記事監修医師
東京大学医学部卒 呼吸器内科医
山本 康博 先生
2020/11/7
記事監修医師
東京大学医学部卒 呼吸器内科医
山本 康博 先生
腰痛を持っている人は、起きているときだけでなく、寝るときに腰に負担をかけないことも重要です。寝ているとき、腰に余計な負担をかけないためには、腰をしっかり支えてくれるマットレスを選ぶことも大切になってきます。
とくに「朝起きると腰が痛い」という人は、マットレスが合っていないのかもしれません。今回は腰に負担がかからないマットレスの選び方について解説していきます。
腰痛持ちのなかには「朝一番が痛みが最も強い」という人がいます。朝の腰痛の原因としては、さまざまなものが考えられますが、大きく以下が挙げられるでしょう。
内臓の病気や急性期の外傷、夜間痛(眠れなくなるほどひどい痛み)を起こしてしまうほどひどい痛みがあるときは別ですが、朝の腰痛の多くは、「起きて動き出すと少しずつ痛みが薄らいでいく」ことが多いといわれています。
これは、夜間動かさないでいることで腰部の関節・靭帯・筋・筋膜などが固まってしまうこと、夜に椎間板内圧が低くなることで椎間板内に水分が溜まり、組織や神経への圧迫がひどくなることなどが関係していると考えられていますが、まだはっきりわかっていません。
前述のように、朝の腰痛は「体にあっていないマットレス」が原因になることもあります。これは、マットレスが身体に合っていないと、腰へ偏った負担がかかったり、寝返りが打ちにくくなることで腰部関節の組織が凝り固まりやすくなることが関係していると考えられます。
動けないほどひどい痛みがあるもの、病気が原因の腰痛については、病院での検査・治療が優先になりますが、病院で「とくに問題がない」と判断された腰痛であれば、マットレスを変えることで改善することがあります。
一般的には、腰痛の人には適度な硬さがある、柔かすぎないマットレスのほうが腰に負担がかかりにくいと考えられています。これは、柔らかすぎるマットレスは寝返りが打ちにくくなるからです。
平均的な寝返りの回数は20回程度とされています。寝返りを打つことは、血液やリンパ液などの循環を促し、身体の凝りや固まりをほぐし、寝床の温度の調節に役立ちます。
低反発マットレスは、柔らかくフィットする性質があるため、体全体を包み込むように支えてくれます。安心感があり寝心地は良いですが、寝返りが打ちにくく、腰が深く沈みやすいです。個人差はありますが、一般的には腰への負担が増えやすいといわれています。
一方、高反発マットレスは身体をしっかり支え、あまり沈み込まない特徴があります。寝返りが打ちやすく、腰の沈みすぎを防ぐこともできます。ただし、硬すぎるマットレスは体圧分散がしにくいため、背中やお尻など「マットと接している部分」への圧が強くなり、床ずれの原因になることがあります。また、寝ている状態で「腰が浮いている」ほど硬いマットレスを選ぶと、腰への負担が増えやすいです。
最近は、さまざまな素材のマットレスが流通しています。腰痛の人に限らず、マットレスは「寝ている状態で背骨や首の骨が自然なカーブを描く」ものを選ぶことが大切です。人によって骨格や体重が違うため、一概に「低反発が良い」「高反発が良い」と決めることはできません。
また、寝たときに「自分が寝やすい、心地良い」ものを選ぶことも大切になってきます。種類にあまりこだわりずぎず、実際に寝てみて自分にあうものを選びましょう。
寝やすいマットレスとは、横になったときに身体に余計な負担がかかりにくいものです。マットレスを選ぶときは、寝たときに以下の状態になるか必ずチェックしましょう。
「価格が高いマットレス」が自分に合っているとは限りません。必ず実際に寝てみて寝心地を確認し、寝たときの体の状態を店舗スタッフや一緒に買物に行った人にチェックしてもらいましょう。
また、うつ伏せ、横向き、仰向けなどの「寝る姿勢」には、それぞれに長所と短所があります。基本的にはどのような姿勢で寝ても良いですが、横向きで寝る方が腰への負担が少ないといわれています。横向きが寝づらくないようであれば、腰痛持ちの人は一度横向きで寝てみてもいいかもしれません。
横向きで寝た方が楽になるようであれば、横向きで寝た状態での寝心地や姿勢も確認しておきましょう。
マットレスを選ぶときは、まず初めにサイズを決めます。既にベッドを持っている場合は、ベッドフレームに合うサイズを選びましょう。マットレスにはSS(セミシングル)からK(キング)まで6つの段階があり、幅が80cm〜180cmまで刻まれています。
ブランドによって5cm程度の差がありますが、一般的な大人用のマットレス(シングル)は長さ195cm〜200cm、幅80cm〜90cmくらいとされています。寝る人数や体格によって適したサイズは変わってきます。狭いベッドで寝ると、無理な姿勢で寝ることになるので、体に負担がかかりやすくなります。予算や部屋の広さなどの都合もあると思いますが、できるだけ余裕のあるサイズを選ぶようにしましょう。
サイズが決まったら、マットレスの素材を決めます。マットレスの素材は、おもに以下の5種類があります。
ウレタンマットレスにはさまざまな反発力の製品があり、体重によって寝たときにかかる体圧も異なります。繰り返しになりますが、実際に寝てみて、自分の体重に合った反発力のマットレスを選びましょう。
また、高反発マットレスを選ぶときはマットレスの耐久性を左右する「密度」や「復元率」をしっかりチェックするようにしてください。
ウレタンマットレスの硬さは「ニュートン」という単位で表され、数字が大きいほど反発力が高いということを意味しています。低反発は75ニュートン未満、高反発は110ニュートン以上のマットレスのことを指します。低反発は寝心地がやわらかめ、高反発は硬めになり、腰痛の人に適したニュートン数を体重別に示すと以下のようになります。
ただし、数値はあくまでも目安であり、商品やメーカーごとの違いもありますし、快適に眠れるかは個人的な好みも関係しています。必ず店舗や展示場などで、実際に寝て確認をしましょう。
また、以下のようなマットレスは腰痛を持つ人には向かないといわれています。
腰痛のなかには、すぐに治療が必要な「危険な腰痛」もあります。長期間放置すれば、治りが遅くなるだけでなく、後遺症を抱えることになったり、ひどいときには生命に関わることもあります。
このような腰痛は、セルフケアやマットレスの変更では治すことができませんので、以下のような症状がある場合はできるだけ早く病院を受診しましょう。
また、以下のような人に腰痛が出た場合、危険な状態になりやすいといわれています。
腰痛を持つ人の中には、朝起きたときに一番痛みが強いという人がいます。こうした腰痛が起こる原因のひとつとして、マットレスが身体に合わず寝ている間に腰に負担がかかっているということが考えられます。
腰痛を軽減するためには、寝ている間に自然な寝返りが打てるよう、やや硬めの高反発マットレスを選ぶのがおすすめです。ただし、これはあくまでも目安です。必ず実際に寝てみて、寝心地や姿勢を確認しましょう。
また、腰痛は危険な病気のサインとして現れることもあります。腰痛があるときは、一度は整形外科を受診して原因を調べてもらうようにしてください。とくに、「危険な腰痛」のサインが現れているときは、早急に病院で診てもらいましょう。