記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2020/2/27
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
骨が痛い、という場合、まず考えられるのは骨折でしょう。しかし、中には肉腫と呼ばれるがんの一種が生じている場合もあり、いずれの場合も放置せず、早めにきちんとした治療を受ける必要があります。
このような「肉腫」の一種に軟骨肉腫があります。この記事では、軟骨肉腫とはどんな病気なのか、症状や治療法、早期発見の方法などについてご紹介します。
軟骨肉腫とは、腫瘍性の軟骨を形成する「悪性骨腫瘍」です。悪性骨腫瘍の中では、骨肉腫に次いで2番目に多い疾患です。肉腫とは広い意味で「がん」に含まれるもので、骨・筋肉・脂肪・神経・血管などに悪性腫瘍が発生したものを「肉腫」と呼んでいます。30~50代に多く発症する疾患で、骨盤・大腿骨・上腕骨に起こりやすいことで知られています。
最初から軟骨肉腫として発生する場合と、良性軟骨性病変が悪性に転化して生じる「二次性軟骨肉腫(全体の10~20%)」の2つのタイプがあります。骨肉腫と比べると比較的ゆっくりと進行するため、5年後の生存率も70~80%と高い割合を示します。しかし、進行が遅いことから自覚症状が軽いことも多く、医療機関を受診するタイミングが遅れてしまう場合もあります。
軟骨肉腫ができると、以下のような症状がみられます。
最も多く見られる症状は、腫瘍ができた部位が腫れたり、関節が動かしづらくなったりするものです。軟骨肉腫は悪性ではあるものの、その度合は一般的に低いことから、腫瘍の増殖スピードはあまり速くないとされています。しかし、中には腫瘍の成長が速く、すぐに大きくなるものもありますので、油断は禁物です。
軟骨肉腫かな?と思ったら、まずは問診・視診・触診などで具体的な症状や状態を把握した後、画像検査で腫瘍の場所や大きさ・広がりなどを確認し、病理検査で確定診断を行います。診察では、以下のようなことを聞かれますので、メモなどで用意しておくとスムーズです。
最初にご紹介したように、軟骨肉腫は良性のものが悪性化して発生することもあるため、小児期や思春期に良性腫瘍が見つかったり、骨の変形を治療したりしたことがあったかどうかを確認します。これらの問診に加え、視診や触診によって病変部位に腫れや痛みがあるかどうか、腫瘍の硬さはどのくらいかなどを見ていきます。
画像検査では、X線検査・CT検査・MRI検査・骨シンチグラフィーなどを行います。これによって腫瘍の大きさや広がり、骨のどの部分に異常(腫瘍)が現れているのかどうかを特定します。その後、病変部位の細胞や組織を採取し、病理検査を行って本当に軟骨肉腫なのかどうかを確定します。病理検査によって、腫瘍の種類や良性・悪性などの性質もわかりますので、それによって治療方針を決定します。
病理検査で軟骨肉腫であることが確定したら、一般的ながんと同様に、手術療法・薬物治療・放射線治療などが行われます。基本的には手術療法が行われますが、これは軟骨肉腫では放射線治療や抗がん剤治療による治療効果が十分ではない場合が多いためです。そのため、特別な理由がなければ手術療法によって腫瘍を完全に切除する治療法がとられます。
手術の方法には、再発しないよう周囲の正常と見える組織まで含めて切除する「広範切除術」や、できるだけ腕や脚を残す「患肢温存術」がありますが、既にかなり進行して範囲が広がっている場合、腕や脚を切断しなくてはならないこともあります。しかし、近年では画像検査の能力向上や、手術技術の進歩などによって、より患者さんの腕や脚の機能を温存したり、機能低下を抑えたりする手術ができるようになってきました。
また、手術で切除した骨や関節の代わりに、体の他の部分の骨や、人工の骨を使って補う「再建術」と呼ばれる手術が行われることもあります。再建術を行えば、切除によって骨や関節が取り除かれても、その機能をある程度補うことができます。再建術を行うことができるかどうかは、腫瘍の大きさや広がりなどによって医師が判断します。
こうした手術のうち、どれをどのように行うのかは、軟骨肉腫のステージや患者さんの状態、希望などを総合的に加味して判断します。ですから、より良い治療、納得のいく治療を受けるためにも、医師としっかり相談し、十分な説明を受けた上で手術を決め、受けるようにしましょう。
最初にもご紹介したように、進行が比較的遅いことから、痛みがあっても「おかしいな」と思っているうちに慣れてしまい、半年〜一年以上放置してしまうケースが少なくありません。ですから、何かおかしいな、という自覚症状があれば早めに医療機関を受診するのが良いでしょう。
また、以前に良性の軟骨性病変が見つかったことがある場合や、骨が変形して治療したことがあるなどの場合は、30代以降に悪性に転化する可能性があることを心に留めておきましょう。そうすれば、自覚症状があったときに「二次性軟骨肉腫かもしれない」と疑うことができ、早期発見・早期治療につながります。
軟骨肉腫は、骨にできる悪性腫瘍(がん)の一種で、30~50代と働き盛りの世代に多く、骨盤・大腿骨・上腕骨に起こりやすい疾患です。最初から軟骨肉腫として発生するもののほか、もともと良性の軟骨性病変だったものが悪性に転化した「二次的軟骨肉腫」があります。
軟骨肉腫には抗がん剤や放射線の効果が出にくいという特徴がありますので、特別な理由がなければ手術療法で腫瘍を取り除く治療法がとられます。