カドミウムってどんな物質?どんな食品にも含まれてるって本当?

2019/8/25

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

食品に含まれる物質が人体に及ぼす影響は、ちょっとした不調から重大な疾患までさまざまです。この記事では自然界に存在する物質カドミウムとは何か、どのようにして体に吸収され蓄積されるのかなどを紹介します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

カドミウムとは

カドミウムは鉛、銅、亜鉛などの金属に含まれる重金属で、鉱物や水中、土壌中などに存在しています。自然環境の中に存在する物質であるため、農産物などに蓄積されることがあり、カドミウムを含む農産物を摂取した場合はその一部が体内に吸収されて主に腎臓に蓄積します。体内に蓄積したカドミウムは中毒を招き、人体に影響を及ぼすおそれがあります。

カドミウム濃度が高い食品を長期間にわたって摂取すると、近位尿細管の再吸収機能障害が引き起こされて腎機能障害が発生することがあります。また、鉄欠乏の状態の体はカドミウム吸収を増加させる可能性が指摘されています。

高濃度かつ長期間にわたるカドミウム中毒として「イタイイタイ病」が広く知られています。ただしイタイイタイ病は高濃度のカドミウム摂取のほか、栄養不足や老化、妊娠などのさまざまな要因が関連して発症します。

カドミウムは食品に含まれているの?

カドミウムは水中や土壌に含まれる性質を持つため、ほぼすべての食品に含まれています

カドミウムを含む食品

米、野菜、海藻、穀類、芋類、豆類、豆加工品、果物、肉、魚介、砂糖、菓子など、

日本では米から摂取する割合が高く、日本人のカドミウム摂取量の約4割は米からと考えられています。ただし、米の消費量の低下など食生活の変化によりカドミウムの摂取量も減少傾向にあります。

カドミウムの濃度

カドミウムの濃度は、食品の種類によって異なります。

平均値
0.003~0.1ppm
低濃度
野菜、穀類、肉、魚介 0.005~0.06ppm
高濃度
肉や魚の腎臓 1ppm
貝類、イカの肝臓 100ppm~となることがあります

毎日お米を食べても大丈夫?

1kgの米に含まれているカドミウムは、平均0.06ppmという調査結果が報告されています。米のカドミウム濃度が0.4ppmを超えた場合、食用の販売が禁止されています。カドミウムを含む米の安全性については食品安全委員会の食品健康影響評価によると、米の消費量低下に伴うカドミウム摂取量減少の結果、一般的な食品における食事の場合は米に含まれるカドミウムによる悪影響を及ぼす可能性は低いと考えられています。

耐容週間摂取量(毎日摂取したとしても健康に悪影響を与えない量)
7μg/kg体重/週
2007年の日本人のカドミウム食品の摂取量の実態
21.1μg/人/日(体重53.3kgで2.8μg/kg 体重/週)

カドミウムで健康リスクが起こるとしたらどこに出てくるの?

カドミウムの体内吸収は消化管と呼吸器の2つから経由されることがほとんどです。吸収率は消化管からが1~6%、呼吸器からは2.5~20%ほどです。

カドミウムの吸収から蓄積ルート

  1. 主に消化管や呼吸器から吸収される
  2. 全身の臓器をめぐる
  3. 腎臓に運ばれると、メタロチオネイン(MT)という物質を誘導する
  4. カドミウムがMTと結合する
  5. 高濃度の状態で腎皮質に蓄積される

MTと結合して腎皮質に蓄積されたことでカドミウムの毒性の発現は抑えられますが、腎臓に運ばれたカドミウムは濃度が過剰に高まった場合、MTと結合できないカドミウムが発生し、腎臓障害が引き起こされることがあります。カドミウム中毒の症状には下記のようなものがみられます。

  • 腎臓の近位尿細管障害(多尿、低分子たんぱく尿など)
  • 腎障害
  • 遠位尿細管機能低下
  • 糸球体機能低下
  • 血清クレアチニンの上昇
  • 腎不全

体内に蓄積するカドミウムの比率上位

  • 50% 腎臓
  • 15% 肝臓
  • 20% 筋肉

体内に蓄積されたカドミウムは、主に尿を経由して体外へ排出されます。臓器中のカドミウム濃度は加齢とともに上昇します。尿中カドミウム量は、体内蓄積量と腎臓中濃度を推定する指標として用いられます。

おわりに:通常の食生活による影響は少ないですが、気になる数値や症状には気をつけましょう

カドミウムはほぼすべての食品に含まれ、高濃度かつ長期間にわたる摂取の結果、人体に悪影響を及ぼします。ただし通常は悪影響を引き起こす可能性は低いといえます。尿検査での異常や気になる症状がみられたら医療機関に相談してください。

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