記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2020/1/5
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
近年、健康法の一つとして定着したヨガと同じように、よく聞かれるようになってきたエクササイズの一つに「ピラティス」という運動があります。フィットネスジムのプログラムなどで、その名前を見たことがある人も多いのではないでしょうか。
そこで、この新しく知られてきたピラティスというエクササイズについて、ヨガとの違いを中心にご紹介します。どっちを始めればいいのか悩んでいる人は、ぜひチェックしてみてください。
ピラティスは「西洋のヨガ」とも呼ばれ、体幹やインナーマッスルを鍛えることで、体全体のバランスを整えることを目的とした運動です。そのため、高齢者や身体に不調がある人でも、無理なく取り組めるという大きなメリットがあります。
ヨガでは呼吸や精神面をコントロールすることを重視するため、一つ一つポーズを取って静止しますが、ピラティスは常に動き続けるのが特徴です。ダイエット効果なども期待できることから、近年、日本でもピラティスを始める人が増えてきました。
ピラティスは、1920年代にドイツ軍従軍看護師であったジョセフ・ヒューベルトゥス・ピラティス氏が、負傷した兵士のリハビリテーションの一環として、激しい運動が難しい人でも筋力を強化できるようなトレーニングを行おうと提案したのが始まりです。ピラティス氏自身、もともと身体が弱く、自分の身体を鍛えるためにさまざまなスポーツ・武術・エクササイズなどを研究しながら実践してきたことが、ピラティスを生み出すきっかけになったとされています。
さらにその後、ピラティス氏は1926年に渡米し、ニューヨークにピラティスを広めるためのスタジオを開設しました。そして、ピラティスのメソッドを、精神と筋肉をコントロールする学問「コントロロジー」と名付け、ダンサーやアスリートを始めとした健康や筋力トレーニングに関心の高い富裕層に広めていった結果、ピラティスはハリウッドや西海岸を中心に、アメリカ全土に普及していったのです。現在では、リハビリテーションとしてだけではなく、身体づくりを目的としたアメリカの人気フィットネスの一つとして定着しています。
一般的に「ピラティス」と言った場合、ヨガと同じようにマットを使って行う「マットピラティス」のことを指します。その成り立ちからもわかるように、入院中のベッドの上でもできるように開発されたエクササイズであるため、基本的にはマットさえあれば行えるようになっています。
しかし、高齢者が取り組む場合や、負荷を調節したい場合などには、専用の器具を使った「マシンピラティス」を行うこともできます。例えば、バネや可動式のベッドに足を乗せるためのバーがついた「リフォーマー」などが代表的な器具です。これもピラティス氏が開発したもので、最も万能な器具と言われ、50種類以上のトレーニングに利用できます。
最初にもご紹介したように、ざっくりと言えばピラティスは動き続ける運動、ヨガはポーズを取って静止する運動と言えます。トレーニングの手法として、ピラティスは「正しい骨格を意識しながら、体幹の筋肉を整える」という特徴があり、ヨガは「呼吸とストレッチに重点を置きながら、筋肉を強化する」という特徴があります。
これは、そもそもの発祥に違いがあります。ピラティスは前述のように、第一次世界大戦時に兵士のリハビリテーションとして作られたもので、解剖学に基づいた筋力トレーニング(インナーマッスルトレーニング)をメインとしています。一方、ヨガは本来、インドの思想体系に基づいた修行法・治療法であり、宗教観に根ざした思想と瞑想をメインに、悟りを学ぶことを最終的なゴールとしているのです。
ですから、ヨガは現在でこそ健康法として普及していますが、リラクゼーションやうつ病をはじめとした精神疾患に関する対策など、肉体面のエクササイズとしてだけではなく、精神面にアプローチする効果・効用も期待されています。
では、前述のような違いがあるピラティスとヨガは、どっちを選べば良いのでしょうか。例えば、世界的に活躍している人気モデルであるミランダ・カーさんは「ヨガで心身を落ち着かせることが生活の一部である」と話しています。一方で、女優の米倉涼子さんはダンスもある長時間の舞台の主演を務めることから、継続した身体づくり、ボディーコンディショニングのためにピラティスを続けていると言います。
つまり、肉体面からだけではなく精神面からのアプローチも含め、環境や生活に流されない自分自身のコンディションを整えたい、という場合はヨガが良いでしょう。一方で、体幹やインナーマッスルといった肉体面からのアプローチを中心に、骨格のゆがみや筋力不足による体調不良を改善したい、という場合はピラティスを選ぶのがおすすめです。
どちらを選ぶとしても、運動は継続することが大切です。決して短期間での劇的な変化を期待するのではなく、理想の自分自身をイメージしながら、長期的な目標を設けてエクササイズを続けていきましょう。
ピラティスでは、身体の外側(表面部分)にある「アウターマッスル」ではなく、深層部にある「インナーマッスル」を鍛えます。インナーマッスルはアウターマッスルの補助的な役割をしている筋肉で、全身のバランスを整えたり、アウターマッスルがスムーズに動くのを助けたりする働きをしています。そのため、ピラティスを行うと主に以下のような効果が期待できます。
ヨガと同じように、ピラティスでも呼吸法は大切ですが、ヨガでは副交感神経に働きかける腹式呼吸を行い、リラックス効果を高めるのに対し、ピラティスでは胸式呼吸を行い、交感神経に働きかけて身体を活性化させるところが大きな違いです。
そのため、寝る前に行うことも推奨されるヨガとは逆に、ピラティスは朝起きて行うことが推奨されます。身体を活性化させてすっきりと一日を始められるほか、代謝を上げる効果も期待できますので、血行促進や脂肪燃焼の促進にもつながります。
しかし、満腹や空腹の状態でピラティスを行うと、めまいや立ちくらみを引き起こすことがありますので、朝起きてすぐや、食後すぐには行わないよう注意しましょう。また、ピラティス後は身体が温まっていますので、食事は身体を冷やすものを控え、卵・魚・肉などの良質なタンパク質を積極的に摂取しましょう。
ピラティスは、第一次世界大戦中の兵士のリハビリテーション・トレーニングとして開発されたエクササイズです。西洋のヨガとも言われていますが、ヨガが呼吸法や精神面のコントロールをメインにしている一方、ピラティスは正しい骨格や体幹の筋肉を整えることをメインとしています。
そのため、心身のコンディションを総合的に整えたい人はヨガ、骨格のゆがみや筋力不足を改善したい人はピラティスが向いています。