記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2026/6/10
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
むくみとは、皮膚の下に余分な水分がたまり、手足や顔などが腫れぼったく感じられる状態を指します。医学的には浮腫と呼ばれ、すねや足の甲を指で押したあとにへこみが残ることもあります。夕方になると靴がきつくなる、靴下の跡が強く残る、足が重く感じるといった変化で気づく人もいます。
むくみは「水分をとりすぎたから」と考えられがちですが、原因はそれだけではありません。血液やリンパ液の流れ、心臓や腎臓の働き、食事の塩分量、薬の影響、長時間同じ姿勢で過ごすことなど、複数の要因が関係するとされています。高齢者では、体力の低下や持病、服薬の種類が重なりやすいため、日常的なむくみでも背景を丁寧にみることが大切です。
高齢者のむくみでよくみられる要因のひとつに、活動量の低下があります。座っている時間や横になっている時間が長くなると、足の筋肉を動かす機会が減ります。足の筋肉には、血液を心臓へ戻すポンプのような働きがあるため、動く時間が少ないと足に水分がたまりやすくなることがあります。
介護の場面では、転倒への不安、痛み、疲れやすさ、トイレ介助の負担などから、本人が動くことを控える場合があります。厚生労働省の身体活動に関する情報では、高齢者も体調に合わせて今より少しでも体を動かすことや、座りっぱなしの時間が長くなりすぎないようにすることがすすめられています。無理な運動ではなく、足首をゆっくり動かす、立ち上がる回数を少し増やす、室内を短い距離だけ歩くなど、生活の中で続けやすい方法を考えることが大切です。
また、食事もむくみに関係します。塩分を多く含む食事が続くと、体内に水分をため込みやすくなることがあります。一方で、食事量が少なく、たんぱく質やエネルギーが不足している場合にも、体の水分バランスが乱れやすくなることがあります。むくみがあるからといって自己判断で水分や食事を極端に減らすのではなく、全体の食事量、体重変化、尿の回数、持病の有無をあわせて確認することが望まれます。
むくみの背景には、心臓や腎臓などの病気が関係することもあります。国立循環器病研究センターの情報では、心不全の症状として、息切れ、疲れやすさ、足の甲やすねのむくみ、短期間の体重増加などが紹介されています。心臓の働きが低下すると、全身に血液を送り出す力が弱くなり、体に水分がたまりやすくなることがあるためです。
腎臓は、体の余分な水分や塩分を尿として出す働きに関わります。慢性腎臓病などがある場合は、水分や塩分の調整が必要になることがあります。むくみが気になるからといって、利尿作用のある飲み物を増やしたり、水分を強く制限したりすることは避け、主治医の指示を確認することが大切です。
がんの手術や放射線治療のあとには、リンパの流れが滞ってむくみが起こることもあります。国立がん研究センターがん情報サービスでは、リンパ浮腫は治療直後だけでなく、数年たってから起こることもあるとされています。片側の腕や脚だけがむくむ、皮膚が硬くなる、関節が動かしにくいといった変化がある場合は、早めに医療者へ相談しましょう。
むくみは、使用している薬と関係して起こることもあります。血圧の薬、痛み止め、糖尿病の薬、ホルモンに関わる薬など、薬の種類によっては副作用としてむくみがみられることがあります。ただし、薬を自己判断で中止すると、もとの病気が悪化するおそれがあります。むくみが気になる場合は、薬の名前、飲み始めた時期、むくみが出た時期を整理し、医師や薬剤師に相談してください。
介護環境も見直したいポイントです。椅子に座る時間が長い、足を下げたまま過ごしている、寝具や座面の高さが合わず足を動かしにくい、靴や靴下がきついといったことが、足のむくみを感じやすくする場合があります。足を少し高くして休む、締めつけの少ない靴下を選ぶ、同じ姿勢が続く前に声をかけるなど、小さな調整で楽になることもあります。
ただし、医療用の弾性ストッキングは、血流の状態や皮膚の状態によって注意が必要です。強く締めればよいというものではないため、使用を考える場合は医師や看護師に相談してから選ぶと安心です。
むくみは一時的なこともありますが、病気のサインとして現れる場合もあります。特に、急にむくみが強くなった、片方の足だけが腫れて痛む、赤みや熱感がある、息切れや胸の苦しさを伴う、横になると息苦しい、短期間で体重が増えた、尿の量が明らかに少ないといった場合は、早めに医療機関へ相談してください。
意識がぼんやりする、呼吸困難がある、胸の痛みが強い、急激な悪化がみられる場合は、ためらわず救急相談や医療機関への連絡を考えます。介護者は、むくみの場所、左右差、いつから始まったか、体重の変化、食事や水分量、尿の様子、服薬状況を記録しておくと、受診時に状況を伝えやすくなります。
むくみそのものを怖がりすぎる必要はありませんが、いつもと違う変化を見逃さないことが大切です。本人が症状をうまく説明できない場合もあるため、日頃の様子を知る家族や介護職が、表情、動き、呼吸、靴や衣類のきつさなどを確認しておくとよいでしょう。
高齢者のむくみは、水分のとりすぎだけで起こるものではありません。活動量の低下、同じ姿勢が続くこと、塩分の多い食事、食事量の不足、心臓や腎臓の病気、リンパの流れ、薬の影響など、さまざまな要因が関係するとされています。
介護の場では、足を動かす機会をつくる、座りっぱなしを避ける、食事や水分のとり方を確認する、体重や尿の変化を見るといった日常的な観察が役立ちます。一方で、持病や薬が関係する場合は、自己判断で水分や薬を調整しないことが大切です。
むくみが続く、急に悪化する、息切れや痛みを伴うなどの変化があるときは、早めに医療職へ相談しましょう。暮らしの中の小さな変化と体調のサインをあわせて見ることが、本人に合ったケアにつながります。