記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/11/2
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
COPDとは、肺や気管支にダメージを受けることでその部分に慢性的な炎症が起こり、さまざまな症状が引き起こされる疾患のことです。主に影響が出るのは気管支や肺などの呼吸器系ですが、炎症や症状が進行していくと、それ以外の部分にもさまざまな影響が現れることもあります。
COPDの特徴や症状、喘息との違いにはどんなものがあるのでしょうか?そして、進行すると気管支や肺の他にどんな疾患を引き起こすのでしょうか?
COPDとは「Chronic Obstructive Pulmonary Disease」の略で、日本語では慢性閉塞性肺疾患のことを表します。呼吸のときに空気が通る道となる下気道:「気管支」や「肺」に何らかの障害が起こり、呼吸がしにくくなるというもので、喫煙と深い関係があることから、肺の生活習慣病とも言われています。
以前は「肺気腫」と「慢性気管支炎」として疾患名が分けられていましたが、今ではまとめてすべてCOPDと呼んでいます。日本でのCOPDの発症率は40歳以上の人で高く、患者数は全国で530万人以上(40歳以上の人工の約8.6%)と推定されていますが、ほとんどが未診断・未治療の状態だと考えられています。
COPDは、初期にはほとんど症状が現れませんが、進行してくると以下のような症状がみられるようになります。
ゼーゼーとした呼吸が出る場合や慢性の咳、呼吸困難などが喘息の症状とよく似ているため、COPDと気づかない人も多いのですが、喘息とはまた違った疾患です。さらに進行すると安静時でも呼吸困難に陥るようになり、日常生活に支障をきたすようになります。そのため、COPDは現在、在宅酸素療法を必要とする患者さんがもっとも多くなっています。
病状が進行していくにつれて、ウイルスや細菌などによる気管支炎、肺炎を合併しやすくなります。すると、咳や痰が増えたり呼吸困難が悪化するほか、発熱など急激に症状が発症したり悪化したり(急性憎悪)することがあります。慢性の呼吸困難となり、さらにそれが悪化していくと、食欲低下・痩せ・活動性の低下・うつなどの精神症状がみられることもあります。
COPDと喘息(気管支喘息)の違いは、ざっくりまとめると以下のようになっています。
項目 | COPD | 喘息 |
---|---|---|
原因 | 喫煙や受動喫煙、有害物質、ウイルス感染、加齢など | アレルギー |
部位 | 気管支、肺 | 気管支 |
症状 | 慢性的な咳や痰、慢性的な呼吸困難、喘鳴など
ダメージは不可逆的 |
慢性的な咳や痰、発作的な呼吸困難、喘鳴など
ダメージは可逆的 |
もっとも大きな違いは、COPDは肺の生活習慣病とも呼ばれるように有害物質(主にタバコの煙に含まれる有害物質)やウイルス感染、加齢などが原因なのに対して、喘息は主な要因がアレルギー反応であるという点です。また、COPDは有害物質が肺胞に至れば肺そのものがダメージを受けますが、喘息では肺そのものが炎症を起こすわけではなく、あくまで気道(気管支)の部分に炎症が起きる点も大きく異なります。
COPDも喘息も、気管支が慢性的な炎症を起こして細くなり、それに伴って呼吸機能が妨げられるのは同じです。しかし、喘息はあくまでもアレルギー反応ですから、症状が悪化して呼吸困難が発作的に起こったとしても、発作がおさまれば呼吸機能も正常に戻ります。一方、COPDの症状悪化は気管支や肺が有害物質やウイルスなどによってダメージを受け続けた結果で、ダメージを受けた肺組織は回復しませんので、呼吸機能が正常に戻ることはありません。なお、喘息患者さんはCOPDにもなりやすいと言われており、両者ははっきり区別できない場合があります。
COPDは肺の疾患ですが、肺だけでなく「虚血性心疾患」「骨粗鬆症」「糖尿病」など、全身にさまざまな疾患を引き起こすとされています。主に以下のような疾患がCOPDから引き起こされやすいと考えられています。
このように、COPDをきっかけとして、全身に症状や疾患が引き起こされる場合があります。ですから、COPDが進行する前に発見し、早期に治療を始めることが大切なのです。COPDの治療が不十分だと他の疾患にも悪影響がありますし、その逆も同様です。単なる咳や加齢による肺機能の低下だと油断せず、COPDかもしれないと思ったら早めに病院で診察を受けましょう。
また、COPDの患者さんは肺がんになる可能性が高いと考えられています。同じ量のタバコを吸っていても、COPDの人ではそうでない人と比べ、約10倍肺がんになりやすいとされています。COPDにならないためにも、進行を防ぐためにも、肺がん予防のためにも、禁煙は重要です。さらに、COPDの人は定期的に胸部X線検査や胸部CT検査などを受け、肺がんを発症していないか定期的にチェックする必要があります。
COPDは日本語で「慢性閉塞性肺疾患」と呼ばれ、主に喫煙や受動喫煙によってタバコの煙に含まれる有害物質を吸い込むことで、気管支や肺がダメージを受けることによって引き起こされる疾患です。
症状は喘息と似ていますが、喘息がアレルギー反応で可逆的なのに対し、COPDは気管支や肺組織が破壊されるため、呼吸機能が完全には回復しません。また、進行すると全身に疾患を引き起こしますので、早期発見・治療が重要です。