宅配弁当やテイクアウト食品は何時間以内に食べたほうがいいの?

2020/5/14

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

宅配やデリバリー、テイクアウトのように家でお弁当などを食べられるサービスはとても便利です。しかし配達や持ち帰りの時間が必要となり、注意しないと食中毒を引き起こすおそれがあります。この記事では宅配弁当などを利用するときに気をつけたい食中毒予防方法を紹介します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

宅配・テイクアウトで注意したほうがいいことは?

店内で飲食をするのではなく、お弁当など購入した調理食品をテイクアウトして食べたときに発生する食中毒は、調理や保存を誤った方法で行ったことが原因になることが多いです。
誤った方法で調理したり保存したりすることで、お弁当箱の中で細菌が増殖したり、お弁当のおかずなどに付着した細菌やウイルスが体内に入り、以下のような食中毒の症状を引き起こします。

食中毒の症状
  • 下痢
  • 腹痛
  • 発熱
  • 吐き気

宅配やテイクアウト食品特有の食中毒リスクの要因

調理から食事まで時間がかかる
配達や持ち帰りを必要とするため、調理から食事までの時間が長くなります。温かい食品を室温に放置すると、食品は食中毒の原因病原体が増殖しやすい20℃~50℃になるため、菌が活発に増殖します。
サラダや生ものなど加熱していない食品は、常温で持ち運ぶことで食中毒の原因菌が増殖するおそれがあります。
大量調理になりやすい
宅配やテイクアウトの調理の場合、注文が重なったときに一度に料理を作る量が多くなります。大量調理で作った食品は冷めづらいため、菌が増殖しやすいです。
アレルギー物質や注意点について直接説明できない
店内で調理した料理を宅配したりテイクアウトするときは、消費期限や原材料名の食品表示が義務付けられていません。食品の取り扱いの説明と理解が不十分になりやすいため、食中毒や食物アレルギーを引き起こす可能性があります。

食中毒を引き起こす細菌・ウイルスの種類

食中毒を引き起こす細菌とウイルスは次のような種類が代表的です。

サルモネラ菌

関連食品
生卵、オムレツ、卵焼き、肉、牛肉のたたき、レバ刺し、魚など。
特徴
乾燥に強く熱に弱いです。加熱不十分の調理に注意が必要です。
症状
吐き気、腹痛、下痢、発熱、頭痛など。

黄色ブドウ球菌

関連食品
おにぎり、巻き寿司、サンドイッチなど素手での調理が多い食品。
特徴
皮膚、鼻、口内の常在菌で、傷やニキビなどを触った手に付着することが多いです。菌が付着した素手で調理や配膳などをした際に食品を汚染します。黄色ブドウ球菌の毒素は強く、食品を加熱しても黄色ブドウ球菌による食中毒を防ぐことができません。
症状
吐き気、腹痛など。

腸炎ビブリオ菌

関連食品
生魚、貝、魚介類、寿司、刺身など。
特徴
真水や熱に弱いです。塩分があるところで増殖します。
症状
激しい下痢や腹痛など。

カンピロバクター

関連食品
鶏肉、焼き鳥、生野菜、井戸水、湧き水など。
特徴
乾燥と熱に弱く、加熱調理で死滅させることができます。
症状
下痢、発熱、吐き気、腹痛、筋肉痛など。

腸管出血性大腸菌(O157、O111など)

関連食品
加熱が不十分な肉や野菜、井戸水、湧き水など。
特徴
加熱することで死滅。
症状
激しい腹痛、下痢、血が多く混ざった下痢など。

ノロウイルス

関連食品
生の二枚貝、加熱不十分な牡蠣、汚染された水など。
特徴
85℃以上で1分以上加熱すると死滅。
症状
吐き気、ひどい下痢、腹痛など。

E型肝炎ウイルス

関連食品
加熱不十分な豚肉、内臓類など。
症状
ほとんどは無症状。一部の感染者はだるさや発熱、皮膚の黄疸など。

食中毒原因病原体が増殖する好条件は「水分・栄養・適温」

食中毒原因病原体は、水分・栄養・適温が好ましい条件で揃ったときに最も増殖します。この3つのうち、食品は水分と栄養をほとんど必ず持っています。しかし適温を食中毒の原因病原体が好まない温度にコントロールすることは可能です。
ほとんどの菌は10℃~60℃を好んで増殖し、人肌に近い35℃前後で最も増殖しやすいといわれています。食品を常温で放置すること、常温で解凍することは、菌が好む適温で増殖のチャンスを与えているといえます。

