記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2020/5/7
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
「レジリエンス」という言葉を聞いたことがありますか。レジリエンスは、使われる分野によりさまざまな意味を持つ言葉です。今回は、主に心理学の分野で使われるレジリエンスの意味・定義を、レジリエンスを構成する要素や鍛え方と合わせて解説します。
レジリエンスは、もともとは物理学や生態学の分野で「復元力」「回復力」「弾力性」という意味で用いられていましたが、近年では他分野でも広く使われています。このため、レジリエンスという言葉が持つ意味は分野によって微妙に異なり、明確な定義を持ちません。この記事では、主に心理学の分野において使われる場合に限定して、レジリエンスという言葉の意味・定義を解説します。
心理学においてのレジリエンスの意味は、以下のように定義されます。
つまり心理学の世界では、ストレスの多い社会生活・日常生活のなかでも心折れることなく、前向きにしなやかに立ち回る能力 のことを「レジリエンス」と定義しています。
レジリエンスは、ひとつのスキル・感覚で成り立つ能力ではなく、以下6つの要素により構成されていると考えられています。
自分を正しく理解し、信じられるだけの能力・自信を持つ人が心から頼れる仲間を得たとき、6つのレジリエンスの構成要素がすべて揃います。
現代社会においてレジリエンスは、ストレスのあるなかでも日々の生活を楽しく、有意義なものとして送るのに欠かせない能力となります。自己効力感や楽観性が関係する以上、レジリエンス力の発達度合いはその人の生まれ持った人柄・感覚にある程度左右されますが、自分自身の努力で高めることも可能です。日々の生活のなかで以下のポイントを意識し、コントロールする訓練をして、レジリエンス力向上をめざしましょう。
自分の持つ能力・人柄を肯定的に捉えて、自己肯定感を高めましょう。自己肯定感の高まりは自己効力感や楽観性を高め、自己認識も良い方向へと変わっていきます。
レジリエンスの構成要素のひとつは自制心です。嬉しいときも腹立たしいときも、目の前の物事や問題に一喜一憂せず、一歩引いた視点から柔軟に捉えるようクセづけ、自制心を高めましょう。
困難の規模によっては、楽観性を持たなければ乗り越えられないこともあります。「何とかなる」「将来笑えるときがくる」などの楽観的な思考を養えば、マイナスな方へ向かっていきそうな感情の暴走を止め、心のコントロールを助けてくれるでしょう。
周囲の人との関係は、あなたの人生を豊かにも困難にもします。できるだけ自分に害を及ぼす人から離れ、自分が「好き」「頼れる」「ためになる」と思える人のそばにいるようにしてください。人間関係を整理したり、関係の築き方を変えていくと、レジリエンスを構成する「つながり」の要素が充実してきます。
現在の自分を認めて好きになる「自己肯定感」と合わせ、未来の自分の可能性を信じる前向きさである「自己効力感」も鍛えていきましょう。そうすることで、まだ見ぬ未来への漠然とした不安感が減り、目の前の問題を解決する能力や楽観性も高まってきます。
レジリエンスは、使われる分野によりさまざまな意味を持つ言葉です。しかし心理学の分野に限って言えば、困難な状況にも屈せず強くしなやかに生きる心・能力という意味を持ちます。自己認識、自制心、精神的敏捷性、楽観性、自己効力感、つながりの6要素から構成されるレジリエンス力は、ストレスの多い現代社会を生きるうえでの必須スキルと言えます。本記事を参考に、意識してレジリエンス力を高めていきましょう。