記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2026/6/10
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
暑い日が続くと、食事の量が減ったり、そうめんや冷たい飲みものだけで済ませたりすることがあります。体を休ませたい時期には自然な反応のようにも感じられますが、食事量が少ない状態が続くと、エネルギーやたんぱく質、ビタミン、ミネラルなどが不足しやすくなります。特に高齢の方、持病がある方、介護を受けている方では、食欲低下が体力低下や脱水、低栄養につながることがあるため、日々の食べ方を少し意識することが大切です。
夏に食欲が落ちやすい背景には、暑さによる疲れ、睡眠不足、屋内外の温度差、冷たいもののとりすぎ、活動量の低下などが関係すると考えられます。冷たい飲みものや口当たりのよい食品が増えると、胃腸の働きがゆるやかになったように感じる人もいます。また、汗をかくことで水分や塩分が失われると、だるさや頭痛、めまいなどが出ることもあります。これらは熱中症の初期症状と似ている場合もあるため、単なる夏ばてと決めつけないことが必要です。
高齢の方では、のどの渇きや空腹を感じにくくなることがあります。さらに、噛みにくさ、飲み込みにくさ、義歯の不具合、便秘、薬の影響、孤食なども食事量を減らすきっかけになります。家族や介護職は、食べ残しの量、体重の変化、会話中の疲れやすさ、歩く速さ、表情の変化などを合わせて見ると、早めに変化に気づきやすくなります。
暑い時期の食事では、主食だけに偏らないことが大切です。そうめん、うどん、おかゆ、パンなどは食べやすい一方で、それだけではたんぱく質や野菜、脂質が不足しやすくなります。たんぱく質は筋肉や血液、皮膚などをつくる材料となる栄養素です。高齢期には活動量が落ちることもありますが、筋肉量を保つためには、肉、魚、卵、大豆製品、牛乳、ヨーグルトなどを無理のない形で取り入れることがすすめられます。
また、野菜や海藻、果物に含まれるビタミン、ミネラル、食物繊維も、食生活のバランスを整えるうえで役立ちます。ただし、果物や冷たいサラダばかりに偏ると、食事全体のエネルギーが不足することがあります。食欲がない日は、冷ややっこにしらすや温泉卵をのせる、そうめんに鶏ささみやツナ、納豆を添える、味噌汁に豆腐や卵を加えるなど、いつもの料理にたんぱく質を足す方法が続けやすいでしょう。
食事バランスガイドでは、主食、主菜、副菜、牛乳・乳製品、果物などを組み合わせて、食事全体のバランスを見る考え方が示されています。治療中の病気がなく、特別な食事制限がない人にとっては、日々の食事を振り返る目安になります。一方で、腎臓病、心不全、糖尿病、高血圧などで食事制限を受けている方は、たんぱく質や水分、塩分のとり方に個別の配慮が必要です。自己判断で大きく食事を変える前に、医師や管理栄養士に相談してください。
食欲が落ちているときは、最初から一人前を食べきろうとすると負担になることがあります。朝、昼、夕の食事量が少ない場合は、少量を数回に分ける方法もあります。たとえば、朝にヨーグルトとバナナ、昼に具だくさんのそうめん、午後に牛乳やプリン、夕食に魚や豆腐を使ったやわらかい料理を組み合わせると、無理なく栄養を補いやすくなります。
食べやすさを整えることも大切です。ご飯が進みにくいときは、雑炊やリゾット、冷や汁、具だくさんのスープなどにすると、水分と栄養を一緒にとりやすくなります。肉がかたい場合は、ひき肉、薄切り肉、つみれ、卵とじなどにすると噛みやすくなります。魚の缶詰や豆腐、納豆、温泉卵、チーズなどは、調理の手間を減らしながらたんぱく質を補える食品です。
味つけは、濃くしすぎない範囲で香味野菜や酸味を使うと食欲を助けることがあります。しそ、みょうが、しょうが、ねぎ、レモン、酢などは、さっぱりと食べたいときに役立ちます。ただし、むせやすい方では、酸味の強いものやさらさらした汁物で咳き込むことがあります。食事中にむせる、声がガラガラする、食後に痰が増える、発熱を繰り返すなどがある場合は、飲み込みの機能が関係している可能性もあります。かかりつけ医、歯科医師、言語聴覚士、管理栄養士などに相談すると安心です。
介護の場面では、食事の温度、姿勢、食器の使いやすさ、食べる時間帯も見直したいポイントです。暑さで疲れやすい日は、室温を整え、背中を支えて姿勢を安定させ、急がせずに食事を進めます。本人が食べたいものを少し取り入れることも、食事への意欲につながります。
暑い季節は、食事と同じくらい水分補給にも注意が必要です。熱中症予防では、暑さを避けることとこまめな水分補給が基本とされています。のどが渇いてからまとめて飲むのではなく、起床時、食事の前後、入浴の前後、外出の前後、就寝前など、生活の区切りに合わせて少しずつ飲むと続けやすくなります。大量に汗をかいたときは、状況に応じて塩分を含む飲料や経口補水液などを使うこともありますが、心臓や腎臓の病気で水分や塩分制限がある方は、主治医の指示を優先してください。
一方で、暑い時期は食中毒にも注意が必要です。家庭での食中毒予防では、細菌を付けない、増やさない、やっつけるという三原則が大切とされています。調理前や食事前の手洗い、肉や魚と生で食べる食品の調理器具を分けること、作った料理を室温に長く置かないこと、残った食品は浅い容器に分けて早く冷やすことなどを心がけましょう。温め直すときは十分に加熱し、においや見た目に違和感があるものは食べないことも大切です。
下痢や嘔吐があるときは、水分が失われやすくなります。高齢の方や持病のある方では、短時間で体調が変わることもあります。尿が極端に少ない、ぐったりしている、意識がぼんやりしている、呼びかけへの反応が弱い、呼吸が苦しい、強い腹痛や血便がある、嘔吐が続いて水分がとれない場合は、早めに医療機関へ相談してください。急激な悪化がある場合は、ためらわず救急相談や救急受診を検討します。
暑い季節の食欲低下は、誰にでも起こり得ます。ただし、食事量が少ない状態が続くと、体力や筋力の低下、脱水、低栄養につながることがあります。大切なのは、食べられないことを責めるのではなく、食べやすい形に変えながら、主食、たんぱく質を含む主菜、野菜や海藻を使った副菜を少しずつ組み合わせることです。
本人が一度に多く食べられないときは、間食や飲みものも栄養補給の一部として考えましょう。牛乳、ヨーグルト、豆腐、卵、魚の缶詰、具だくさんの汁物など、手に入りやすい食品を使うだけでも食事の内容は整えやすくなります。家族や介護職は、食事量、体重、むせ、便通、尿の回数、日中の活動量などを観察し、いつもと違う状態が続くときは早めに専門職へつなぐことが大切です。