認知症の人と接するときに気をつけること

2026/10/14

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

認知症になると、1人ではできないことが増え、人が変わったようになることもあります。家族など、周囲で看病をする人たちにとっても辛い思いを抱えることになるでしょう。この記事では、認知症の人とのコミュニケーションがスムーズになるよう、接するときに気をつけるポイントについて解説していきます。

認知症の人と接するときの心がけ

認知症の人と接するときには、双方が辛くならないようにするため、以下を心がけることをおすすめします。

  1. 認知症状による失敗は「脳の病気が原因」と受け入れる
  2. お互いが嫌な気持ちになるのを防ぐためにも、失敗を怒らない
  3. 本人の自信や自己肯定感を守るため、できるだけ生活を変えないようにし、仕事・作業を奪わないようにする
  4. 継続的に専門家のサポートを受けられるよう、通院を習慣化する

認知症になると、自分自身の状態を自覚しにくくなり、記憶障害も現れます。できていたことができなくなったり、怒られているときも、なぜ怒られているのか、その理由を忘れてしまうこともめずらしくありません。上記を念頭に置き、認知症を患う本人の自尊心をできるだけ守るかたちで接することをこころがけ、かつ、接する人が苦しくならないように立ち振る舞うようにしてください。

具体的な接し方について

代表的な認知症状である物忘れ、妄想、見当識障害、人物誤認、徘徊、幻覚、性格変化、問題行動への対処法をご紹介します。

「食事を食べていない、ごはんまだ?」などの物忘れに対して

認知症の人と接するときには、「食べたかどうか」の事実より、本人に納得してもらえるよう対処することが大切になります。「いま作っているからね」「手伝ってほしいときに呼ぶから、ちょっと待っていて」などの言葉をかけ、待たせている間に食事から興味を反らせるようにしてください。口さみしい様子がみられるときは、本人の好きな果物・軽食を用意して「もうすぐできるから食べて待っていて」と言い、納得させてあげましょう。

「財布を盗まれた」などの妄想や妄言

認知症の人は、自分でどこかにしまい込んだことを忘れて、「盗まれたに違いない」と思い込むことがよくあります。このような場合、決して「そんなはずない」などと否定せず、「困ったね、一緒に探そうね」と声をかけ、一緒に探してあげるようにしましょう。

「今日が何日かわからない」などの見当識障害

見当識障害とは、自分のいる時間・場所がわからないために不安になり、日付を何度も聞いてしまう状態です。認知症の人によく見られる症状であり、「さっきも言ったでしょ!」などと冷たい態度を取ってしまうと、悲しい想いをさせてしまいます。大きめの日めくりカレンダーなどを用意して、一緒に確認するようにしましょう。

「知らない人、あなたは誰?」などの人物誤認

認知症では新しい記憶から失われていくため、一緒に暮らしている家族の顔がわからず、判別できなくなることもあります。ショックを受けると思いますが、否定して言い返すと興奮させてしまうこともあります。いったん姿を消し、本人が落ち着いたら再び現れ「初めまして」「いま帰りました、○○です」などと挨拶して、認識してもらうようにしましょう。

徘徊

時間に余裕があるときは一緒に外出して、本人の気が済むまで一緒に歩いてあげるのが良いでしょう。付き添うのが難しいときは、名前・住所・家族の電話番号を書いた名札・名刺を持たせたり、玄関に鈴をつけるなどして、出入りを把握できるようにしましょう。

「誰かが狙っている」などの幻覚

幻覚から「狙われている」「誰かいる」など言うとき、本人は非常に怖がっています。否定するのではなく「私が一緒だから大丈夫」「じゃあ一緒にやっつけてしまいましょう」などと伝え、安心させてあげるようにしてください。

暴言や暴力など、攻撃的な振る舞い

認知症では、人が変わったように暴言・暴力を行うようになることがあります。このようなときは、本人が落ち着くまで1人にしてあげたり、別のことに意識を向けてあげることをおすすめします。家族にとってこのような姿を見ることは辛く、受け入れがたいと思いますが、必要に応じて医師や介護士などの専門家に相談しながら対応しましょう。

失禁や不潔行為などの問題行動

問題行動の一部は、本人が失禁や排泄の失敗を恥ずかしく思い、隠そうとするために起こると考えられています。叱責するのではなく、「こっちの方が気持ちいいから」と説明するなどして、失敗を恥じる気持ちを踏みにじらないような工夫をしましょう。本人の生活リズムがある程度把握できている場合は、いつも排泄している時間に一緒にトイレに行き、排泄をサポートするようにしましょう。

おわりに:「否定しない」「受け入れる」ことが接するときのポイント

認知症になると、できていたことができなくなったり、別人のように感じられるようなことも出てきます。家族や周囲の人にとって、このような状態を見るのは辛いことでしょう。しかし、発症している本人も戸惑っていたり、恥ずかしく思っている状態です。本人の失敗や感じていることを否定せず、現在の状態を受け入れようにすることが大切になってきます。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

介護(33) 認知症(65)