記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/8/29
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
私たちの体を守るために、欠かせない血中の細胞の1つに「血小板」があります。血小板はどのような働きをし、体を守っているのでしょうか。今回は血小板の働きやその仕組みを、血小板が極端に少なくなってしまった場合に起こる症状とあわせて、理解していきましょう。
私たちの体内、血管の中を流れている血液は赤血球、白血球、血小板の3つの血球と呼ばれる細胞成分と、血しょうという液体部分から構成されています。このうち、血小板は1マイクロリットルの血中に15~40万個ほど存在する、1つあたり2~4マイクロメートルくらいの大きさの血球(けっきゅう)です。
白血球や赤血球と同じく骨髄のなかで作られ、最終的には作られてから10日ほどで、脾臓・肝臓・リンパ組織のいずれかで壊れて分解されるサイクルになっています。主に傷口で血液を凝固させて止血し、過度の失血を防ぐ役割を担っています。非常に小さいですが、血小板は人体の生命を維持するのに不可欠な細胞なのです。
血管の損傷を感知すると、血中の血小板が傷口に集まって粘着し、凝集塊(ぎょうしゅうかい)と呼ばれる血栓となって「一次止血」を行います。次に、血液の液体部分である血しょうのなかに存在している血液凝固因子を活性化させ、血栓を簡単には溶けない性質のものに変化させます。これが「二次止血」です。
二次止血でできた丈夫で安定した血栓は、フィブリノゲンと言う血液凝固因子の働きで完成します。このため、最終的に出来上がる丈夫な血栓のことを「フィブリノゲン血栓」と呼びます。
このように、血小板の作用によって一次止血・二次止血の両方が起こって初めて、完全な止血が完了するのです。
血小板が少なくなると、血管が損傷してもすぐに止血ができなくなります。すると血が止まりにくくなり、大小問わず血管の損傷を修復して止血できず、以下のような症状が現れます。
上記のうち特に3番目(内臓からの大量出血)まで進行すると、血小板の減少が原因で死に至る可能性すら出てきます。血小板減少は、命にかかわる重大な事態なのです。
血小板の減少は、血小板の表面に何らかの理由によって、本来なら必要のない自己抗体・抗血小板抗体ができてしまうことが原因で起こると考えられています。抗血小板抗体が発生した血小板は脾臓などに取り込まれ、マクロファージという細胞に食べられて分解され、処分されてしまうのです。
また、一説には骨髄での血小板産出を低下させる作用があるとも言われています。他の細胞から異物と認識されて食べられ、さらに正常な血小板の産出も減少させてしまうことで、結果的に血小板の減少を招いてしまうのです。
なお、なぜ抗血小板抗体ができるのかの理由ははっきりとはわかっていません。また、薬の影響によって血小板減少が起こるケースも報告されています。
血小板減少の症状が現れる病気として、以下のようなものが挙げられます。
特にITPは、国の難病指定を受けている非常に発症件数が少ない難病です。何が原因で血が止まりにくくなっているかは詳しい検査をしてみないとわからないので、心配な症状があるときは、病院で検査を受けましょう。
血液を構成する血球と呼ばれる成分の1つである血小板には、血管が損傷して出血したときに粘着・凝固し、血を止める働きがあります。このため体内の血小板量が少なくなると、血が止まりにくくなって打ち身や発疹が増えたり、鼻血や歯茎からの頻繁な出血、内臓の大量出血の症状が現れることも。血小板が不足すると、失血による死亡やショック状態を招きかねない深刻な状態に陥ります。気になる症状がある場合は、早めに医師に診てもらいましょう。