記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/8/13
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
成長ホルモンと聞くと、子供の成長にのみ必要なホルモンのような印象を受けるかもしれませんが、実は大人にとっても欠かせないホルモンでもあります。この記事では、成長ホルモンの働きを紹介したあと、成長ホルモンの分泌が低下すると体にどのような影響が及ぶのかを紹介します。
ヒトのからだには、100種類以上のホルモンが働いているといわれています。ホルモンは体のさまざまな機能をコントロールしている化学物質で、内分泌腺と呼ばれる器官から分泌されています。
ヒトのホルモンのひとつである「成長ホルモン」は、その名称からもイメージされるように、骨や筋肉の発達をうながして身長を伸ばし、成長させていくホルモンです。成長ホルモンは、タンパク質のもととなるアミノ酸からつくられています。子どもにとっては非常に大切なホルモンですが、実は大人になってからも分泌されています。成長ホルモンは、からだのさまざまな臓器で行われる代謝を助ける大切な役割を担っています。
成長ホルモンは、子どもの時期は背を伸ばす作用があり、大人になってからは、筋肉や骨、皮膚を強くする作用があります。ただ強くするというだけではなく、骨の形成や、タンパク質の合成、脂肪の分解など、からだの中のさまざまな代謝(体内にある物質を、別の物質に変更してエネルギーをつくったり、必要な物質に変えたり、害のある物質や古くなった物質を排泄しやすい形に変えたりすること)を調節しています。
たとえば、成長ホルモンは脂肪分解を促進するだけではありません。脂肪が分解が促進されて脂肪が減りすぎると、成長ホルモンが脳の細胞にはたらきかけて成長ホルモンの分泌を抑えます。成長ホルモンは代謝を促進するだけではなく、からだに必要な成分の量を調節しているのです。また、成長ホルモンの作用は、すい臓から分泌されるインスリンと影響し合うことで、体内の血糖値の調節にも関わっています。
何らかの原因で成長ホルモンの分泌に異常が起こると、以下のような疾患や症状が起こる可能性があります。
成長ホルモンは脂肪を分解したり、肝臓でつくられたコレステロールを肝臓や筋肉などの組織に取り込むことを促したりすることで、血液中のコレステロール量を下げる働きをしています。血液中のコレステロールの増加は、血管の柔軟性を失わせたり、血流を滞らせたりする動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や狭心症のリスクを高めます。
インスリンは、すい臓から分泌され、血糖値を下げる働きをするホルモンです。成長ホルモンとインスリンは互いに影響しあいながら血糖値をコントロールしています。成長ホルモンの分泌がなくなるとインスリンの作用のバランスが崩れ、糖尿病のリスクが高まります。
成長ホルモンは骨の形成に関わっています。骨がもろくなり、骨折や骨粗鬆症になりやすくなります。
成長ホルモンは、筋肉量を増やし強くする働きがあります。成長ホルモンがなくなると筋肉量が少なくなり、筋力低下につながります。
筋肉量の減少や、内臓脂肪の蓄積などが重なり、肥満になりやすくなります。
汗腺は、皮膚にあり汗を分泌しています。汗腺に成長ホルモンが届かなくなると、汗の量が減少して肌がカサカサになります。
そのほか、気分の落ち込みや集中力の低下、倦怠感や孤独感など、精神面にも影響があらわれます。
成長ホルモンは、基本的には子どもから大人まで分泌されているホルモンですが、基本的には加齢とともに、だんだんと減少していきます。また、成長ホルモンを分泌している下垂体や、下垂体に影響を与えるような頭部の病気やケガ、手術や放射線治療などによって、成長ホルモンが出なくなる可能性があります。原因がはっきりせず、分泌が少ないこともあります。
成長ホルモンは、骨格や筋肉をつくるとともに、さまざまな代謝を促して、体の機能を整える大切なホルモンです。成長ホルモンの分泌がなくなると、肥満や糖尿病、動脈硬化といった生活習慣病のリスクが高まるだけではなく、精神的なトラブルを引き起こすこともあります。子供のときだけではなく、ずっと分泌されていくホルモンですが、加齢とともに徐々に減少していきます。また、病気やケガなどで分泌されなくなることもあります。