記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2022/5/13
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
朝に腰痛がひどくなるという人は、マットレスなど「寝ているときの環境」が原因かもしれません。腰痛対策には、マットレスを変えるなどして「寝ているときに腰に負担をかけない工夫」が大切です。この記事では。腰に負担がかからないマットレスの選び方について、腰痛とマットレスの基本情報をあわせて解説します。
「朝起きてすぐの痛みが最も強い」という人も多いと思います。朝の腰痛にはさまざまな原因がありますが、おもな原因と考えられるものは以下の通りです。
内臓の病気や急性期の外傷などが原因の腰痛や「夜間痛(眠れなくなるほどひどい痛み)」を起こしている場合を除けば、朝の腰痛の多くは、「起きて動き出すと少しずつ痛みが薄らいでいく」傾向があるといわれています。これは、夜間動かさないでいることで腰部の関節・靭帯・筋・筋膜などが固まってしまうこと、夜に椎間板内圧が低くなることで椎間板内に水分が溜まり、組織や神経への圧迫がひどくなることなどが関係していると考えられていますが、まだはっきりわかっていません。
上記で説明したように、朝の腰痛は「体型や体質にあっていないマットレス」が原因になることもあります。これは、あっていないマットレスを使うと腰に負担がかかりやすい姿勢になったり、寝返りが打ちにくくなったりすることが原因と考えられます。適度に寝返りを打つことは、一定の部位に負担がかかることを防ぎ、関節周辺の組織の緊張を和らげることにも役立ちます。
寝返りには、血液やリンパ液などの循環を促し、凝りや緊張をほぐす役割があります。平均的な寝返りの回数は20回程度とされていますが、寝返りが打てなくなると、腰部関節の組織が凝り固まりやすくなり、結果として腰痛が起こりやすくなることがあるのです。
動けないほどひどい痛みがあるもの、病気が原因の腰痛については、病院での検査・治療が優先になりますが、病院で「とくに問題がない」と判断された腰痛であれば、マットレスを変えることで改善できる可能性があります。
一般的には、腰痛の人には適度な硬さがあるマットレスのほうが腰に負担がかかりにくいといわれています。これは、やわらかすぎるマットレスは寝返りが打ちにくくなったり、腰が沈みこむことで腰に偏った負担がかかりやすくなったりすることが原因と考えられます。
低反発マットレスはやわらかくフィットしやすいため、体全体を包み込むように支えてくれます。安心感があり寝心地が良いですが、寝返りを打ちにくく、腰が深く沈みやすいです。個人差はありますが、一般的には腰への負担が増えやすいといわれています。
一方、高反発マットレスはあまり沈み込まず体をしっかり支えてくれるため、寝返りが打ちやすく、腰の沈みすぎを防ぐこともできます。ただし、硬すぎるマットレスは体圧を分散しにくいため、背中やお尻など「マットと接している部分」への圧が強くなり、床ずれの原因になることがあります。また、寝たときに腰が浮くほど硬いマットレスを使うと、腰への負担が増えやすいです。
最近は、さまざまな素材のマットレスが流通しています。腰痛の人に限らず、マットレスは「寝ている状態で背骨や首の骨が自然なカーブを描く」ものを選ぶことが大切です。人によって骨格や体重が違うため、一概に「低反発が良い」「高反発が良い」と決めることはできません。また、寝たときに「自分が寝やすい、心地良い」ものを選ぶことも大切です。種類にあまりこだわりすぎず、実際に寝てみて自分にあうものを選ぶようにしてください。
「寝やすいマットレス」の一般的な条件は「横になったときに体に負担がかかりにくい」ものです。負担がかからないマットレスを選ぶには、寝たときに以下の状態になるかチェックすることがおすすめです。「価格が高いマットレス」が自分に合っているとは限りません。必ず実際に寝て寝心地を確認し、寝たときの体の状態を店舗スタッフや一緒に買物に行った人にチェックしてもらいましょう。
また、うつ伏せ、横向き、仰向けなどの「寝る姿勢」には、それぞれに長所と短所があります。基本的にはどのような姿勢で寝ても良いですが、横向きで寝る方が腰への負担が少ないといわれています。横向きが寝づらくないようであれば、腰痛持ちの人は一度横向きで寝てみてもいいかもしれません。横向きで寝た方が楽になるようであれば、横向きで寝た状態での寝心地や姿勢も確認しておきましょう。
マットレスを選ぶときは、まず初めにサイズを決めます。既にベッドを持っている場合は、ベッドフレームに合うサイズを選びましょう。マットレスにはSS(セミシングル)からK(キング)まで6つの段階があり、幅が80cm〜180cmまで刻まれています。
ブランドによって5cm程度の差がありますが、一般的な大人用のマットレス(シングル)は長さ195cm〜200cm、幅80cm〜90cmくらいとされています。寝る人数や体格によって適したサイズは変わってきます。狭いベッドで寝ると、無理な姿勢で寝ることになるので、体に負担がかかりやすいです。予算や部屋の広さなどの都合もあると思いますが、できるだけ余裕のあるサイズを選ぶようにしましょう。
マットレスのサイズが決まったら、次は素材を決めます。マットレスの素材には、おもに以下の5種類があります。
ウレタンマットレスにはさまざまな反発力の製品があり、体重によって寝たときにかかる体圧も異なります。繰り返しになりますが、実際に寝てみて、自分の体重に合った反発力のマットレスを選ぶようにしてください。また、高反発マットレスを選ぶときはマットレスの耐久性を左右する「密度」や「復元率」をしっかりチェックすることをおすすめします。
ウレタンマットレスの硬さは「ニュートン」という単位で表され、数字が大きいほど反発力が高いということを意味しています。低反発は75ニュートン未満、高反発は110ニュートン以上のマットレスのことを指します。低反発は寝心地がやわらかめ、高反発は硬めになり、腰痛の人に適したニュートン数を体重別に示すと以下のようになります。
ただし、数値はあくまでも目安であり、商品やメーカーごとの違いもあります。快適に眠れるかは個人的な好みも関係するので、可能であれば、店舗や展示場などで実際に寝て確認することをおすすめします。
以下のマットレスは、腰痛の人には向かないといわれています。
腰痛のなかには、すぐに治療が必要な「危険な腰痛」もあります。長期間放置すれば治りが遅くなるだけでなく、後遺症を抱えることになったり、生命に関わったりすることもあります。このような腰痛は、セルフケアやマットレスの変更では治せませんので、以下の症状がある際は早急に病院を受診しましょう。
また、以下のような人に腰痛が出た場合、危険な状態になりやすいといわれています。気になる症状がある場合は、すぐに病院を受診しましょう。
朝起きたときに一番痛みが強い腰痛は、あわないマットレスで腰に負担がかかっていることが原因で起こる可能性があります。腰痛を軽減するためには、寝ている間に自然な寝返りが打てるよう、やや硬めの高反発マットレスを選ぶのがおすすめです。ただし、これはあくまでも目安です。必ず実際に寝てみて、寝心地や姿勢を確認しましょう。
また、腰痛は危険な病気のサインとして現れることもあります。腰痛があるときは、一度は整形外科を受診して原因を調べてもらうようにしてください。とくに、「危険な腰痛」のサインが現れているときは、早急に病院で診てもらいましょう。