記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/7/10
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
眠気はあるのになかなか眠れないのはつらいものです。このような状態に陥ってしまう原因として、どのようなことが考えられるでしょうか。また、どうすれば眠れるようになるのでしょうか。
眠たいのに眠れないというのは、精神的にも肉体的にもつらいものです。このような症状に陥る原因として、身体的な原因、精神・心理的な原因、薬剤的な要因が考えられます。
身体的な要因とは、体のどこかに不快な症状があり、それが眠りを妨げているパターンです。たとえば、風邪や喘息などで咳が続く、皮膚のかゆみで目を覚ましてしまう、あるいは寝入ることができない、という経験をした方も多いと思います。
ほかにも、頻尿で何度もトイレに起きなければならないことや、肩や腰の痛み、更年期の症状なども原因になることがあります。また、「むずむず脚症候群」と呼ばれる、下半身に虫が這うような不快感を覚える病気も不眠の原因のひとつです。
精神的な問題は、睡眠に大きな影響を与えます。睡眠には、交感神経と副交感神経という自律神経のバランスがとても大切です。しかし、仕事や勉強、環境の変化によるストレスや、昼夜逆転の生活サイクルなどによって自律神経のバランスが乱れます。その結果、本来ならば夜に働くはずの副交感神経の働きが抑えられ、交感神経が働いてしまい、脳が興奮して眠れなくなります。
また、うつ病をはじめとする精神疾患をもつ方も睡眠障害になることが多いと言われています。不安や落ち込みを感じてしまい、スムーズに入眠できなかったり、途中で目が覚めてしまったりするのです。
心理的な要因は、精神的な要因と似ていますが、どちらかというと感情の問題がメインになります。何かプレッシャーを感じる出来事が控えていると、不安や緊張で眠れなくなる、眠れないということが心理的なプレッシャーになってさらに眠れなくなってしまう、といったことが挙げられます。
ステロイド剤や、アルコールやタバコなどの副作用が、不眠をもたらすことがあります。
気持ちよく眠るためには、まずは心身をリラックスさせることが大切です。寝る前の時間にはなるべく考え事をしないように気持ちを切り替え、緊張をゆるめましょう。
次に、体内リズムを整えることも大切です。日中は太陽の光を浴び、夜は照明を落として自然と同じ環境にします。また、トリプトファンやビタミンB6といった成分を朝食でとると、夜の睡眠が快適になるという効果もあります。大豆製品や乳製品、魚類やレバーをとるようにしましょう。
また、寝室や寝具、パジャマなど、リラックスしやすい状況を整える工夫も必要です。寝る前にいつも決まった行動をとる「入眠儀式」と呼ばれるローテーションを取り入れてみるのもよいでしょう。
不眠症は、一時的な不眠ではなく長期間続く不眠で、睡眠障害のひとつです。「眠れないことに苦痛を感じている」「日中の行動などに支障をきたす」ことがサインで、たとえ睡眠時間自体が一般の人より短かったとしても、本人が苦痛を感じていない、行動に支障がない等の場合は不眠症と診断されません。
不眠症の主な症状は、以下の3つです。
どの症状でも、眠れないことを気にしすぎることが症状を悪化させることがあります。眠れないことをプレッシャーに感じすぎないようにしましょう。
不眠症を改善するためにはいくつか対策があります。その中で最も知られているのが、睡眠薬による治療です。基本的に、医師の診察を受けて処方を受け、適切な量を服用します。
ただ、睡眠薬は使い続けると徐々に効果が薄くなって服用量が増えてしまうデメリットがあるため、薬物を使わない治療法も並行して行っていく必要があります。
不眠症の3つのタイプごとに、治療法を紹介します。
寝つきが悪いときに無理に寝床に入らず、本当に眠るときだけ寝床に入るようにする「睡眠スケジュール法」があります。こうすることで、寝床を「眠る場所」として印象付け、寝床にいる時間=実際の睡眠時間へと近づけていくのです。また、「筋弛緩法」と呼ばれる方法もあります。無意識のうちに体に入っている力を、15分程度の簡単な運動で緩めていきます。夜になると色々なことを考えてしまいがちな方におすすめです。
夜中に目覚めてしまったとき、時間を確認して焦らせないため、時計を見えないようにするという方法があります。途中で目覚めてしまったという焦りを捨て、「そういうものだ」と割り切ってしまうことも大切です。また、先にご紹介した「筋弛緩法」も有効です。
早朝に目覚めてしまうため、睡眠時間が短く夕方頃に眠くなってしまうことが多くなります。しかし、夕方に眠ってしまうと夜に眠れなくなるため、夜に寝るサイクルを守るようにしましょう。
そのほか、気持ちよく眠るためのリズムづくりのため、就寝の約1時間前に38~40℃のぬるめのお風呂に入ったり、寝る前にスマホやパソコンなどのブルーライトを避けたりすることも大切です。眠る前のお酒を避け、音楽やアロマなどで心身をリラックスさせてください。
不眠症に陥る原因として、身体的な原因、精神・心理的な原因、薬剤的な要因などが考えられます。睡眠薬を使った治療や心身のリラックスを促すアプローチはもちろんのこと、眠れないことによる焦りや、途中で目が覚めてしまったことへの不安感などを和らげるための対策も有効です。