記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2026/6/10
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
尿もれは、本人にとっても家族にとっても話題にしにくい症状のひとつです。外出を控える、トイレの場所ばかり気にする、介護の場面で着替えや寝具交換が増えるなど、生活の負担につながることがあります。とはいえ、尿もれは単に年齢のせいと決めつけるものではありません。女性では妊娠や出産、加齢、閉経後の体の変化、便秘、肥満、運動不足などが重なり、骨盤の底にある筋肉がゆるみやすくなることがあります。また、膀胱や神経の働き、服用中の薬、尿路感染症などが関係している場合もあります。症状の出方を整理し、生活上の工夫と医療機関への相談を組み合わせることが、安心して過ごすための第一歩になります。
尿もれは、もれ方によっていくつかのタイプに分けられます。咳、くしゃみ、笑ったとき、重い荷物を持ったときなど、お腹に力が入ったタイミングでもれる場合は、腹圧性尿失禁が考えられます。骨盤底筋や尿道を支える組織が弱くなることで起こりやすいとされています。一方、急に強い尿意が起こり、トイレまで間に合わずにもれる場合は、切迫性尿失禁や過活動膀胱が関係していることがあります。高齢の方では、移動に時間がかかる、衣類の着脱に手間取る、認知機能の変化でトイレのタイミングを逃すといった要素も重なります。介護職や家族介護者は、本人を責めるのではなく、いつ、どのくらい、どのような場面でもれたかを落ち着いて記録すると、相談時に役立ちます。
軽い尿もれでは、骨盤底筋トレーニングが役立つことがあります。骨盤底筋とは、膀胱や子宮、直腸などを下から支える筋肉の集まりです。基本は、息を止めずに、肛門や腟を体の内側へ引き上げるように締め、数秒保ってからゆっくりゆるめる方法です。最初は仰向けや椅子に座った姿勢で行うと、余分な力が入りにくくなります。お腹、太もも、肩に力が入りすぎると目的の筋肉を使いにくいため、深呼吸をしながら行いましょう。一般的には数週間から数か月続けることで変化を感じる人もいますが、個人差があります。うまく締められている感覚がわかりにくい場合や、続けても改善が乏しい場合は、婦人科、泌尿器科、女性泌尿器科、骨盤底リハビリテーションを扱う医療機関で相談するとよいでしょう。
尿もれ対策では、トイレに行く回数を減らそうとして水分を極端に控えることは避けます。脱水や便秘、尿路感染症につながることがあるためです。夕方以降の飲み方、カフェインやアルコールの量、服薬のタイミングなどは、主治医や薬剤師と相談しながら調整します。便秘があると腹圧がかかりやすく、尿もれが悪化することがありますので、食物繊維を含む食品、適度な水分、無理のない活動量も見直しましょう。介護の場面では、尿とりパッドや吸水下着を本人の尿量や肌の状態に合わせて選び、こまめに交換します。生理用ナプキンは尿専用製品と吸収の仕組みが異なるため、皮膚トラブルが続く場合は尿ケア用品を検討します。夜間は足元の照明、手すり、脱ぎ着しやすい衣類を整えると、転倒予防にもつながります。
尿もれは恥ずかしさから相談が遅れやすい症状ですが、日常生活に支障がある場合は医療機関で相談できます。尿に血が混じる、排尿時の痛みや発熱がある、下腹部や背中の痛みが強い、急に尿が出にくくなった、急激に症状が悪化した場合は、早めの受診が勧められます。足のしびれや麻痺、意識障害、強い脱力を伴う場合は、救急相談を含めて速やかな対応が必要になることがあります。診察では、尿検査、残尿の確認、必要に応じた超音波検査や質問票などを行い、タイプに応じて生活指導、骨盤底筋訓練、薬物療法、手術療法などが検討されます。本人の困りごとを具体的に伝えることで、生活に合った方法を選びやすくなります。
尿もれは、体の変化や生活環境が重なって起こることが多く、努力不足や気持ちの問題だけで説明できるものではありません。大切なのは、症状を隠すことよりも、もれ方を知り、肌を守り、外出や睡眠を保つ方法を一緒に考えることです。セルフケアで改善する人もいますが、尿路感染症や神経の病気、骨盤臓器脱などが隠れていることもあります。本人、家族、介護職が同じ方向を向き、必要なときに医療者へつなぐことで、生活の負担を軽くできる可能性があります。