温度と菌・ウイルスの増殖

  • 65℃以上:死滅することが多い(ただし菌の種類による)
  • 60℃前後:ゆっくりとだが増える
  • 50℃前後:増える
  • 35℃前後:適温のため、猛スピードで増殖
  • 20℃前後:増える
  • 10℃前後:ゆっくりとだが増える
  • 0℃前後:増える菌もある
  • -10℃以下:増えない

飲食店や宅配業者が行っている衛生管理

食中毒原因病原体にとって増殖の主な好条件は「水分・栄養・適温」の3つということがわかりました。次に、食中毒発生を防ぐために飲食店や宅配業者に推奨される調理と配送についての衛生管理を紹介します。

  • 調理はできるだけ短時間で行う
  • 加熱調理後、食品は十分に放冷してから容器に詰める
  • 調理した食品は直射日光や高温多湿を避ける
  • 調理した食品は適切な温度で保管する
  • 配送するときは、容器の破損などによって食品が汚染されないよう注意する
  • 調理から消費者が食事するまでの時間が長時間に及ばないように注意する
  • 当日の販売量や販売時間を見込み、調理と製造の計画を立てる
  • 配送時間が長時間にならないようにする
  • 消費者に対して、購入した食品を早く食べるように促す

宅配弁当やテイクアウト食品は2時間以内に!食べきれないときの対処法は?

宅配やテイクアウト食品は冷蔵または常温で食品を運ぶことが多いです。飲食店や配送業者は衛生管理に注意を払っていますが、食品を口にする消費者も食中毒予防の取り組みをすることで安全性をより高められます。

食中毒予防のポイント

なるべく早く食べる
持ち運びや宅配の間、食品の温度は変化します。時間が経つほど食中毒の原因菌増殖のおそれが上昇しますので、安全性を考えた場合は調理後2時間以内に食べることを目安としましょう。調理時間が表示されている食品の購入や飲食店店員に確認すると安心です。
すぐに食べられない場合は、常温保存しない
食べきれなかった場合、保存するときは常温を避けてください。冷蔵庫または冷凍庫で保管しましょう。
残った食べ物を長時間とっておかない
もったいなく感じることもありますが、時間とともに食品の食中毒リスクは上昇しますので、時間が経った食品は捨てましょう。

冷蔵庫に保存したからといって安全とはいえません

75℃以上の加熱調理をした食品でも、時間が経って50℃以下になると食中毒の原因菌の増殖が進みます。10℃以下の環境は食中毒原因病原体が好みませんので、増殖速度はペースダウンしていきます。
しかし食中毒原因病原体が死滅するわけではありませんので、保存は特に注意して行いましょう。料理を温め直すときは75℃以上の十分な温度で加熱することが望ましいです。

冷蔵・冷凍保存のポイント

  • 冷蔵庫内は10℃以下に保つ
  • 冷凍庫は-18℃以下を保つ
  • 温かい食品は冷ましてから入れる
  • 庫内に食品を詰め込みすぎない
  • ドアの開け閉めの回数を減らす
  • ドアを開けっ放しにしない

おわりに:宅配、テイクアウト弁当はなるべく早く食べて!常温保存もNG!

宅配やテイクアウトは食品の持ち運びに時間がかかります。調理から時間が経つほど食中毒の危険性が高まりますので、購入後は早く食べるようにしましょう。食べきれないときは常温保存を避けて、冷蔵または冷凍保存するのがおすすめです。

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