記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2024/2/7
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
毎年、花粉の時期になるとつらい涙や鼻水が止まらないという人もいると思います。こうした症状の多くは、アレルギー反応からくるアレルギー性鼻炎であり、免疫の働きによるものです。風邪やケガのように自然治癒しませんので、安静にしていても症状は緩和しません。この記事では、アレルギー性鼻炎の原因や症状の特徴と市販薬について、選び方や使用時の注意点もあわせて解説していきます。
アレルギーとは、特定の原因物質(アレルゲン)に対して、身体にもともと備わっている「身体を異物から守る仕組み(免疫機構)」が過剰に反応して起こる防御反応のことです。近年では、もともとの体質に加えて「ストレス・食生活・大気汚染・日常を取り巻く化学物質の増加」などもアレルギー反応に影響を与えているのではないかと考えられていて、アレルギーは「現代病」のひとつと言われることもあります。
「アレルギー性鼻炎」とは、鼻の粘膜に入った異物を排除しようという免疫の働き(アレルギー反応)により、おもに鼻水・鼻詰まり・くしゃみなどの鼻炎症状が続くものを言います。風邪の合併症としてもやはり同じような症状がみられますが、風邪の原因はウイルスなのに対し、アレルギー性鼻炎の原因は花粉やハウスダストなどが多いと言われています。
前述のように、アレルギー性鼻炎の原因としては花粉やハウスダストなどが多いと考えられています。最も多いのは花粉で、成人でアレルギー性鼻炎を発症している人のうち、約90%は花粉症に伴うアレルギー性鼻炎だと言われています。とくに多いのは、春先に問題になる「スギ花粉症」で、次にイネ科花粉症、ブタクサ花粉症が続きます。
この他にもアレルギー性鼻炎を引き起こす花粉は1年中何らかの植物から飛んでいて、スギの他にもヒノキなどの針葉樹、ハンノキ・シラカバなどのカバノキ科の木、ブタクサと同じキク科のヨモギなども花粉症を引き起こす草木として有名です。アレルギー体質の人では、複数の抗原に対して過敏に反応してしまう傾向もあるため、1年中これらのアレルゲンによる花粉症症状に悩まされる人も少なくありません。
また、アレルギー性鼻炎の原因として、ハウスダスト(家の中のほこり・細かいちり)やカビなども挙げられます。アレルギー性鼻炎は、年々、子どもの発症時期が早まっているという報告もあり、とくに小さな子どもがいる家ではハウスダスト・エアコンのカビ・ペットの毛・そばがら・材木の粉・羊毛など、生活に伴うアレルゲンに対して何らかの対策を講じるとともに、アレルギー症状を悪化させてしまう大気汚染やストレス、偏食、過度な疲れなどにも注意しておくことが重要です。
アレルギー性鼻炎の3大症状は、くしゃみ・鼻水・鼻詰まりです。その他にもさまざまな症状がみられますが、これらの症状は徐々に現れてくることもあれば、突然始まることもあります。
たとえば、くしゃみは鼻の粘膜から入ってきた異物を排除するための免疫反応ですが、異物が風邪のウイルスや細菌であれば、感染症の症状として発熱やだるさが現れる場合がほとんどです。一方、アレルギー性鼻炎の場合、アレルゲンは鼻の粘膜にくっついても、そこで増えたりそれ以上奥に入り込んでいったりしませんので、発熱やだるさは起こりません。
また、同じように鼻水の場合も、風邪などの感染症の場合、膿が出ますので鼻水に黄色や緑色などの色がつきます。しかし、アレルギー性鼻炎では膿が発生しないため、水っぽくさらさらとした鼻水だけが出ます。このように、似たような症状が出る風邪とアレルギー性鼻炎にも症状に少し違いがあります。
アレルギー性鼻炎の症状から市販薬を選らぶときは、以下を参考にしてみてください。ただし、基本的には、薬局やドラッグストアの薬剤師に相談することをおすすめします。
アレルギー性鼻炎の症状を抑える薬として市販されているものには、抗ヒスタミン剤、抗コリン薬、交感神経興奮薬、血管収縮剤、漢方薬などがあります。抗ヒスタミン剤には第1世代と第2世代のものがあり、第1世代の抗ヒスタミン剤は中枢神経に作用して鎮静作用や催眠作用をもたらすため、強い眠気が生じやすいというデメリットがあります。
一方、第2世代の抗ヒスタミン剤は第1世代と比べて中枢神経を抑える作用、口の渇きや胸焼けなどを引き起こす作用が抑えられているため、眠気が生じにくいとされています。ただし、効き目は第1世代に及ばず、症状が出てから服用しても効き目が現れやすい第1世代と比べると、第2世代はできるだけ症状が出る前から予防的に服用しておくのがおすすめです。
アレルギー性鼻炎に対する市販薬としては、上記のように抗ヒスタミン剤、抗コリン薬、交感神経興奮薬、血管収縮剤、漢方薬などの薬があります。これらの市販薬で考えられる主な副作用として、以下の3点がありますので注意しましょう。
このほか、「交感神経興奮薬」は、副作用として「心悸亢進(心臓のドキドキ)や血圧、血糖値の上昇」などが現れることがあります。また、抗コリン薬(副交感神経遮断薬)の副作用として眼圧が上がることがあります。このため、高血圧・糖尿病など心血管系の持病を持っている人、緑内障を発症している人は必ず服用前に医師や薬剤師に相談しましょう。
また、血管収縮剤はあくまでも症状が酷くて日常生活に支障をきたすけれども、病院を受診できないときなど、一時的な応急処置として使いましょう。血管収縮剤は即効性もあり、効果がすぐに感じられるというメリットはありますが、長期間連続して使い続けているとだんだんと効きにくくなり、慢性的な鼻づまりを引き起こすことがあります。
アレルギー性鼻炎とは、花粉症に代表されるように、体に入ってきた何らかの異物に対する免疫反応によって起こる症状の1つです。異物がウイルスや細菌ではないことから、発熱やだるさはなく、鼻水もサラサラで水っぽいという特徴があります。市販薬は、それぞれの症状別に選びましょう。つらい鼻の症状があれば第1世代の抗ヒスタミン剤、鼻づまりや副作用の眠気が気になるなら第2世代の抗ヒスタミン剤がおすすめです。ただし、基本的には、医師や薬剤師に相談して選ぶことをおすすめします。