあります。

静脈に直接注射することから速効性が期待できること、筋肉よりも痛みが少なく大量投与が可能なことなどから、「無・低ガンマグロブリン血症」「重症感染症」「特発性血小板減少性紫斑病」「川崎病」「天疱瘡」「ギラン・バレー症候群」など、多岐に渡って使われています。500mg製剤(10mL)~10,000mg製剤(200mL)までさまざまな量が販売されていることもあり、非常に使いやすい製剤です。

免疫グロブリン製剤:皮下注用

皮下注用の免疫グロブリン製剤は、無・低ガンマグロブリン血症の患者さんに対してのみ使われます。比較的新しい製剤で、皮下に注射することで徐々に成分が吸収されることから、安定して長時間血中グロブリン値を維持できます。そのため、急激に血中タンパク質濃度が上昇することなく、これによって引き起こされる全身性の副作用が少なくなると期待されています。

シリンジポンプなどの注入器具を使うことで、在宅で自己注射できることも画期的な免疫グロブリン製剤です。

特殊免疫グロブリン製剤

特定の抗体を多く含むことから、特定の病原体または異物に関して効果を発揮する免疫グロブリン製剤です。医療用に使われているのは以下の3種類です。

抗HBsヒト免疫グロブリン製剤
B型肝炎の発症予防、母子感染の予防
抗破傷風ヒト免疫グロブリン製剤
破傷風の発症予防・治療
抗Dヒト免疫グロブリン製剤
Rh血液型不適合妊娠による新生児溶血性黄疸の予防

抗HBs、抗破傷風はそれぞれ該当の病原体に対して効果を発揮する免疫グロブリン製剤です。「抗D」とは、Rh血液型不適合妊娠という、血液型が「RH−(マイナス)」のお母さんが「Rh+(プラス)」の赤ちゃんを妊娠することで発生する抗体です。

赤ちゃんのRh+の赤血球がお母さんの血液に入ると、お母さんの体の中で赤ちゃんの赤血球は異物と認識されてしまい、「抗D抗体」という赤ちゃんの赤血球を攻撃する抗体が作られてしまいます。抗D抗体はその妊娠の時には赤ちゃんを攻撃しませんが、次回以降に同じようにRh血液型不適合妊娠をすると、赤ちゃんの赤血球がお母さんの体内の抗D抗体によって破壊されてしまい、赤ちゃんが貧血や生まれた後に黄疸を引き起こすことがあります。

一般的に、血液型はRh+の人が圧倒的に多く、Rh-の人は少ないため、Rh-のお母さんは2回目の妊娠もRh+の赤ちゃんを妊娠する確率が非常に高いです。そのため、Rh血液型不適合妊娠が発覚したら、妊娠中や出産後に時期を見計らって「抗D抗体ヒト免疫グロブリン製剤」を注射することが推奨されています。

免疫グロブリン製剤で起こり得る副作用は?

免疫グロブリン製剤は、人の血液から抽出したものです。そのため、どうしても一部の人ではアレルギー反応を起こす場合があります。「のどが腫れる、胸や息が苦しい」「脈が速くなる」などの症状が起こった場合、アナフィラキシーショックの可能性があります。その他の副作用としては、以下のようなものが考えられます。

肝機能・腎機能の障害
疲れやすい、食欲がない
皮膚や眼球が黄色になる(黄疸)
尿量が減る、急性腎不全
無菌性髄膜炎
発熱、頭痛、嘔吐など
血液に関する障害
血小板や白血球(好中球・好酸球)の減少
血栓塞栓症
心疾患
心不全の発症や悪化
その他
発熱、発疹、頭痛、吐き気、痒み、貧血など

無菌性髄膜炎とは、髄膜炎のうち細菌や真菌などが原因ではないもののことで、ほとんどがウイルス性と考えられていますが、稀に医薬品による刺激で発症することもあります。発熱や頭痛・嘔吐の他、うなじが硬くなって首が前に曲げにくくなる、意識が薄れるなどの症状が見られることがあります。

その他、重篤な副作用としては心疾患や肝機能・腎機能障害などが挙げられます。特に、皮膚や眼球が黄色みを帯びる「黄疸」という症状が現れた場合はすぐに医師に相談しましょう。

おわりに:免疫グロブリン製剤は免疫機能の補充や強化に使われる

免疫グロブリン製剤は、生まれつき免疫が少ない人や免疫機能に何らかの異常がある人の他、川崎病や重篤な感染症の治療にも使われます。特定の異物に対する製剤以外では、筋注・静注・皮下注の3種類があり、現在は静注が最も多く使われています。

免疫グロブリン製剤は輸血された血液から分離して作るため、人によってはアレルギー反応が出ることもありますので、普段と違う症状が現れた場合はすぐに医師に相談しましょう。

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