透析を受けている方に欠かせない「ドライウェイト」とは?

2019/9/4

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

透析とはいわゆる人工透析のことで、腎臓の機能が十分でなく、血中や体液中の不要物を排出できない疾患を抱えた人が、体内の老廃物を人工的にフィルターでろ過し、排出できるようにした治療法です。

透析を受けている人は、食事など日常生活でさまざまな基準を意識しながら暮らす必要がありますが、その1つが「ドライウェイト」です。ドライウェイトとはどんな基準で、維持するためにはどんなことに気をつければ良いのでしょうか?

ドライウェイトとは

ドライウェイトとは、「ドライ」という言葉が示すとおり、「体に余分な水分がない状態での目標体重」のことです。人工透析を行っている患者さんに対して使われる指標で、透析後にこの目標体重を達成している必要があります。体に余分な水分がない状態かどうかは、以下のような基準で判断します。

  • 顔や手足にむくみがない
  • 心臓が大きくなっていない
  • 血圧がほぼ正常の状態である
  • 体調が良いと感じられている

毎回、透析終了後にはこの基準の状態になっていることに加え、ドライウェイトである「目標体重」も達成しているのが望ましいです。ドライウェイトは「血圧」「毎月の心胸比」「心エコー所見」「透析後の全体的な状態」などをもとに決定しますが、食欲や体調によって多少太ったり痩せたりすることもありますので、定期的に見直していかなくてはなりません。

ドライウェイトはどうやって調べるの?

前述で、ドライウェイトを決定する際には「心胸比」という値を参考にするとご紹介しました。これは、胸郭という肺の端から端までの幅に対し、心臓の幅がそのうちどのくらいを占めているかを%(パーセント)表示で表したものです。つまり、(心臓の幅)÷(胸郭)×100=心胸比ということになります。

心胸比には個人差もありますが、だいたい男性で50%以下、女性で55%以下が基準となっていて、心胸比が基準以上の値になる場合、余分な水分が溜まっていると考えられます。そのほか、以下の基準を参考にドライウェイトを決定します。

  • むくみがあるかないか
  • 血圧を正常範囲内に保てているか
  • 心不全の症状が起こっていないか
  • 心エコーによる心機能評価が正常であるか
  • 超音波検査による下大静脈の拡張がないか
  • ヒト心房性ナトリウム利尿作用ペプチド値(HANP)が正常の範囲であるか
  • 日々のQOL(生活・生命の質)が保てるか

「ヒト心房性ナトリウム利尿作用ペプチド値(HANP)」とは、生体の体液バランスや血圧調節に影響するといわれているホルモンで、主に心臓の心房で合成されます。この値が高すぎたり低すぎたりすると心不全・腎不全や副腎不全などが疑われるため、ドライウェイトを決定するときにも考慮する必要があるのです。

また、ドライウェイト後に痩せた場合、体重の値だけがドライウェイトに到達しても筋肉や脂肪組織の比率が減り、体液量の比率が増えたことになるため、増えてしまった体液量ぶんドライウェイトを下げなくてはなりません。太った場合は逆になりますので、体循環の量を増やし、正常な血圧を保てるよう、ドライウェイトを上げる必要があります。

適切な体重管理に欠かせないポイントは?

上記のことからもわかるように、ドライウェイトはただ体重だけを下げれば良いというものではなく、血圧や正常な体循環を保つためのものです。適切なドライウェイトを維持するためには、水分とカリウムの摂取量を制限・管理することが必須です。水分とカリウムの管理について、それぞれ詳しく見ていきましょう。

適切な水分管理はどうすればいい?

腎機能が低下すると尿量が減るため、体内の水分量の増減はそのまま体重の増減につながります。たとえば、体に入る水は「食事中の水分」「飲み水」がメインですが、代謝によってできる水もあります。食事中の水分は1日3食で約1,000~1,200mL、代謝でできる水は約200~350mLとされています。

逆に、体から出ていく水は尿や便のほか、呼吸や汗などがあります。透析患者さんの場合は尿量が非常に少ないか、あるいは出ない人も多いため、必然的に出る水の量が少なくなり、体に水が溜まりやすくなります。そのため、こまめに体重の増加をチェックしながら、飲み水の量や食事から摂る水に気をつけなくてはなりません

水分量の多い食事としては、シチューやカレーなどの液状のもの、白菜などの水を多く含む野菜、くだもの、豆腐、トマトなどがあります。これらの食事はある程度注意しながら摂取するようにしましょう。また、塩分を摂取すると、その塩辛さからのどが乾き、体内に水が溜まっていても水分を摂りたくなってしまいます。

ですから、水分の制限に際しては、塩分も同時に制限することが重要です。また、老廃物(尿毒症性物質)や血糖値の上昇によってものどが乾きます。水分の過剰摂取を防ぐためには、これらの物質が発生しすぎないよう気をつけなくてはなりません。

適切なカリウム管理はどうすればいい?

尿による排出が行われにくいと、気をつけなくてはならないのがカリウム量です。カリウムが血中に溜まりすぎると、高カリウム血症を引き起こし、心停止のリスクが高まります。カリウムを多く含む食品には「納豆・乳製品・さつまいも・じゃがいも・トマト・バナナ・柿・ほうれん草・コーヒー」などがあります。これらの食品は、摂取しすぎないよう十分に気をつけましょう。

また、タンパク質を摂りすぎることはカリウムの上昇につながるほか、尿素窒素・リンの値の上昇にもつながります。逆に不足すると栄養状態が悪くなり、免疫力などの体の抵抗力が下がってしまいます。自分の体格に合わせ、適度なタンパク質を摂取することが大切です。心配な場合は、主治医に相談しましょう。

おわりに:透析を受けている人はドライウェイトとともに、水分やカリウム量の管理が必要

人工透析を受けている人は、ドライウェイトという目標体重を達成する必要があります。透析を行う人は腎機能が弱まった状態であるため、体内に水が溜まりやすく、むくみや血圧の異常な上昇がない状態の体重を「ドライウェイト」として基準にしなくてはならないのです。

また、ドライウェイトは単なる体重制限ではなく、水の溜まりすぎや血液を正常に保つためのものですから、水分制限やカリウム制限も同時に行いましょう。

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人工透析(13) ドライウェイト(2) ドライウェイトの調べ方(1) 腎機能の低下(2)