ニコチンってどんな成分?体にどんな影響を及ぼすの?

2019/10/20

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

タバコの煙に含まれる有害物質のひとつにニコチンがあります。この記事では、ニコチンの特徴や体に悪影響を及ぼす理由などを解説します。

ニコチンってどんな成分?

タバコの葉が燃えることで生成する煙には、数千から数万種類ともいわれる量の化学物質が含まれています。そのうち、からだに害がある物質も数百種類含まれており、発がん性のある物質は50種類以上あります。

ニコチンは、タバコの煙に含まれる物質の中で、特に依存性の高い化学物質です。元は無色の液体ですが、空気に触れると酸化されて褐色になります。また、やや特異的な匂いと味がします。

ニコチンはタバコ1本に0.3~2.0mg程度の量が含まれています。加熱されて気体になったものを吸い込むことで、肺から血液中によく吸収されます。また口の中の粘膜や皮膚からも吸収される物質で、人体にとって非常に吸収しやすい物質といえます。

ニコチンが体に及ぼす影響は?

ニコチンは中枢神経系に作用して興奮させる作用を持つ一方で、神経が興奮している状態では逆に落ち着かせるという効果もあります。体内にニコチンが取り込まれると、ニコチンは脳にあるニコチンの受容体に作用します。ニコチンが受容体と結合すると、神経伝達物質であるドーパミンが放出されます。ドーパミンは、気分や集中力を高め、イライラや疲労感を減少させるといった作用がある物質です。ニコチンは体内への吸収が速いため、ドーパミンをたやすく分泌させます。つまり、タバコを吸えば、人間にとって心地良い状態が簡単にもたらされるのです。

ニコチンの作用はそれだけではありません。そもそもニコチンは非常に毒性の強い物質で、わずか数ミリグラムで赤ちゃんの致死量に達します。ニコチンは血管を収縮させ、心拍数を増加させます。その増加割合は40%ともいわれ、心臓に大きな負担がかかります。

ニコチンは、タバコを吸う人が吸い込む主流煙だけではなく、空気中に広がっていく副流煙にも含まれています。副流煙には、主流煙に比べて何倍もの有害物質が含まれるともいわれています。したがって、タバコの煙は自分だけでなく、周囲の誰かの健康にも影響を与える可能性があります。

禁煙に成功しづらいのはニコチンのせい?

タバコは、初めて吸ってから数本程度でも、中枢神経がニコチンの影響を受けて依存性を形成するといわれています。

ニコチンを吸収することで分泌されるドーパミンは、本来であれば、満腹のときや好きなこと、楽しいことをしているときに分泌される物質です。つまり、ニコチンがなくてもドーパミンを分泌できるのです。しかし、ニコチンは吸収からドーパミン分泌までの時間は非常に短いため、タバコを吸うことで簡単にドーパミンを分泌できます。タバコを吸って簡単に心地良い状態になれる経験が積み重なると、脳はその状態が当たり前となってしまい、次から次とニコチンを欲するようになるのです。

ニコチンは吸収が速い一方で、体内から消費するスピードも非常に速い物質です。ニコチンが作用している間は、神経伝達物質の作用で集中できたり、落ち着いていられるような気がするものです。しかし、ニコチンが消えると、正常な脳の働きをするためにニコチンを欲して、イライラや、頭痛、眠気といった症状が起きてしまいます。

この反応スピードの速さもニコチンへの依存を高める要因となります。ニコチンへの依存性は、ヘロインやコカインといった麻薬よりも高いといわれます。そのため、意思だけで禁煙を成功させることを非常に難しくしています。

おわりに:ニコチンの怖さは、高い依存性と禁断症状にある

ニコチンは、タバコの葉に含まれる物質です。加熱されて気体になったものを吸い込むことで、肺から血液中に吸収されます。ニコチンは、中枢神経系に作用して、ドーパミンを中心とする神経伝達物質の分泌を増加させます。ニコチンは非常に依存性が高い物質です。体内からニコチンが消えることでイライラや憂鬱(ゆううつ)さ、頭痛や眠気などの禁断症状を起こしたりといったことが起こるため、禁煙の難しさにつながります。

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