痛風がひどくなると発症する「痛風腎」ってどんな病気?

2019/8/24

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

痛風とは、「風が吹いても痛い」というほどの激痛が現れることからその名前がついた疾患で、関節がひどく痛むことでよく知られています。この痛風がひどくなると、腎臓に異常が現れる「痛風腎」という合併症を引き起こすことがあります。

痛風腎とはどんな病気で、なぜ起こるのでしょうか?また、痛風腎にならないためには、どんなことに気をつければ良いのでしょうか?

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痛風腎ってどんな病気?

痛風腎とは、痛風の原因である「尿酸の結晶」が腎臓に沈着し、「慢性尿細管間質性腎炎」を発症した状態です。痛風の症状としてよく知られたものとして、関節に沈着して激しい痛みを発するものがありますが、この結晶が腎臓に沈着すると痛風腎となり、さらに症状が進行すると慢性腎不全を引き起こすこともあります。

痛風を発症した患者さんが腎障害を合併する頻度に関してはさまざまな報告がありますが、腎機能の低下という観点からの報告によると、痛風患者さんの約14%でみられます。痛風には高い確率で高血圧症が合併することもあり、腎機能低下は徐々に進行し、慢性腎不全から人工透析に至ることが多いです。実際に、人工透析を受けている人の約1%が痛風腎によるものです。

結節性痛風と呼ばれる肉芽組織が発生するタイプの患者さんが腎機能低下や蛋白尿を発症したときや、腎機能のわりに高尿酸血症の経過の長い痛風患者さんが腎機能低下や蛋白尿を発症したとき、痛風腎を疑います。

痛風腎の原因は?

痛風腎の原因は痛風です。痛風の原因は尿酸という物質で、尿酸は誰の体内にも一定量存在しています。通常は血液などの体液中に溶けて体内を循環し、最終的に腎臓でこしとられ、尿とともに排出されますが、一部は消化管から排出されます。このように一定濃度を保っている尿酸ですが、何らかの原因で血中の尿酸濃度が上がりすぎて飽和濃度を超えると、体内に結晶として蓄積していきます。

血中に溶けきれなくなった尿酸はナトリウムと結合して「塩(えん)=尿酸塩」の結晶となり、関節の内面に沈着し始めます。痛風の発作である激しい痛みは、尿酸塩に対して免疫機能の一つである白血球が攻撃するときに起こります。尿酸塩は関節に溜まりやすいですが、徐々に他の臓器にも溜まっていきます。特に下には溜まりやすく、皮膚の下に結節ができる「結節性痛風」となることも多いです。

さらに尿酸が溜まっていくと、腎臓に溜まって痛風腎となります。そのため、高尿酸血症や痛風を発症している人は、腎機能の低下にも注意しなくてはなりません。さらに、腎臓に尿酸が固まった「結石」ができてしまうこともあり、この結石が尿管を傷つけてしまうと腹部や背中に痛みが生じたり、血尿が出ることもあります。

痛風腎でみられる症状は?

痛風腎を発症したまま放置していると、慢性尿細管間質性腎炎から慢性腎不全へと進行していきます。ただし、糸球体には病変が少なく、尿蛋白はあまり出ないのが特徴です。腎臓の中に尿酸結石が出来てしまい、尿路に詰まると血尿や痛みを生じます。腎臓の中に尿酸結石が出来てしまい、尿路に詰まると血尿や痛みを生じます。

尿細管間質性腎炎とは、尿細管や間質(糸球体と間質を取り巻く組織)の炎症が主な病態となる腎疾患の総称です。痛風腎では、さらにそれが慢性化し、間質の線維化、尿細管の萎縮、炎症細胞浸潤などといった病変を引き起こします。ただし進行のスピード自体は比較的緩やかで、ゆっくりと腎機能の低下が進行していきます。最終的には慢性腎不全を引き起こし、人工透析が必要となることもあります。

痛風腎を予防する方法はある?

痛風腎を予防するには、まず痛風・高尿酸血症にならないように生活習慣を見直しましょう。痛風を予防するには、尿酸の材料となるプリン体を摂りすぎないようにし、水分の摂取量を増やして尿量を増やし尿酸の排出を促すことが大切です。水分を多く摂取するのは腎結石の予防にも役立ちますので、積極的に水分を摂りましょう。

また、適正体重を守ることも、痛風・痛風腎の予防に役立ちます。肥満傾向の人は標準体重になるよう、適度な運動やカロリー制限などでダイエットを行いましょう。ただし、極端な食事制限や過度の運動は尿酸値を上昇させます。あくまで、無理のない「バランスの良い食生活」と「適度な運動」を心がけることが大切です。

なお、以上のように生活習慣を見直しても尿酸値が高い状態が続く場合は、尿酸値を減らす薬の使用や食事療法・運動療法の指導など、専門的な治療が必要になる場合があります。早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。

プリン体の多い食品、少ない食品

痛風・痛風腎を予防するためには、以下で紹介する「プリン体の多い食品」を控えましょう。

300mg以上のプリン体を含む(非常に多い)
鶏レバー、マイワシの干物、イサキの白子、あんこう肝の酒蒸し
200~300mgのプリン体を含む(多い)
豚レバー、牛レバー、カツオ、マイワシ、大正エビ、真アジの干物、サンマの干物

また、尿酸は肉や魚の内臓に多く含まれる傾向があります。モツや白子など、内蔵を使った食品を避けることもおすすめです。

対して、プリン体の少ない食品(50mg以下)は以下のようになっています。前述のプリン体の多い食品を食べたくなったら、以下のプリン体の少ない食品で置き換えられないか、検討してみても良いでしょう。

  • コンビーフ、魚肉ソーセージ、かまぼこ、焼きちくわ、さつま揚げ、かずのこ、すじこ
  • ウインナーソーセージ、豆腐、牛乳、チーズ、バター、鶏卵
  • とうもろこし、じゃがいも、さつまいも、米、パン、うどん、そば
  • 果物、キャベツ、トマト、にんじん、大根、白菜、海藻類

 

おわりに:腎臓の炎症「痛風腎」は徐々に進行し、慢性腎不全の原因にもなる

「痛風腎」は、痛風が進行して尿酸が腎臓にも溜まったことで腎臓が炎症を起こす疾患です。痛風患者さんの約14%に発症する疾患で確率としてはあまり高くはありませんが、慢性腎不全に進行するリスクがあるため注意が必要です。

痛風腎にならない対策として、痛風の原因であるプリン体を控え、水をよく飲んで排出を促すこと、肥満の場合は標準体重に落とすことが挙げられます。医師と相談しながら、自分にあう方法で予防・改善を目指してください。

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